【訃報】「ドカベン」などで名作を残した漫画家、水島新司さん死去
今月10日、「ドカベン」や「あぶさん」など野球を題材にした漫画で多くの世代の人たちから人気を集めた漫画家の水島新司さん(82)が肺炎により都内の病院で亡くなりました。
新潟県出身の水島さんは1958年に漫画家としてデビューし、野球を題材に多くの作品を世に送り出しました。
その中でも、野球に詳しくない人でも聞いたことがあるであろう「ドカベン」は40年以上も連載された水島さんの代表作で、単行本シリーズ累計では205巻まで刊行されるなど世代を超え、多くの読者に読み継がれてきました。
水島さんは「ドカベン」の連載が終了してから2年後のおととしに「18歳で漫画家としてデビューし、今日まで63年間頑張ってきましたが、本日を以って引退することに決めました」と漫画家として引退することを発表していた。
今回の訃報を受け、同じ野球を題材にし、草野球のライバルでもあった漫画家のちばてつや氏は公式サイトで水島さんと一緒に肩を組んだイラストを載せ、追悼のコメントをした。
「私たちは同じスポーツの題材の漫画をこれまで描いてきた。仕事以外でも草野球の仲間であり、ライバル同士でもあった水島新司さんが亡くなった。
彼は私とはかなり違ったスタンスで、野球チームの一人一人の個性、監督や控え選手などを含むベンチワークなども綿密に描ききり、プロ野球選手を唸らせるほどの専門的な目線で野球の可能性や面白さを探り続けてきたと思う」
最後に「以前から約束していて、近々楽しみにしていたキャッチボールの相手が居なくなってショックだし本当に寂しいけど、そういう私も現在は闘病中。
まずは長い間本当にお疲れ様でした。先に行って今は安らかにお休みください」と綴った。
水島新司(みずしま しんじ)
新潟出身の水島さんは日本漫画家であり、これまで野球一筋、野球漫画家の第一人者である。
代表作には「ドカベン」「あぶさん」などがあり、趣味も野球。
魚屋の家で生まれ育った水島さんの父親はギャンブル好きで多額の借金を背負っていたこともあり、金銭的に困窮した生活を送っていた。
家庭の経済状況から高校への進学をあきらめ、父親が借金していた水産問屋で働きに出されたが、そこで漫画家の道に行くことを決意した。
仕事後の睡眠時間を削りながらも漫画を執筆していき、大阪貸本漫画出版社「日の丸文庫」の新人漫画コンクールでデビュー作「深夜の客」を投稿すると審査員の一人だった佐藤まさあきに気に入られ、特別に表彰された。
そしてこの表彰がきっかけで本気で漫画家の夢をかなえるため、大阪に修行をしに行くことになった。
住み込みで日の丸文庫の編集の下働きをしつつ、寝る間を削りながら漫画を執筆し続け、多くの人気シリーズの漫画で名を挙げていった。
そして日の丸文庫を独立し、上京すると本格的な野球漫画として「週刊少年キング」「週刊少年サンデー」「週刊少年チャンピオン」など、仕事の幅を広げ、大ヒット作を次々と描いていった。
多くの名作を描き続け、漫画家デビューしてから63年後、2020年12月1日に漫画家を引退すると、2年後の今年1月10日に肺炎により、東京都内の病院で82歳、この世を去った。
ドカベン
水島新司の代表作である野球漫画。
「週刊少年チャンピオン」にて1972年から1981年まで連載され、単行本の累計発行部数では4800万部を記録している。
物語は神奈川県の明訓高校野球部に所属する主人公である「ドカベン」こと山田太郎と、同級生であり、チームメイトでもある岩鬼正美らライバルたちとの高校野球生活が描かれている。
当時、野球漫画では魔球など超人的かつ非現実的要素が多かった野球漫画の中で、水島が描いたドカベンは配球の読みなど、リアルな野球の描写が盛り込まれるなど斬新さや躍動感あふれる独特の作品になった。
水島によると、本作以前ではこれまでヒット作に恵まれてこなかったものの、本作品では主人公のチームメイトである岩鬼を主人公の山田に絡ませたことでストーリーが大きく展開し、ヒットに繋がった。
さらには里中や殿馬の登場で、これまで恵まれてこなかった女性ファンが倍増したとされる。
あぶさん
水島新司によって1973年から2014年まで描かれた、日本の野球漫画。
酒豪で強打者の「あぶさん」こと景浦安武(かげうら やすたけ)を主人公にした本作品は日本で最も連載が長く続いたスポーツ漫画である。
「あぶさん」という名前の由来は非常に強いリキュールとして知られる「アブサン」からきているとされる。
景浦は高校時代、二日酔いで地方予選の決勝戦に出場し飛距離155メートル以上のサヨナラホームランを放つが、ベースランニング中に嘔吐してしまったことで飲酒がバレ、優勝は取り消しとなる。
その後は北大阪電気など様々な球団に所属するも、試合中のプレーを巡り、監督とトラブルになると懲戒免職をくらってしまう。
居酒屋でやけ酒を飲んでいたところ、南海スカウトの岩田鉄五郎に熱心に誘われ、ドラフト外でのちの福岡ダイエーホークス、福岡ソフトバンクホークスとなる南海ホークスに入団し、連載はここから始まる。
本作品では実在するプロ野球関係者も登場したり、初期の頃には当時、南海を支えていた裏方の方にもスポットライトが当てられ、南海球団を知るうえで貴重な資料となっている。