バイデン米大統領、プーチン氏巡る発言で釈明 同盟国からも苦言
バイデン米大統領は27日、ロシアのプーチン大統領が権力の座にとどまってはならないといった発言をレジームチェンジ、いわゆる体制転換を図るといった意味のものではないと釈明した。
このバイデン大統領の発言を受けて、欧州列国の代表たちは冷ややかな反応を見せており、ロシアとの緊張をより一層高めるものだととらえた。
訪問先となったポーランドでのバイデン氏の驚くべき発言は、ロシアの侵略に抵抗するウクライナへの支持を訴えた。
ワルシャワでの演説の締めくくりに出たもので、フランスのマクロン大統領やイギリス政府もこれには距離を置く姿勢を示した。
米政府当局者1人は、ウクライナの避難民から聞いた苦難の話にバイデン氏が動かされた可能性を指摘した。
プーチン氏「権力にとどまれず」とバイデン氏-米当局は体制転換否定
バイデン氏の欧州訪問前に実施された世論調査によると、ロシアによるウクライナ侵略に対する対応について、米国民の約70%ほどが、ほとんど信頼していないということが示された。
26日での演説で原稿にはない発言をしたことは賢明だったかどうか問われる中、大統領の側近らは米政府がレジームチェンジを目指す政策を採用したわけではないとの釈明を行った。
バイデン氏は27日に首都ワシントンの教会を出た際、プーチン氏の排除を望み体制転換を呼び掛けたのかとの記者の質問に対し、「違う」と強く否定した。
米国のスミス北大西洋条約機構(NATO)大使はCNNの番組「ステート・オブ・ザ・ユニオン」で、バイデン氏が演説前にワルシャワのスタジアムで避難民と面会したことを挙げ、「その日に聞いた話に対する信念を持った人間の反応だったと思う」と述べた。
バイデン氏は26日の演説前に、プーチン氏を「虐殺者」とも呼んでいた。
ブリンケン国務長官は、バイデン大統領が注目を集めた発言について、「プーチン大統領には、ウクライナや他のどの国に対しても戦争を仕掛けたり、武力などで侵略したりする権限を持たせてはならない」ということだったと説明した。
バイデン氏は、インフレ高進、ガソリン価格急騰、経済アジェンダの議会での行き詰まりなど、11月の中間選挙を前に国内の課題が山積している状況だ。
そういった中での、プーチン大統領との対立をさらに深め、緊張関係を高めるような発言したことには、リスクを伴う。
今のところ、バイデン氏の発言に対するロシア大統領府の公のコメントはほとんど出ていないが、米国と同盟国はウクライナ侵攻をストップさせるだけでなく、プーチン政権の排除も目指しているとするロシア側の主張を後押ししかねないと、欧州の同盟国は警告した。
マクロン仏大統領は「言葉や行動で事態をエスカレートさせるべきではない」とフランスのテレビで発言。
ザハウィ英教育相も、プーチン氏の将来については「他国ではなく、ロシア国民が決めることだ」と述べた。
米外交問題評議会(CFR)のリチャード・ハース会長はツイッター投稿で、バイデン氏の発言が「難しい状況だったのをさらに難しくし、危険な状況をさらに危険にした」と指摘し、大統領はダメージの修復に動く必要があると言及した。
また、上院外交委員会の共和党トップ、ジェームズ・リッシュ上院議員も、バイデン氏の発言を「恐ろしい失言」と指摘。
ワルシャワ演説での発言が「大問題を引き起こすだろう」と述べ、「この男が権力の座にとどまることはできない」と語った。
世論調査によるところでは、バイデン大統領の支持率は欧州訪問前には、過去最低である40%に低下し、ウクライナ情勢に対するバイデン大統領の対応について大いに信頼するという回答は12%にとどまる形になった。
なお、80%余りはウクライナでの戦争が核兵器の使用につながるのではないかとの不安の声が高まり、74%は米国がウクライナへ戦闘部隊を派遣することについて懸念をしているとされる。
プーチン氏に「権力を握らせておけない」
バイデン米大統領は、26日にポーランドの首都ワルシャワでの演説でロシアのプーチン大統領について、「まったくもって、この男に権力を握らせておくわけにはいかない」と宣言した。
バイデン氏は同日、ロシアのウクライナ侵攻に対して結束強化を図った欧州訪問の最後に、ワルシャワ王宮で演説した。
米ホワイトハウスはこの発言について、ロシア国内でのプーチン氏の権力や政権交代に言及したわけではなく、近隣諸国や周辺地域への権力行使を認めないという意味だと説明。
事前に用意された原稿にはない言い回しだったという。
米当局者らはこれまで、プーチン氏の排除を目指してはいないと明言してきた。
ロシアのぺスコフ大統領報道官はバイデン氏の発言に対し、同氏が決めることではないと反発し、「選ぶのはロシア国民だ」と強調した。