快挙!“食べられる培養肉”が誕生
日清食品グループは日本で初めて「食べられる」培養肉の製造に成功したと発表。
2017年8月より東京大学と「培養ステーキ肉」の共同研究を開始。2019年には世界で初めてサイコロステーキ状 の“大型立体筋組織”を作ることに成功していたが、今回はいよいよ食用への実用化に向け、大きな一歩を踏み出した。

培養肉とは?
従来の食肉の代わりとなる「代替肉」のひとつで、動物の細胞を体外で組織培養することによって得られた肉のこと。
ベジタリアンに人気の「大豆ミート」や「豆腐ステーキ」も代替肉に含まれます。

そもそもなぜ培養肉が開発されているのか?
世界的な人口増加や新興国の経済成長に伴い、食肉需要は急速に拡大。
国連食糧農業機関 (FAO) によると、2050年には2007年比でその需要は1.8倍にまで上昇、供給不足が懸念されています。
また家畜の生産には、餌となる飼料や多量の水、広い土地を必要とするほか、メタンをはじめとする温室効果ガスを多く排出することから、地球環境に負荷を与える一因になっているとも。

一方代替肉は、家畜の肥育と比べて地球環境への負荷が小さいことや、広い土地を必要とせず、厳密な衛生管理下で製造されることから、食中毒や感染症のリスクを低減でき、発展途上国への供給も可能と考えられています。
「ものづくり」精神で最難関にチャレンジ
代替肉には製作レベルによって難易度が大きく異なります。
肉もどきとして車麩や豆腐ステーキなどがもともと精進料理などに使われており、植物タンパクに科学技術を活用することで、実際の肉の味や食感により近づけたものがいわゆる大豆ミート。
培養ミンチ肉は実際の肉から細胞を採取し、組織培養して増やしたものですが、バラバラの筋細胞の集合体であり、肉本来の食感は再現できません。2013年には、オランダで「培養ミンチ肉」を使ったハンバーガーが約3,000万円という金額で話題に。
培養ミンチ肉に、筋組織の立体構造を人工的に作製し、肉本来の食感を再現したものが培養ステーキ肉。細胞同士を融合させ、細長い構造に変化させることに高い技術が必要となります。
日本はこの技術を世界に先駆け2019年に“サイコロステーキ”として再現。
今回実現した“食用培養肉”の製造技術と合わせ、培養肉の分厚いステーキを食べられる日もそう遠くない未来になりそうだ。
日清食品と東京大学の共同研究グループは2024年度中に基礎技術の確立を目指している。