1世帯につき最大2000円支援を検討 電気代上昇への負担軽減へ
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政府は値上がりする電気代の負担を軽減するため、新しい支援制度を早急に開始できるよう調整に入った。
1世帯につき月額最大2,000円程度を支援する方向である。
続く物価高による国民への影響を抑えるため、政府は総合経済対策に、電気料金の負担を和らげる新支援制度の創設を盛り込む方針だ。
岸田首相は、総合経済対策の中心となる電気代の負担軽減について、「直接的かつ実感できる形で策を講じる」と述べている。
具体的な金額や支援手段とは?
気になる金額だが、各家庭に対して「電気料金の上昇による平均的な負担の増加に対応する額」としている。
複数の関係者への取材により、実際は1世帯につき月額最大2,000円程度になる見込みだ。
具体的な手段として、政府が電力会社に資金を配ることで、各家庭の料金を下げる方法が検討されている。
その値下げ分は、明細書の「燃料費調整額」の欄に反映する。
利用者が分かりやすい方向で最終調整が行われており、2023年1月以降で早急に支援を開始される予定だ。

電気代の支援だけで負担が軽減されるのか?
電気代だけでなく、ガス代も心配である。
東京ガスは原料価格の上限を引き上げ、10月検針分より反映する予定だ。
これから寒くなりガス使用量が増えるため、家庭のガス料金が徐々に上がっていくだろう。
このことに対し、政府はガス料金に対しても支援制度を設ける方向で調整を進めている。
一方、ガソリンなどの燃料価格の上昇を抑制するために行われている石油会社を対象にした補助制度は、補助の上限を調整しながら来年1月以降も継続する方向だ。

日本の電気代高騰とロシアの関係とは?
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC) のウクライナ代表であるスビトラーナ・クラコフスカ氏の意見はこうだ。
「石油、ガス、石炭の燃焼は、温暖化とその被害を引き起こしている。
そして、ロシアは化石燃料を売り、そのお金で武器を買う。
化石燃料に依存している他の国々は、化石燃料から自由になることができない」
ロシアは、石油ではアメリカ、サウジアラビアに次いで世界第3位の産出国だ。
また、天然ガスはアメリカに次ぐ第2位の産出国である。そのことから、ロシア政府は収入源を化石燃料に大きく依存してきた。
しかし、ロシアのウクライナ侵攻に対して、欧米を中心にロシアから化石燃料の輸入を中止する経済制裁が増えている。
それに報復し、資源大国であるロシアは輸出量を減らして、世界のエネルギーに大きな影響を与えた。
日本は2022年5月にロシアへの経済制裁として、「ロシア産石油の原則禁輸」を発表している。
そのことによって、燃料価格が上昇し、火力発電などの発電コストが高くなり、電力の高騰の原因の一つになった。
今後、日本の禁輸は石炭や天然ガスにも及ぶと考えられている。
日本は天然ガスの8.2%、石炭の12.5%をロシアから輸入していた。
エネルギーの自給率が低く、海外から輸入される化石燃料に大きく依存している日本は、世界情勢による燃料価格の高騰を受けやすい。
小麦など、ロシアやウクライナが輸出する穀物の価格が上昇しているように、生活に欠かせないエネルギーを輸入に依存した日本が、危機に弱く不安定であることを痛感させられる。

新制度は「愚策」になるのか!?電気代抑制2兆円の行方
13日に日銀が発表した9月の国内企業物価指数は前年同月比9.7%上昇し、過去最高の116.3となった。
これは資源価格の高止まりや、歴史的な円安が影響している。
さらに、物価の値上げが集中した10月は高くなる見込み。
12日、日銀の黒田総裁はG7会合出席のため訪問中の米国で、金融緩和継続を改めて示した。
物価高の一因である円安を止める材料はなく、財政出動で有効な物価対策が今後も必要だ。
自民党の茂木幹事長や萩生田政調会長が示した「電気料金の1割以上の支援」は年間2兆円近いとの見込み。
政府がガソリン価格の高騰を抑制するために石油元売り会社に出している補助金。
財務省が実施した予算執行調査によれば「小売価格は補助金全額分が抑制されている」と回答したガソリンスタンドは45%にとどまった。
財務省は「ガソリンの販売価格に補助金の全額が反映されていない可能性がある」と述べている。
ガソリン補助金は9月までで1兆9000億円に上った。
ガソリン補助金は月額3000億円とされ、春まで続けば3兆円近くになる。
電気代抑制の2兆円と合わすと約5兆円で、年間の消費税2%分に相当だ。
よって、もし元売りや電力会社を介さずにこの財源で1年間消費税を2%引き下げる方が経済効果も大きいのではという声もあがっている。

意見が二転三転する岸田首相
数日前に岸田首相は「電力会社へお金は投入しない」とコメントしていた。
既に方針が二転三転しており、現場で対応する小売電気事業者の負担が増大しないか危惧する声もあがった。
ウクライナ危機を契機としておこっている世界的なエネルギー価格の高騰の中で、どの様に国民生活を守るか、というのは政権にしかできないものである。
エネルギー価格上昇は、ロシア軍によるウクライナ侵攻の影響だけでなく、輸入に頼りすぎてきたことも要因だ。
石油や天然ガスなどの資源について、他の手段を開発し、生産する必要がある。
この根本が解決しない限り、エネルギーの価格上昇は少なくとも数年間は継続する可能性があるとも言われている。
岸田首相には対症療法的な対策だけではなく、体系的なエネルギー戦略を考えていただきたい。
続くウクライナ危機に対して、そのような一貫したエネルギー政策が求められている。
今回の補助的な政策はどの程度継続し、どのように経済への影響を考慮していくのかまだわからない。
今後、経済的な対策を発表していく上で、これら中長期的な考え方も合わせて打ち出して欲しい。
