倍賞千恵子さん イタリアの国際映画祭で「生涯功労賞」を受賞 “人間力”が人々を魅了する
26日(イタリア時間)、女優の倍賞千恵子さんが第25回ウディネ・ファーイースト映画祭でゴールデン・マルベリー賞(生涯功労賞)を受賞した。

日本人女優として初の栄誉
同映画祭は、イタリアで開催されるが世界最大のアジア映画イベントである。
過去には音楽家の久石譲さん、映画監督の大林宜彦さん、去年は北野武さんが同賞を受賞した。
日本人女優としては、倍賞千恵子さんが初の栄誉に輝いた。
映画祭では授賞を記念に、昨年のカンヌ映画祭「ある視点」部門に出品された『PLAN 75』(2022年/早川千絵監督)と、倍賞さん自らが選んだ『男はつらいよ』(1969年/山田洋二監督)『家族』(1970年/山田洋二監督)が上映された。
倍賞さんは「私が60年ちょっと映画に携わってきたことを、遠くの国の皆さんが見ていてくださったことが何よりも嬉しかったです。
ウディネ・ファーイースト映画祭は25周年。
私の歳を超えるまで、ずっと続けてくださいね。
皆さん、本当にありがとうございました!!」
と、喜びを伝えた。

フランスのスタッフも魅了される「なんてエレガントなんだ」
倍賞千恵子さんは幼少時には「のど自慢荒らし」と言われ、歌唱の賜物を持った人だ。
歌手デビューを果たし、松竹歌劇団に入学。
早くから「逸材」と言われてきた。
当時の女優はお嬢様育ちが多かったが、倍賞さんは下町育ち。
人々に愛され、その親しみのある気質が魅力だ。
松竹映画にスカウトされてからは、そんな彼女の魅力が山田洋二監督の作品に欠かせない存在となる。
「男はつらいよ」以外にも、「ハウルの動く城」ではジブリからご指名を受けて声優もこなした。
テレビドラマへの出演は少ないものの、志村けんのコント番組では、「男はつらいよ」のパロディでボケからツッコミまで対応し、笑いを取っていた。
2001年に乳がんが発覚してからは、ピンクリボン活動に参加、啓発活動に励み、女優業以外にも勢力的に歩まれている。
去年公開された『PLAN75』では、身寄りのない1人の高齢女性を演じ、凛とした美しさが観客を猛烈な力で物語の中に引き込んだ。
フランスのスタッフも、倍賞さんの人間味あふれる演技を「なんてエレガントなんだ」と感激。
誰もが倍賞さん演じるミチを好きになっていたというエピソードもある。
また、スタッフの名前を全て覚えるという、人間的にも素晴らしい方だったと称賛された。
倍賞さんは過去に『駅 STATION』の役柄についてこう語っている。
「男人間、女人間という言葉がありますが、私は『人間女』でありたいと思います。
人間であって、女である──そんな風に桐子という女性を演じたいと願いました」
今年82歳を迎える倍賞さん。
女優である前に、一人の人間として深さを磨いてこられた。
これからも彼女の人間力を通して、本当に大切なことは何なのか我々も触れていきたい。
