目黒寄生虫館にマイクロソフト創業者ビル・ゲイツさん訪れる
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寄生虫について知って欲しいと無料開放
東京・目黒区にある「公益社団法人目黒寄生虫館」をご存じでしょうか?
1953年に研究者だけでなく、一般の人にも“寄生虫”の事を知って欲しいと1953年に開館。
今までずっと無料開放を維持し続けてきましたが、新型コロナウイルスの影響で来場者は激減してしまい、収入源であったグッズの売り上げが激減したそう。
しかし依然と変わらず無料での維持を続けていくため、年間500万円を目標に寄付を呼び掛けていた。
そんな呼びかけに驚くべき人物が来場。
感染症対策への貢献が評価され、旭日大綬章(きょきょくじつだいじゅしょう)の勲章を受け取るため来日していたアメリカIT大手の「マイクロソフト」の共同創業者である「ビル・ゲイツ」さんだ。

館内を興味深そうにみるビル・ゲイツさん
公益社団法人目黒寄生虫館の館長である倉持利明さんは、来場されたビル・ゲイツさんに「どうしてここを訪れたのですか?」と質問したそう。
その問いにビル・ゲイツさんは「私たちの活動に通じるものがある」と言っていたそうだ。
館内を興味深そうにみて回ったビル・ゲイツさんは、自身の研究とかかわりが深い寄生虫のグッズである“ストラップとボールペン”を購入した。

SNSに投稿で世界に拡散
ビル・ゲイツさんは自身のSNSで寄生虫館を訪れたことについて投稿している。
「東京の目黒寄生虫館を体験した。世界最長のサナダムシとされるものを見た」とアップすると、この出来事は世界中に瞬く間に広がったという。
投稿をみた一般の人からも、寄付を呼び掛ける投稿が多く集まり拡散。
そしてそれまで目標の500万には程遠い210万ほどしか集まっていなかった寄付金も、ビル・ゲイツさんが来場してから10日ほどで500万に達したという。
集まった寄付金は「無料で寄生虫を学べる場」として開館した当時の気持ちを忘れずに、大切に使っていきたいと話していた。

なぜ70年間“無料”を貫きとおしているのか?
公益社団法人目黒寄生虫館は、創設以来70年間無料会館を貫いている。
それはコロナ禍で来場者が減っても変えずに運営を続けているのだ。
同館は医師で医学博士の亀谷 了さんが私財を投じて1953年に創設。2013年には法改正に伴い、現在の「公益財団法人」に移行した。
館内には国内外から集められた300点近くの標本や関連資料が展示されている。
昔の日本では寄生虫での感染症はありふれた病気であったという。
しかし亀谷 了さんが「公衆衛生の観点から、寄生虫に関してもっと研究し予防策を考えようという目的から同館を創設。
そして館内は研究者だけでなく、一般の人にももっと寄生虫について知ってほしい・みて欲しいという気持ちから無料での解放にしている」と当時語っている。
現在も「研究・啓発のための博物館であるため、来場者からお金をとってはいけない」という創設者のポリシーを引き継ぎ“無料”を貫いているのだ。
これまで何度も訪れた危機
経営の危機は新型コロナの影響だけではない。
過去には「バブル崩壊」「リーマンショック」といった世界的金融危機の影響も受けている。
しかし基本財産の運用や、寄付金などで危機を乗り越えてきているのだ。
90年代以降にはグッズ販売も開始し、同館の重要な財源となっている。
最もコロナの影響を受けた2020年に比べて来場者は戻りつつあり、2022年の夏には“行動制限なしの夏休み”を迎えることができたため、多くの来場者が訪れたそうだ。
しかし、それでも財源は厳しく公式サイトで「寄付金のお願い」を掲示し、2020年にはより明確に「500万円を目標」と設定しさらなるお願いを訴えてきていた。
そんな中でのビル・ゲイツさんの来場、そしてSNSに投稿したことから公式サイトへ世界中からアクセスがあったという。
またSNSで拡散されたことで目標の寄付金額500万円も達成することができた。

支援者への感謝の気持ち
今回の嬉しい出来事に公益社団法人目黒寄生虫館では、寄付金に対するお礼は「支援者一人一人にあわせて返信する」など、少しでも感謝の気持ちが通じるように工夫していくそうだ。
寄付金を受け取った館長は「ありがたく受け取った寄付金は今後も公益のために使っていきます」と話している。
93年以降大規模改修工事をおこなっている同館。
遠方から大きな荷物を抱えて来場されたお客様に合わせてコインロッカーの設置。
車いすで来場されたかたが気持ちよく楽しんでもらえるようにリフトを設置したりトイレを改修したりしている。
そしてコロナ対策としても換気力の強い換気扇を導入しているのだ。
公益社団法人目黒寄生虫館では、来場してくれたお客様やいつも支援してくださる方々など、多くの人の思いに応えられるように、これからもできる限りのサービスに努めていくとコメントしている。
