茨城県教育委員会が定めた部活動の規制に生徒や保護者からは悲痛な声
厳しい部活動の時間規制
2022年12月に、茨城県教育委員会が新しい『部活動の運営方針』を発表した。
この規制は2023年4月から、公立高校のみに適用されるが、規制内容の中でも特に部活動を行う時間の改定に、公立高校の部活動に参加する生徒や生徒の保護者から落胆や反発する声が多数聞かれている。
部活動時間の改定内容は、「平日2時間、休日4時間、週計12時間」に限られ、運動部、文化部共に適用される。
しかも、部活動の休日を平日と土日を各1日、週計2日取らなくてはならない。
つまり、多くの練習時間を確保できる土日のいずれかを、必ず休みにしなくてはならないのだ。
通常、テスト前は部活動が休みになるが、その分の平日2時間を繰り越すことは可能だが、平日の分を土日に充てることはできないという。
部活動に青春をかける生徒達や、そんな我が子を見守りサポートする保護者にとっては残酷な規制だ。
「強くなりたい」
「上手くなりたい」
「大会でよい成績を残したい」と願い、努力してきた生徒達には受け入れがたいだろう。
保護者は、「“平日2時間”はとても厳しいけど、準備や片付けの時間を別にすればなんとかなるかもしれない。
問題は、休日を土日どちらかのみの4時間にされること」と語る。
「地区大会や県大会などの公式戦に参加した場合、試合終了後は次の対戦校の試合を見学すると4時間を超過してしまう。
見て学べることも多いのに、他校の試合を見ることすらできなくなるなんて」と悲痛な声を上げていた。
運動部にとって、土日は貴重な練習試合の機会となる。
しかし、その貴重な練習試合の機会も奪われてしまう。
公立高校のみが新しい規制によって練習時間が削られるが、私立高校は規制がないため不公平だと感じる公立高校の生徒もいるだろう。
「部活動を頑張りたいなら、私立に行けばよい」との考えがあるかもしれないが、経済的な事情などで私立を希望しても叶わない生徒もいる。
また、急に規制を告げられて、「こんなことなら私立に進めばよかった」と後悔する生徒もいるだろう。
1度しかない高校生活で、存分に部活動に青春を燃やそうと思っても、公立高校に入学すると叶わない。
しかも、今までは規制がなかったのにと思うと、生徒達はやるせないだろう。
そして、運動部と文化部共通の規制という点や、運動部の中でも種目によっても練習時間や練習の強度は異なるため、一律に規制されることに疑問の声が上がっている。

集まる署名と生徒達の悲痛な声
近年、教員の長時間労働が問題視されている。
特に部活動の顧問をしていると、部によっては土日も練習があり、休みが取れないという教員もいる。
茨城県教育委員会は、今回の規制を「高校生の健康や障害の発生リスクを考慮した方策」と強調しているが、教員の働き改革が根底にあるのだろうと考える人は多い。
もちろん、教員の過重労働は早急に改善策を講じなければならない。
しかし、教員の負担を減らし、生徒のやりがいを確保するための最善策なのか?
また、十分議論がし尽されたのか疑問を持つ人は多い。
教員以外のコーチを付けるなど、外部に委託するのも1つの方法だという意見もある。
オンラインの署名サイト“change.org”には、4月からの運用開始の延期や規制内容の見直しを求める署名が広がっている。
署名する生徒達からは、
「ただでさえ私立に比べて練習時間が少ないのに、これ以上短くされたら私立に勝つことができなくなる」
「私立に人が流れ、今まで繋いできた伝統が消されてしまう」
「よい結果を残すために頑張りたいのに、大人の事情や都合で人の夢を壊すようなことはやめてほしい」
「夢すらもてない」
など、悲痛な声が溢れている。

近年問題視されている部活動の過熱
近年、教員の過重労働と同様に部活動の過熱も問題視され、数年前から改革が進められてきた。
2017年5月には、スポーツ庁が運動部の活動のあり方を考える有識者会議を設置。
2018年3月には、加熱した部活動の適正化を求めるためのガイドラインを策定した。
そして、各自治体でもガイドラインの策定が進められており、部活動の時間は徐々に減少する流れになっている。
茨城県教育委員会の今回の運営方針も、この流れに沿ったものだろう。
中には、「ガイドラインには拘束力がない」と守ろうとしない顧問や、一部の練習を「自主練」と称し、ガイドラインの上限規制をかいくぐり、実質的に従来通りの活動を継続させている部活動もある。
ガイドラインや運営方針は都道府県によって異なる。
気候や環境、土地柄などは異なるため、全都道府県がまったく同じ条件で部活動や練習を行うことは不可能だが、同じ県内で公立と私立によって規制に差があったり、内容が違う運動部と文化部が一律で規制されたりしている茨木県の実情。
そして、何より生徒達が悲痛な声を上げている現実がある。
しかし、一方で教員の過重労働の解消も早急に行わなければならない課題であり、生徒達の健康の確保や傷害リスクの軽減も配慮しなければならない。
さまざまな意見や課題がある中、一番よい解決策を探っていくことが求められている。
