飼い主から猫に新型コロナウイルス感染報告! 注意すべき点とは?
国内で初めて報告された飼い猫の新型コロナウイルス感染事例
2022年4月、北海道の中標津町で“やまだ動物病院”を経営している山田恭嗣獣医師と国立感染症研究所が、日本獣医師会の雑誌に根室管内新型コロナウイルスに感染した飼い猫の具体的症例についてまとめた論文を発表した。
動物が新型コロナウイルスに感染した症例が報告されるのは、日本国内では初めて。
山田獣医師は、「猫は感染しやすい動物なので、接するときには基本的な感染対策が必要」と語る。
飼い猫がコロナウイルスに感染したのは、2021年8月のこと。
飼い主と同居家族5人が新型コロナウイルスに感染し発症した10日後、12歳の雌猫に呼吸器系の症状が出た。
症状が出てから3日後に“やまだ動物病院”を受診したところ、体温は37.3度だったが、くしゃみや鼻水、目の充血などの症状が見られたとのこと。
山田獣医師は飼い主に採材キットを送付し、猫の口などから粘膜を採取。
国立感染症研究所で遺伝子や中和抗体の分析を行なった結果、新型コロナウイルスのデルタ株に感染していることが確認された。
飼い主家族全員がデルタ株に感染していたことから、山田獣医師は人間から飼い猫に感染した可能性があると診断。
猫は発症から8日後、食欲の減退など症状の悪化が見られたため、抗炎症剤を投与するなどの治療を施した。
すると翌日には呼吸器の症状には回復が見られたため、治療には一定の効果があったとしている。
「風邪とコロナウイルスの症状が似ており、感染していても見過ごされている猫は他にもいるのではないか」と話す山田獣医師。
「症状だけで新型コロナウイルスと診断するのは難しいため、飼い主の感染があれば申し出てもらうことが不可欠」だと注意を呼び掛けている。

人から動物、動物から人への感染は?
2021年3月、厚生労働省はホームページに「動物を飼育する方向けQ&A」を掲載した。
Q&Aによると、これまで新型コロナウイルスに感染した人から犬や猫が感染したと考えられる事例報告は数件あるという。
動物園の飼育員からトラやライオンに感染したと推察される事例報告もあるが、主に新型コロナウイルスは発症した人から人への飛沫感染や接触感染によるものであることがわかっているため、今の段階では人から動物への感染事例はごくわずかである。
感染した動物の具体的な症状については、犬には明確な症状は確認されていないが、猫は呼吸器や消化器の症状が見られている。
また、新型コロナウイルスが飼い主からペットに感染した事例は報告されているが、飼育しているペットから人に感染した事例の報告はない。
注意すべき点としては、猫は新型コロナウイルスの感受性が他の動物種よりも高く、猫が他の猫に感染させることはできるという実験結果が報告されている。
オランダのミンク農場で発生した“ミンクの大量感染事例”では、新型コロナウイルスに感染したミンクから人に感染した可能性がある。
新型コロナウイルスに限らず動物由来感染症を予防するためには、動物との過度な接触を控えることが重要。
日頃から動物と接触する前後に手洗いや手指の消毒を行うとともに、ペットの体調がすぐれない場合は、より一層の注意が求められる。

危惧されるインフルエンザとの同時流行やワクチン同時接種
家でペット、特に猫を飼っている人にとっては心配なニュースであろう。
今まで、高齢の家族や持病を持っている家族が感染しないように注意している人は多かったが、ペットへの感染に関しては一部で指摘する声もあったがあまり大きな話題にはなっていなかった。
したがって、今回初めて聞いたという人もいるだろう。
最近は“第8波”の入り口だと言われ、新型コロナウイルス感染拡大に対して改めて注意喚起が広がっているが、ペットを飼っている人達は改めて年末年始の過ごし方が変わってくるかもしれない。
これから寒くなるにつれ、新型コロナウイルスだけではなくインフルエンザなど他の多くの感染症も心配な時季に入る。
特に、新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行が危惧されている。
株式会社マクロミルが実施した「インフルエンザと新型コロナウイルスの感染予防に対する意識調査」(10月31日から11月1日にかけて、インターネット上で全国20~74歳の男女モニタ会員1000人を対象に行われた)によると、同時流行に不安を感じている人は66.1%。世代が上になるほど高くなる傾向が見られ、60歳以上では75.3%の人が不安を感じているという。
2022年内にワクチンを接種する予定は、インフルエンザ31.8%、新型コロナウイルスは45.0%という結果だった。
「新型コロナウイルスとインフルエンザの同時接種が不安」と回答した人は61.3%で、特に40代の人の中で不安を持っている割合が高いという。
同時接種が不安な理由としては、「副反応」を挙げた人が86.9%、続いて「実効性」が34.7%、「自分でリスクを判断すること」という回答が21.5%となっている。
その他の理由には、「将来悪い影響が出るのが心配」との声や、安全性を疑う声が多かった。
「感染が収まっては波が押し寄せる」という状況が繰り返され、既に第8波の入り口が指摘されている昨今。
安心と不安を繰り返し、足掛け3年になろうとしているが、まだまだ油断はできない。
「こんな日がいつまで続くのか」と改めて憂いたくなる毎日だが、一人ひとりできることを心掛け、これからやってくる第8波を乗り越えていくしかないだろう。
