安倍元首相「桜を見る会」前夜の夕食会補填疑惑から逃げ切り
安倍晋三元首相の後援会が、「桜を見る会」前夜に開いた夕食会の費用を元首相側が補填していた問題を巡って不起訴とされた東京地検捜査部の判断。
それに対し今年7月東京第一検察審査会が不起訴不当の議決を下し、捜査のやり直しがされていたが、12月28日東京地検特捜部は証拠が十分ではなく嫌疑不十分とし、再び不起訴処分を下した。
不起訴不当、そして再び不起訴と二転三転
2020年5月、安倍元首相が桜を見る会前夜の夕食会を巡り政治資金法違反、公職選挙法違反の容疑で告発された。
その年の12月東京地検は安倍元首相の公設秘書ひとりを政治資金規正法違反(不記載罪)で略式起訴したものの、安倍元首相については公職選挙法、政治資金規正法のいずれの違反についても不起訴であるとした。
そこで、今年2月には、上記の東京地検特捜部の安倍元首相に対する不起訴が不当であるとして検察審議会に審査が申し立てられた。
この申し立てでは、略式処分を受けた元公設秘書、安倍元首相、そして資金管理団体「晋和会」の関係者らを被疑者とした。
しかし、3月には元公設秘書に関して起訴されなかった2015年の不記載罪について、東京第5検察審議会が不起訴不当の決議をした。
そして今年7月30日、東京地検特捜部の安倍元首相に対する処分について不起訴の一部は不当であるという議決が検察審査会によって下された。
しかし12月28日東京地検特捜部は再度の調査で新しい証拠が見つからなかったため、安倍元首相の責任を問うのは困難と判断、時効成立、嫌疑不十分として再び不起訴とした。
起訴相当という議決ではなかったため、この容疑に対する2回目の審査は行われることなく、安倍元首相のへの刑事責任が問われないまま捜査は終了となった。
何が問題だったのか?
そもそも「桜を見る会」の前夜の夕食会の何が問題であったのか?
この夕食会は安倍晋三後援会によって東京都内のホテルで主催され、会費は一人5000円の会費であった。
そして集めた会費では足りなかった費用を安倍元首相の後援会と資金管理団体が補填して支払っていたというものだ。
そして、2016年から2019年までの政治資金収支報告書に徴収した会費分と補填分を記載していなかったという。
安倍元首相は、この記載されなかった会計処理については公設秘書から知らされていなかった、自らは補填はしていないという国会答弁が事実ではかったと謝罪している。
二つの違反容疑
検察審査会が審査したのは次の二つの違反容疑だ。
1つ目は夕食会の参加者への飲食代金のうち不足する部分を安倍元首相側が補填していたという行いが、有権者に対する寄付に相当するため、寄付の禁止を定める公職選挙法に違反。
そして2つ目は資金を管理する団体「晋和会」の会計責任者の選任と監督を怠ったという政治資金規正法違反だ。
検察審査会ではそのうちの一部、公職選挙法の不起訴は不当であるとする議決を発表した。
この議決では、秘書がやったことだとしてわれ関せずの首相の姿勢が国民感情として納得できない、説明をするべきだと批判している。
検査審査会は、検察が聴取したのは一部の支援者と安倍元首相だけで、その聴取をもとに不起訴と判断したのは問題として、メールなどの客観的資料も調査して認定すべきだったとした。
不起訴不当とは、検察審査会が議決する審査の結果のひとつであり、検察官が公訴を提起しない処分、すなわち不起訴処分を不当と認めるとき、審査員の過半数で議決するというものである。
検察官はこの議決を参考に再度調査して処分を決定する。
これは強制起訴につながる起訴相当議決ではない。
したがって、特捜部が再審査で不起訴を判断すればその時点で捜査が終了する。
28日の東京地検特捜部は不起訴を発表したため、これ以上の追及がされないこととなり、安倍元首相は問題から逃げ切った形になる。
検察審査会って何?
検察審査会とは聞きなれない言葉だ。
検察庁と裁判所のホームページで詳しい説明がされているので、簡単にみてみよう。
検察審査会制度とは、1948年(昭和23年)に始まった制度で、検察官が被疑者を起訴しなかったことの当否を11人の検察審査員が審査するという制度だ。
この検察審査員というのは専門の職業ではなく、20歳以上の選挙権を持つ国民の中からくじで選ばれる、私たちと同じ国民で構成されるというわけだ。
なぜこんな審査会が必要なのか?
それは、検察官が不起訴とした判断が果たして国民の目から見て適正かどうかを審査することで、国民の感覚を司法に反映させるというねらいがある。
ということは、私たちは条件さえみたしていれば、ある日突然、検察審査員に選ばれるという可能性もあるわけだ。
審査員に選ばれても、特別な知識、経験や法律の知識も必要ない。
最も大切なのは、自分の良識に基づいて判断ができるかどうか、だという。
会議は非公開、審査員に選ばれても、不当な圧力がかかる可能性がないわけではないので、人にそれを知らせるのは勧めない、と裁判所のホームページにはあるので気を付けよう。
しかしながら、検察審査員、補充員に選ばれる確率は約1万4000人に1人、0.007%だという。
それでも、どうせ当たるなら宝くじにしてほしいが。