ついにコロナ飲み薬、一般流通開始!16日から軽・中等症に
アメリカの製薬大手メルクの日本法人MSDは8日、新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ラゲブリオ(商品名)」(一般名:モルヌピラビル)について、今月16日から一般流通を開始すると発表した。
ラゲブリオは軽症患者用の初の飲み薬として2021年12月に承認され、これまでに43万人以上に投与された。重症化リスクのある軽症、中等症の患者らが対象となる。
これまで供給量が限られていたことから必要とする医療機関などに国が無償で配布してきた。
薬の生産体制が整い、安定供給できる見通しが立ったため、一般の医薬品と同様の形での流通を始められることになった。

気になる自己負担額
1カプセル(200ミリグラム)当たりの薬価は約2357円。18歳以上で4カプセルを1日2回、1日の薬価は約1万8862円。
5日間服用するため、1人あたりの治療で総額9万4310円となる。
ただし、引き続き公費負担の対象で、患者の自己負担は生じない。
同社によると、対象患者は22年度で約15万人、販売額は138億円と予測している。

対象になる患者とは
厚生労働省が定める対象患者は以下の通りだ。
投与が必要と考えられる患者
基本条件
・投与の時点で発症日から5日以内
・18歳以上
・妊婦又は妊娠している可能性がない
部分条件
(基本条件を全て満たした上で重症化リスク因子を有し本剤の投与が必要である患者)
・61歳以上
・活動性の癌(免疫抑制又は高い死亡率を伴わない癌は除く)
・慢性腎臓病
・慢性閉塞性肺疾患
・肥満(≧BMI30)
・重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患又は心筋症)
・糖尿病
・ダウン症
・脳神経疾患(多発性硬化症、ハンチントン病、重症筋無力症等)
・コントロール不良のHIV感染症およびAIDS
・肝硬変等の重度の肝臓疾患
・臓器移植後、骨髄移植、幹細胞移植後
このように投与対象は、重篤な心疾患や慢性呼吸器疾患、肥満等の新型コロナ感染症の重症化リスク因子があり、医師が必要と判断した患者とされている。
重症度の高い患者や、発症から6日目以降に投与した患者に対する有効性は確立されていないからだ。
ラゲブリオは重症化リスクのある軽症中等症患者に対して効果が証明されている。
従って、感染者全員に処方される薬剤ではないことに留意したい。
また、妊娠する可能性がある患者は服用時中に避妊が要求されるので注意だ。
本来は同じ効果を発揮する、ファイザーのパキロビッドの方が有効性を期待できるのだが、有効性の低い方の経口薬が一般流通することとなった。
コロナ診療に精通していない医師は、取りあえずラゲブリオを処方するということにならないか専門家らは危惧している。
軽症者全員に処方する医師が出てくる可能性があるからだ。
患者側も安易に処方を求めてはならないと、念頭においておこう。
本当に必要な患者に薬が渡らなくなるからである。医師、患者ともに薬を適正に使用することが望まれる。

効果と副作用は
発症から5日以内の服用で、重症化のリスクを30%減らすことができると言われている。
副作用の主な症状は
・下痢
・悪心
・浮動性めまい
・頭痛
・嘔吐
どれも聞いたことや、経験したことある症状だ。これらは、一般的な風邪薬や鎮痛剤でも起こりうるような副作用である。
一番多い副作用の発生頻度は1~5%で、下痢、悪心、浮動性めまい、頭痛と、風邪薬や鎮痛剤よりも低い発生頻度だ。
中には重症例が報告されたケースもあるため、医師と相談して服用していただきたい。
モルヌピラビルに対する各国の対応
メルク社によると、これまでに30ヶ国以上の国と契約を結んだということだ。
モルヌピラビルの使用に関して各国の使用状況や見方を見ていこう。
・フランス…購入注文を取り消し(2021年12月22日)
・イギリス…追加で175万回分購入契約(2021年12月22日)
・アメリカ…重症化リスクの高い患者、他の治療法が選択できない場合に処方(2021年12月23日)
・インド…緊急使用を承認、国内13社で生産開始(2021年12月28日)
欧州の間でもそれぞれ対応が異なっている。

モルヌピラビルは服用前にしっかり確認
モルヌピラビルは、臨床試験の結果から、比較的副作用は出にくい医薬品だと言える。
万が一コロナに感染した場合、処方を受けるためには医療機関の受診が必要なので、まず処方の対象になるか医療機関の診察を受けよう。
妊娠中の方や妊娠の可能性がある方、授乳中の方のほか、他の薬を服用されている場合、飲み合わせに注意が必要な場合があるので診察の際に医師に相談し、正しく安全に服用していただきたい。
