円安の影響で、心臓移植手術に必要な費用が昨年の1.5倍の高額に!両親の悲痛な訴え
10歳と1歳の女児の両親がそれぞれ記者会見
連日ニュースを賑わせている歴史的な円安のニュース。
その円安やウクライナ侵攻の影響による原油高が様々な方面に深刻な影響を及ぼしているが、重い病気と闘っている子ども達にも暗い影を落としているのだ。
日本で心臓移植手術を受けられず、海を渡って米国で移植手術を受ける子ども達が渡航する交通費や手術に当たっての医療費は保険が適用されず、さらに円安などにより昨年の1.5倍にまで増大し、募金目標額は5億円を超えている。
11月14日、川崎市在住の10歳女児と、東京都豊島区在住の1歳女児の両親がそれぞれ記者会見を開き、命を救うため早期の手術を受けることが必要だとして、支援を訴えた。

ママと一緒にパパのご飯を作りたい
川崎市幸区の小学5年生五十嵐好乃さんは、市役所で開かれた両親の会見に、入院している病室からオンラインで出席した。
「家に帰って、ママと一緒にパパのご飯を作りたい」と話す好乃さん。
「友だちと遊んだり、思いっきりダンスを踊ったりしたい。
やりたいことや行きたい場所がたくさんあります」と気丈に話す好乃さんの言葉に、父親の好秀さんは涙をぬぐった。
好乃さんが発症したのは2年前。
進行性の拡張型心筋症を患い、現在は東京都世田谷区にある国立成育医療研究センターに入院している。
昨年の9月、補助人工心臓を装着したが、経過は思わしくないという。
海外の方が国内よりも早期移植が可能なため望みをつないでおり、今春には米国テキサス州の小児病院の受け入れが決まった。
しかし、病院に支払う前払い金の交渉に想定していたよりも時間がかかり、その間に円安が進行してしまった。
好乃さんの友だちの保護者らで結成された“このちゃんを救う会”の募金目標額は、1ドル155円換算で5億4000万円。
内訳は前払い金4億1850万円、渡航費8000万円、現地滞在費800万円など。
補助人工心臓を装着している好乃さんの渡航にはチャーター機が必要となり、その分の費用が大きくのしかかる。
タクシー運転手として働く父親の好秀さんは、「海外移植に必要な費用は巨額で賄いきれず、私たちだけでは娘の願いを叶えてあげられない」と訴えた。
「身勝手だとわかっているが、娘の命を諦めたくない」と震える声で話した。
自身の長男が米国での心臓移植手術を受けた経験がある、国際移植者組織トリオ・ジャパンの横山慎也事務局長によると、昨年の円安前に募金活動し、今年の5月に手術した好乃さんと同じ症状だった神奈川県の女児は、費用が3億5000万円だったという。
横山さんの長男が移植手術を受けたのは12年前だったが、その当時は1ドルが90円前後だったため、募金額は約1億3500万円だったとのこと。
海外渡航移植にかかる募金目標額が5億円を超える前例はないというが、半年程度での目標達成を目指す。

病院の中でも毎日新しいことを学んでいる
東京都豊島区に住む佐藤葵ちゃんの両親は、千代田区の厚生労働省で会見を行い、「(葵ちゃんの)命を救うためにはやるしかないと決断した」と決意を語った。
先天性心疾患を患っている葵ちゃんは4回の手術を受けたが改善は見られず、重症心不全と診断された。
現在は埼玉県日高市にある埼玉医科大国際医療センターに入院中だが、心臓のポンプ機能が低下し、必要となる血液が送り出せない状態だという。
葵ちゃんも補助人工心臓を装着しているが、脳梗塞や感染症のリスクが高いため、早期の移植が必要な状態だ。
葵ちゃんを支援する“あおちゃんを救う会”によると、募金の目標額は1ドル148円換算で5億3000万円。
内訳は前払い金3億7000万円、渡航費8100万円など。
渡航には、医師らも同乗する医療用ジェット機のチャーターが必要となり、やはり高額が必要になる。
母親の清香さんは「(葵ちゃんを)抱き上げると手の中にすっぽり収まる小さな身体に、補助人工心臓とペースメーカーを着け、ほとんど病院から出たことがない。
それでも毎日新しいことを学び、頑張っています」と話す。
そして、「本当に、ただ葵を、娘を助けたい、助けてほしい。それだけです」と訴えた。
父親の正一郎さんは、「円安のせいもあり、5億3千万円というとんでもない金額が必要になってしまっています。
家族だけではどうにかできる金額ではなく、親としては娘の命を救いたい」と話した。
11月14日から募金を開始した“あおちゃんを救う会”は、3カ月で募金を集める目標だという。

子ども達の命を救うために
50万人に1人という拘束型心筋症という難病と闘っている10歳の中澤維斗くんは、2022年2月に米国に渡った。
4月に状態が悪化したが、補助人工心臓を装着し、ドナーを待ち続けていたところドナーが見つかり、10月27日に11時間に渡る移植手術を受けることができたという。
父親の智春さんは、「やっと移植ができました。
本当に感謝しかありません。
ありがとうございます」と大粒の涙を流した。
維斗くんが米国に渡る前は、2億3700万円の募金額が集まった。
その後、やはり歴史的な円安や維斗くんの体調悪化により、追加手術で必要な額は6億円にまで膨らんでいる。
智春さんは「世界情勢の悪化や物価の上昇で募金をお願いしますとは言い出せない。
本当はお金が足りず、困っている」と苦しい胸の内を明かした。
しかし、「まずは支援してくださった方々に感謝したい」と語る。
維斗くんはこのまま問題がなければ2023年2月を目処に帰国できる見込みだという。
病と必死に闘う子ども達の命を救うために必要な資金。
五十嵐好乃さんの募金方法は、“このちゃんを救う会”のホームページhttps://suku-kai.trio-japan.jp/hope-to-kono)に記載されているほか、問い合わせはhope.in.konos.hand10@gmail.comまで。
佐藤葵ちゃんの募金方法は“あおちゃんを救う会”のホームページhttps://ao-sukuukai.jp/に記載されているほか、問い合わせは03-6555-4571まで。
