【抗議】広島の被爆者が安倍氏の「核共有」発言に対して猛反発する
ロシアのウクライナ侵攻を受け先日、安倍晋三元首相は米国の核兵器を国内に配備し、日米同盟で運用する「核共有」政策の導入について、「議論していくべき」と発言した。
これを受け、広島の被爆者らから「非常に危険」と猛反発の声があがった。
広島県原爆被害者団体協議会の箕牧智之理事長は、「国会議事堂を被爆者で囲んで、発言を取り消せと訴えたい。これまで76年間、核も戦争もない日本を見守ってきたが、この発言で政治が危険な方向に進んでいる気がしたし、死んでも死にきれない」と非難した。
さらに同協議会の佐久間邦彦理事長は、「原爆の平和祈念式典の際にはいつも、非核三原則を堅持すると述べていたが・・・戦争被爆国として日本は核廃絶をリードしていく立場であるのに」と非難した。
そして、ロシアのウクライナ侵攻やプーチン大統領の「核」発言を巡り、「核武装の世論が高まっていているように感じ、そういった風潮は怖いし、核で平和は保てない。
恐怖が増大し、悪循環になる。非常に危険な考え方だ」とした。
岸防衛相「非核三原則で核共有は認められない」
自民党の安倍晋三元首相がフジテレビ番組内で、「核共有」の必要性について述べていたことに関して、岸信夫防衛相は、「非核三原則を堅持していくことから認められるものではない」と示した。
さらに、「安倍氏の発言について、政府としてのコメントは差し控える。その上で政府として政策上の方針として非核三原則を堅持していくとの考えに変わりはない」と付け加えた。
共産、「緊張高める」と安倍氏を批判
共産党の小池晃書記局長は、ロシアによるウクライナ侵攻で米国の核兵器を自国領土内に配備し、共同で運用する「核共有」を議論する必要性を述べた自民党の安倍晋三元首相を批判した。
小池書記局長は、「安倍氏の発言は東アジアの緊張を高めるだけとなり、被爆者のみなさんも反対している。こういった発言は慎むべきだ」と強調した。
また、岸田文雄首相が28日の参院予算委員会で、非核三原則を堅持する立場から「認められない」との認識を示したことについても、「日本の首相として極めて当然の発言であり、今後もそういった立場に立っていくべきだ」と述べた。
維新幹事長、核共有の議論排除せず
一方、日本維新の会の藤田文武幹事長は、「核共有」に関する議論を排除しない構えを示し、自民党の安倍晋三元首相に賛同の姿勢を示した。
国会内で記者団に対し、「中長期的な国家の安全保障環境をどう作っていくかという議論はタブーなくやるべきだ」と述べた。
現在、世界の重大ニュースとして起きているロシア軍によるウクライナ侵攻を受け、本当に憲法9条だけで、日本を守れのかという懸念が大きくなっていっており、9条そのものの在り方をウクライナの状況に関わらず議論していかなければならないとした。
「9条で日本を守れるのか!?」
ロシア軍によるウクライナ侵攻が続く中、SNS上では今後、日本は「憲法9条で国を守れるのか」という懸念の声が増え、対話が全く通用しない国際社会の厳しい現実に直面し、危機感をあらわにした。
この状況に護憲勢力は警戒を強めており、夏の参院選に向け「9条改憲阻止」を訴える共産党は火消しに躍起となっているようだ。
この事態に、共産の志位和夫委員長はツイッター上で、ロシアによるウクライナ侵攻を強く批判した一方で、「憲法9条を現在起きているウクライナの問題にあて論ずるならば、プーチン氏のようなリーダーが選ばれようとも、簡単に他国へ侵略できないようにするための条項が憲法9条になるのです」と述べた。
しかし、プーチン大統領のようなリーダーに率いられた覇権国家が日本への侵攻を試みた場合の9条の効力は不透明とされている。
そして、日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)は「共産党はこれまで9条によって他国から侵略されないと言っていたのでは」と反応した。
自民党の細野元環境相も「論ずべきは、憲法9条があれば他国からの侵略を防げるのか?ということであり、今回のウクライナのように、残念ながら答えはノーだ」と述べた。
また、「我が国を守るのは自衛力と同盟と同志の存在であり、志位委員長のロジックでは他国のための9条になってしまう」と答えた。
先の衆院選での改憲に、維新や国民民主党らが議席を伸ばした一方で、共産や立憲民主党らが後退したことへの危機感もみえる。
今回、ロシアによるウクライナへの一方的な侵攻により、憲法9条だけで果たして平和は守れるのかという論点に対し、与野党による9条の見直しの議論を進めるきっかけになることが予想される。