中日・阿部寿樹内野手と楽天・涌井秀章投手の交換トレード成立
実績のある選手同士の予想外のトレード
2022年もプロ野球のシーズンが終了し、移籍やトレード、契約更新などのニュースが賑わう時期になってきた。
そんな中、中日・阿部寿樹内野手と、楽天・涌井秀章投手の交換トレードが成立したことが、11月15日にそれぞれの球団から発表された。
勝負強い打撃が持ち味の阿部は1989年生まれの32歳。
岩手県立一関第一高校から明治大学に進学し、本田技研工業野球部を経て2016年にドラフト5位で中日に入団。
プロ4年目の2019年には、初めて規定打席に到達。
打率2割9分1厘、7本塁打、59打点を記録した。
トレードマークとも言える髭や、落ち着いた容貌や雰囲気から「マスター」の愛称で親しまれ、二塁のレギュラーとして活躍していた。
昨シーズンは東京オリンピックの休暇中に負った第一肋骨の怪我の影響もあり、出場した試合は66試合だったが、今シーズンは133試合に出場。
打率2割7分、9本塁打、57打点という結果を残し、シーズンを終えていた。
岩手県出身の阿部にとっては、地元球団への加入となる。
一方の涌井は1986年生まれの36歳。
横浜高校出身で、高校入学時から“松坂二世”と呼ばれていた。
2005年にドラフト1位で西武に入団。
2007年、17勝をマークし、最多勝のタイトルを獲得。
2009年には沢村賞を受賞し、西部のエースとして活躍した。
2015年にはロッテで、2020年には楽天で最多勝に輝き、NPB史上、唯一となる3球団で最多勝獲得投手となった。
モデルの押切もえと結婚したことでも知られる。
今シーズンは、10試合で4勝3敗。
防御率は3.50、通算154勝という記録は、ヤクルトの石川に次ぐ現役選手の中で2番目に多い勝利数を誇る。

阿部の放出は苦渋の決断
今回の交換トレードは、先発の枚数に厚みを増したいと考える中日と、野手の強化に力を入れたい楽天との思惑が一致した形だ。
トレードの発表後に、ナゴヤ球場で中日の加藤宏幸球団代表が取材に応じ、「(涌井は)まだまだ先発としてできると思っている」と涌井獲得のねらいについて明かした。
先発投手は補強ポイントの1つとしたうえで、「十分やってもらえるという判断」だと語り、今季チーム2位の成績だった阿部を放出することに関しては「若い選手を使っていくという方針もあり、楽天に行った方が彼の実力を発揮できるのではないかとの判断があった」と説明。
「苦渋の決断かと聞かれれば、『そうです』」と話し、「実力を発揮してくれれば、こんなに嬉しいことはない」と阿部に向けて期待を込めた。
加藤代表が話すように、中日は先日のドラフト会議で内野手4人を指名するなど若返りを進めている。
経験が豊富な涌井の加入は、高橋宏斗ら若手の投手陣への相乗効果も期待できる。

涌井の放出は「さみしい気持ちがある」
楽天のゼネラルマネージャーも兼任する石井一久監督は、発表後にオンラインで取材対応し、安部の獲得について「本当に心強い打者」だと語った。
今回のトレードは中日側から持ち掛けられた話だと明かし、外野を含め複数のポジションが守れて、しっかり打撃ができることが獲得の理由だと説明。
今シーズンの阿部は二塁打を31本打っていることから、「塁打数はすごく魅力的な打者だ」とも話した。
阿部の生まれ故郷でプレーすることになることに関しては、「運命というものを感じる」とコメントし、「球団だけではなく、ファンが必ずサポートしてくれるはず。
さらにもう1レベル上というところを構築してくれるのではないか」と期待を寄せた。
そして、手放すことになった涌井について「彼なら本当に大丈夫だと思う」と話し、「新天地に行っても活躍してくれることを願っている」とエールを贈った。
しかし、石井監督にとって涌井は西武時代からの仲。
「友人としても素晴らしいキャリアを積み重ねてくれたら嬉しい」としながら「さみしい気持ちはありますね」と胸中を明かした。

両選手の感謝と決意表明
15日、阿部と涌井の交換トレードのニュースが報じられると、ネット上に衝撃が走り、Twitterでは「阿部寿樹」や「涌井さん」がトレンド入りした。
「衝撃!」「理解できない」などのツイートが続出し、実績のある選手同士の予想外のトレードに驚く人が多かった。
発表の翌日となった16日には、阿部がナゴヤ球場を訪れ、来シーズンに向けてキャンプ中のチームメイトと別れの挨拶を交わした。
午後2時半過ぎに球場に到着した阿部は、トレーニングウエア姿でグラウンドに登場。
フリー打撃の指導中だった中村2軍打撃コーチや渡辺2軍内野守備走塁コーチに一礼。
続いて、隣接する中日屋内練習場に移動し、山井2軍投手コーチに直立不動の姿勢で挨拶。
投手陣からの握手攻めにあい、「ありがとう」と感謝していた。
その後、報道陣の取材に応じた阿部は、「名古屋のファンに見てもらえるように、全国ニュースに載るよう頑張ります」と新天地に向けての決意を表明した。
一方の涌井は、球団を通じてコメントを発表。
現在の心境について、「4球団目なので、新しい友だち作りを柳(裕也投手)に橋渡ししてもらい、新しい野球人生をスタートしたいと思います」と語った。
そして、「パ・リーグで18年やって、東北の皆さんの温かい声援は、味方になって尚温かく感じました。日本シリーズで対戦できるように頑張ります」と、感謝と決意を表明した。
