社会・文化

カナダで刃物襲撃10人死亡 容疑者は逃走中

背後に厳しい先住民保護地区問題

カナダ中西部のサスカチワン州では4日、先住民保護区など13カ所で通行人らが刃物で刺され10人が死亡した事件で、逃走していた男2人のうち1人の死亡が確認された。また、けが人の数が15人から新たに3人増えて18人になったとのこと。

この事件は4日午前5時40分頃、先住民が住むジェームズ・スミス・クリー・ネーション地区から最初の通報あった。

襲撃は同地区から約25キロ離れたウェルドン村など13カ所に及ぶ広範囲で起こった。

容疑者2人は、同日の早朝から車で移動しながら家屋に押し入るなどして刃物で住民を襲ったとみられる。

被害者の一部は狙われ、他の人は無差別に襲撃された可能性があるという。

先住民保護地区

容疑者は逃走中

カナダの警察によると、手配中のダミアン・サンダーソン容疑者(31)と、マイルス・サンダーソン容疑者(30)は兄弟であると発表した。

兄のダミアン容疑者は5日午前に事件現場の一つ、先住民居住区ジェームズ・スミス・クリー・ネーションの草むらで見つかり、午後1時すぎに死亡が確認された。

遺体には自分で傷つけたのではないとみられる傷痕があったという。

弟のマイルス容疑者はまだ見つかっておらず、マイルス容疑者も負傷している可能性がある。

警察当局者は「容疑者が治療を受けようとする可能性がある」と警戒を呼びかけた。

容疑者は逃走中

容疑者と接触した住民より

カナダの公共放送CBCは、容疑者と思われる不審な男と接触した住民たちの情報を伝えた。

ある女性より「顔を覆った男が歩いてきて、口を刺されて怪我をしているので病院に運んでほしいと言った。私が、怪我を確認しようとすると男は『ダメだ。本当にひどい怪我だ』と言っていた」とのこと。

また、別の女性は「朝起きてコーヒーを飲んでいると、近所を車が通り過ぎた。その後、顔を覆った男が、『顔を切ってしまったので助けてほしい』と訴えてきた。

誰かを呼ぼうとして私が家の中に入っている間に、その男はどこかへ行ってしまった。不審に思って警察に通報した」と証言した。

警察幹部は容疑者らにただちに自首するよう呼び掛け、死者の遺族らや負傷者に向けて見舞いの言葉を述べた。

そして、サスカチワン州のほか、隣のマニトバ州、アルバータ州にも警戒情報を出し、地域住民に安全な場所から出ないよう注意を呼びかけている。

この緊急状態は、欧州全土の約半分という広大な範囲となった。

事件が起こった動機とは

同幹部は記者会見で「現時点で動機について話すのは難しい」と述べた。

ニューヨーク・タイムズでは、事の始まりは小さな先住民コミュニティーで夜明け前に起きた言い争いが数時間で集団殺害にエスカレートしたと伝えている。

事件が起きたサスカチワンを拠点とする先住民族の代表は「有害な違法薬物が私たちのコミュニティーに侵入し、このような破滅を引き起こした」と、薬物絡みの犯行だと示唆した。

また、カナダ放送協会(CBC)によると、現在逃走中である弟のマイルス容疑者は、強盗罪などで5年近く服役していた。

その後、条件付きで釈放されたが、ケースワーカーとの連絡が途絶えて姿を消したため、警察当局が「不法に逃亡した」として今年5月から行方を捜していたという。

警察

厳しい先住民保護地区の現状

カナダ中部にあるサスカチワン州は、西側にアルバータ州、南側に国境を隔ててアメリカモンタナ州などに面している。

州の面積は65万1900平方キロメートル、人口は約120万だ。

アルバータ州 カルガリーにある日本総領事館によると、サスカチワン州は農業や鉱業が盛んで、約500人の在留邦人が暮らしている。

そのうち、少なくとも人口のおよそ1割にあたる11万人以上が先住民とされ、ロイター通信によると、事件現場と思われるまちの1つは先住民のコミュニティーがあることで知られていた。

国立民族学博物館・岸上伸啓教授より

「70以上のリザーブ、居留地ないし保留地が存在するが、(居留地の)人口の半分以上、約6割はもう居留地を離れ、都市に住んで生活している。中にはホームレスになったりしている人もいるのが現状」

「サスカチワンだけの問題ではなくて、いわゆるカナダの先住民族が住んでいるリザーブ、保留地・居留地の中では失業とか十分な教育が受けられないとか、お酒の問題とか様々な社会問題・経済問題があるといわれている」

先住民保護地区には、資源や仕事が限られ、様々な問題が潜む中で今回の襲撃事件が起こった。

刃物襲撃

外務省 より注意喚起

外務省は、カルガリーにある総領事館などを通じて情報収集を進めており、現時点で日本人の被害は確認されていないとのこと。

外務省はこの襲撃事件の対応として、現地に滞在している日本人などに注意喚起のメールを送り、不審な人物に近寄らないことや、ヒッチハイクをしている人を車に乗せないこと、それに、報道などを通じて関連情報を入手することを呼びかけている。

カナダのトルドー首相は「極悪非道な襲撃に衝撃を受け、打ちのめされている」「襲撃は恐ろしく、心が痛む」と声明し、当局の最新情報に従うよう呼びかけた。

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