気になる! 消費税引き上げ検討の行方と消費税の歴史
税制調査会にて消費税の引き上げが検討
10月26日、政府の税制調査会が開催され、消費税や自動車税に関しての議論が行なわれた。
参加した複数の委員からは、「未来永劫、消費税が10%のままで日本の財政がもつとは思えない」と発言。
国の財源確保に向けて中長期的な視点で、消費税を現在の10%から引き上げる議論が必要だとする意見が相次いで出された。
令和4年度の歳入の内訳を見てみると、消費税は所得税や法人税と並んで歳入の2割あまりを占める重要な財源となっている。
人口の減少や少子高齢化が今後ますます進んでいくと見られる日本社会において、社会保障等の財源確保に向けて、消費税の役割が一層重要になることが示された形だ。
委員からは「今後の高齢化の進展に合わせ、消費税についての議論を遅れないよう行なうためのスタンバイの必要がある」などの意見が、複数の委員から出た。
一方、自動車や燃料関連の税収は、環境性に優れ、重量税などが優遇される電気自動車(EV)などに対する減税措置(エコカー減税)の導入を主因として、過去15年間で約1.7兆円減収していることが示された。
今後、EVやカーシェアリングの普及により、車の排気量や所有を基準に課税している現行制度のままではさらに減収が進むことが懸念されている。
こうした状況を踏まえて、「走行距離に応じた課税も考えていく必要がある」と主張する委員もいた。
「EVは普及したが、ガソリン車よりも重量があり、道路への影響があるため使えないという事態を避けるために財源の確保が必要」
「走行距離に応じて課税することも議論すべき」
などの意見も出されたが、EVが普及するにあたっての足かせにならないよう慎重に進めるべきとする意見もある。
そして、GoogleやAppleなどのデジタルプラットフォームを運営するするグローバル企業に対する付加価値税の納税義務について、日本ではEUなどと比べて議論が遅れている現状がまざまざと示され、国教をまたぐ場合の適正な税の確保に向けて課題となる可能性が指摘された。
さらに、食品などでの軽減税率に関しては、「低所得者ほど負担の割合が高い問題に対処できていない」との指摘もあり、課題は山積みの状態だ。

消費税の歴史を振り返る
ここで、消費税導入の歴史を振り返ってみよう。
消費税が8%から現在の10%に引き上げられたのは、2019年10月1日、安部政権下のことだった。
3年前の当時も、急激な少子高齢化が進み、医療や介護などの社会保障コストが膨らみ続けていることや、教育無償化の充実に向けた財源の確保が目的とされた増税だった。
消費税が導入されたのは1989年。
10%に増税された2019年のちょうど30年前のことだった。
2019年の納税時には、初めて“軽減税率”を設け、外食や酒類を除いた食品と、週2回以上発行される新聞の定期購読については税率8%が継続されている。
また、当時は中所規模の小売店などでクレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済をすることで、支払額の中から最大5%分がポイントとして還元される“ポイント還元制度”が9か月間限定で行われていた。
それから3年経って、再び消費税の引き上げが議論されているわけである。
消費税が導入されたのは1989年だが、最初に議論されたのはそのさらに10年前、1979年に遡る。
同年1月、当時の大平正芳首相が、財政再建を目的として“一般消費税”の導入を閣議決定。
しかし、10月に行なわれた総選挙中に導入断念を表明する事態となっている。
結局、この選挙では大幅に議席を減らすことになってしまった。
それから8年後の1987年2月、当時の中曾根康弘首相が、“売上税法案”を国会に提出。
しかし、このときも国民の大きな反対が巻き起こり、同年5月に廃案となっている。しかし、翌年の1988年12月、消費税法が成立し、1989年の4月に施行。当時の税率は3%だった。
尚、中曽根元首相は、消費税法施行の直後にリクルート事件などの影響もあり、同年6月に辞任している。
消費税導入から5年後の1994年2月、当時の細川護熙首相が消費税を廃止し、税率7%の国民福祉税構想を発表。
しかし、連立政権内の足並みの乱れなどを理由に発表翌日に即撤回している。
同年11月、村山富市元首相政権下で、消費税率を4%に引き上げ、さらに地方消費税1%を加える税制改革関連法が成立。
それから3年後の1997年4月、橋本龍太郎元首相の政権下で、消費税率が5%に引き上げられた。

長く続いた消費税5%の時代
消費税5%の時代は長く続き、2009年9月には民主党が「消費税率は4年間上げない」とするマニフェストを掲げ、総選挙で勝利し、政権交代を実現。
鳩山由紀夫氏が首相に就任した。
しかし、翌年の2010年に菅直人元首相が消費税10%を打ち出し、選挙に惨敗。
2012年6月、当時の野田佳彦首相が消費税率の引き上げについて、2014年に8%、2015年に15%とする法案を提出し、可決成立。
次の安部政権下において、2014年4月消費税は8%に引き上げられた。
同年11月、2015年10月に10%に引き上げる予定だったが、2017年4月に1年半延期されることが発表される。
さらに、2016年6月には、2017年4月の税率引き上げが2019年10月まで2年半延期されることを発表。
その後は、予定通り2019年10月に消費税率10%となり、現在に至る。
消費者の負担が増している中、再び議論され始めている消費税の引き上げ。
今後どのように議論が進むのか、目が離せない状況である。
