確定死刑囚3人による絞首刑失効差し止め提訴!死刑は残虐な刑罰に該当するのか?

死刑囚による死刑執行の差し止めや賠償を求める訴え

11月29日、大阪拘置所に収容中である確定死刑囚3人が、「絞首刑による死刑執行は残虐な刑罰を禁じる憲法などに違反する」とし、国を相手取り、死刑執行の差し止めや計3300万円の賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。

明治時代から刑法により死刑の執行方法は絞首刑と定められており、変わっていない。

しかし原告側は「国民は実態を知らされていない。

国が『残虐ではない』と主張するなら、司法の場で実態を明らかにすべきだ」と訴えている。

訴状によると、「憲法36条の『拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる』という一文や、日本が批准している国際人権規約(自由権規約)の中の『何日とも残虐、非人道的、品位を傷つける刑罰を受けない』という内容に反する」と主張。

代理人弁護士を務める水谷恭史弁護士(大阪弁護士会)は大阪市内で記者会見を行い、「日本の死刑制度の在り方を問う」と説明。

「死刑執行に関する情報が公開されないまま、死刑の存廃を問うのは極めて不合理」とも語った。

さらに、「絞首刑では長くて意識が数分間保たれるため、その間痛みや恐怖を感じ続けなくてはならない。

また、遺体の損傷が激しく、個人の尊厳が傷つけられる」との主張もしている。

法務省は、「訴状が届いていないので、コメントできない」としている。

絞首刑は長くて意識が数分間保たれるという
絞首刑は長くて意識が数分間保たれるという

死刑を巡るさまざまな経緯や考え

提訴した3人は、いずれも死刑が確定されてから10年以上が経過している。

そのうち2人は、刑事裁判のやり直しを求める再審請求中だという。

代理人は3人の氏名を明らかにはしていない。

過去の刑事裁判では「絞首刑は瞬間的に意識を失うため、死刑囚に苦痛を与えるものではない」とする法医学者の鑑定書が提出された例がある。

しかし、原告側はオーストラリアの法医学者が、この鑑定書とは異なる見解を示した証言を挙げ、「医学的に誤っている」との主張もしている。

日本の死刑制度を巡っては、1948年に行われた大法廷判決で、最高裁が「時代や環境に照らして、人道上、特に残虐だと認められない限り、憲法36条が禁じた残虐な刑罰には当たらない」として、死刑を合憲だと判断している。

さらに、1955年の大法廷判決では、絞首刑について「特に人道上、残虐とする理由は認められない」としている過去がある。

また、2009年には絞首刑による死刑の違憲性を巡り、大阪市此花区にあるパチンコ店で起きた放火殺人事件の刑事裁判で争われたこともあった。

2011年に大阪地裁で下された判決では、「死刑囚は多少の精神的・肉体的苦痛は甘受すべきだ」とし、違憲ではないとされ、最高裁で確定している。

法医学者によっても見解に違いがある
法医学者によっても見解に違いがある

死刑執行にまつわる議論と実態

そもそも“死刑”とは、犯した罪を自らの死によって償う刑罰。

刑法11条により、死刑は刑事施設内において絞首にて失効することが定められているのだ。

しかし、国際人権団体“アムネスティ・インターナショナル”によると、2020年末現在で、日本や米国など55カ国が死刑制度を維持しているが、その一方で法律上または事実上廃止している国は144カ国に上っているという。

そのため、国際的な潮流に逆行している日本などには、世界から厳しい目が向けられているのも事実である。

死刑制度については、たびたび議論が繰り広げられている。

内閣府は1994年以降、5年に1度「死刑制度についての世論調査」を行っている。

前回調査は2019年11月に行われ、結果は2020年1月に発表されているが、「死刑はやむを得ない」と容認する回答は80.8%だった。

その前の調査に比べ、0.5ポイント増加しており、8割を超えたのは4回連続。

一方、「死刑制度を廃止すべきだ」との回答は9.0%で、前回調査より0.7ポイント減っていた。

死刑を容認する理由としては、「被害者や家族の気持ちがおさまらない」が最も多く56.6%、

続いて「凶悪犯罪は命をもって償うべきだ」(53.6%)、

「凶悪犯を生かしておくと同じ罪を犯す危険がある」(47.4%)となっている。

廃止を求める理由については、「裁判に誤りがあったら取り返しがつかない」との回答が最も多く、50.7%。

この回答は、前回調査より4.1ポイント増加していた。

続いて「生かして罪を償わせた方がよい」との回答が42.3%との結果だった。

5年に1度の調査のため、次回調査は2024年ごろ行なわれることになるが、死刑を廃止する傾向の世界の中で、日本国民の中には死刑を容認する意見が多いことがわかる。

日本で死刑制度が廃止にならないのは、この世論というものが大きいと言われている。

また、日本には「無期懲役」という刑罰はあるが「終身刑」がないことも理由に挙げられるだろう。

無期懲役は期間が決まっていないというだけで、実際には出所できるが、終身刑とは文字通り一生刑務所の中で刑を償わなければならない。

日本に終身刑がないのは、税金が掛かるという費用の問題があると言われている。

先日、葉梨康弘元法務大臣が「法務大臣というのは、朝、死刑のハンコを押して、昼のニュースのトップになるのはそういうときだけという地味な役職だ」などと失言し、更迭されたことが記憶に新しいが、実際死刑が確定しても、法務大臣が署名しなければ死刑は執行されない。

そのため、死刑が確定しても死刑が執行されない死刑囚は大勢いる。

法務大臣によって、死刑が執行される件数には差があるのである。

日本の死刑制度を考える意味でも、今回の裁判の行方には注目が集まっている。

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。