ジャニーズ事務所藤島社長が動画で性加害報道について初めて言及
異例の顔出し動画で謝罪
ジャニーズ事務所の元所属タレントで歌手のカウアン・オカモトさんら元ジャニーズJr.メンバー数名が、事務所創業者で前社長の故ジャニー喜多川氏(2019年死去)から性被害を受けたと告白している問題。
ジャニーズ事務所は問題を受け、2023年5月14日、事務所の公式サイトに動画をアップした。
動画には、ジャニー喜多川氏の姪で、現社長の藤島ジュリー景子氏が初めて顔を出してお詫びをした。
ジャニーズ事務所は、前社長の頃から現在まで経営陣が公に姿を見せることは一切なかっただけに、藤島氏自ら顔を出すのは異例中の異例。
元女優の藤島氏は、女優引退後初めての顔出しとなった。
動画は約70秒間で、藤島氏は黒いスーツと白いブラウス姿で登場。
「株式会社ジャニーズ事務所代表取締役社長、藤島ジュリーでございます」と挨拶し、
「この度は創業者ジャニー喜多川の性加害問題について、世の中を大きくお騒がせしておりますことを心よりお詫び申し上げます。
何よりもまず被害を訴えられている方々に対して、深く、深くお詫び申し上げます。
そして関係者の方々、ファンの皆様に大きな失望とご不安を与えてしまいましたこと、重ねてお詫び申し上げます」と、4回にわたって頭を下げて謝罪した。
目は光り、潤んでいるようにも見えた。
さらに「大変遅くなりましたが、各方面よりいただいていたご質問に対して、このあと書面にて解答させていただきます」と語り、一問一答形式でマスコミからの質問に答えた書面も公開した。

ジャニー氏とメリー氏以外は誰も口出しできない異常な状態だった
2019年7月9日にジャニー喜多川氏が亡くなった後、同年9月に社長に就任した藤島氏は、2021年に亡くなった故藤島メリー泰子前名誉会長の長女で1966年7月生まれ。
メリー氏は、ジャニー喜多川氏の姉。
小学生の頃、大ヒットドラマ「3年B組金八先生」(TBS系)の第1シリーズに出演するなど女優として活動していた藤島氏。
女優引退後はテレビ局の勤務を経験し、1997年にジャニーズ事務所の自主音楽レーベル“ジャニーズ・エンタテイメント”の初代社長に就任。
その後、2019年にジャニーズ事務所の社長に就任する前は、人気グループ“嵐”のために立ち上げたレーベル“ジェイ・ストーム”の社長とジャニーズ事務所の副社長を兼任していた。
しかし、藤島氏が社長に就任する前はジャニー喜多川氏とメリー元名誉会長が事務所の全権を握っていたため、「(性加害については)知らなかったでは決して済まされない話だと思っているが、知りませんでした」と回答。
「本件を含め、会社運営に関わるような重要な情報は、2人以外には知ることのできない状態が恒常化していた」と答えた藤島氏。
藤島氏を含め、会社の管理や運営に対しては誰も一切発言できない状態であり、「その状態は普通ではなかったと思います」とも記した。
そのうえで、「私自身、その異常性に違和感を持つことができず、ただただ情けなく、深く反省しております」と綴った。

一問一答の内容とは
書面でのその他の一問一答は、次の通り。
「なぜ、すぐに会見を行わなかったのか?」との質問に対し、
「まずは事実を確認し、責任をもって対応すべきだと考えた。
個人のプライバシーにも関わる非常にデリケートかつセンシティブな問題だったため、カウンセラーや弁護士など専門家の協力を得ながら、声を上げられた方とのご対面、社内調査、具体的対応策についての協議等を慎重に進めていたことから、広く皆様にお伝えするまで時間が経ってしまった」と、対応が遅くなったことを謝罪。
また、「英BBCの番組で取り上げられたことやカウアン氏の告発について、どのように受け止めているか?」との質問には、
「事実であるとすれば、まず被害を訴えられておられる方々に対して、どのように向き合うべきか、また、事務所の存続さえ問われる極めて深刻な問題だと受け止めた」と回答。
「改めて事実確認をしっかり行い、真摯に対応しなければならない」とした。
番組報道や、告発が事実かどうかに関しては、「当然のことながら、問題がなかったとは一切思っていない。
会社としても、私個人としてもそのような行為自体は決して許されることではないと考えている」とする一方、
「当事者であるジャニー喜多川氏に確認できない中で、私どもの方から個別の告発内容について、事実と認める、認めないと一言で言いきることは容易ではなく、さらには憶測による誹謗中傷等の二次被害についても慎重に配慮しなければならない」とし、否定も肯定も避けて理解を求めた。
そのうえで、「目の前に被害に遭ったと言われる方々がいらっしゃることを、私達は大変重く受け止めております」とした。

自らの辞任は否定
2003年に起きた週刊文春との高裁判決で敗訴した際に性加害の事実を認めず、対策を何もしなかったのかとの問いに対しては、
「訴訟は、週刊文春の記事に対し”虚無であり、名誉棄損であり、許し難い“としてメリー氏が訴えたもので、詳細については一切共有されておらず、恥ずかしながら今回の件が起こり、当時の裁判を担当した顧問弁護士に経緯を確認するまでは詳細の把握ができなかった」と回答。
メリー氏自身、ジャニー喜多川氏が性加害をやっていないと信じていたからこそ訴訟を起こしたのではないかと推測した。
しかし、「取締役という立場でありながら、積極的にその責務を果たせなかった点について、大きな落ち度があったと考えております」としている。
また、性被害を会見で告発したカウアン氏が、5月13日に自身のYouTubeチャンネルにて、藤島氏と対面して約2時間にわたって話し合ったことを明かしていたことについて、「直接会って、長い時間話をした」と公表。
「今後このようなことが二度と起こらないためにも、彼が声をあげたということを深く理解した。
一方、本人以外の他人のプライバシーに関わる問題や、憶測を助長するような発言に関しては、私の見解を伝えさせていただいた」とし、
「まだまだこれからではありますが、私たちが変わるきっかけを下さったと受け止めております」と綴られている。
そして、自身の経営責任については、「責任はあったと考えている」とし、
「当時の私は取締役とはいいながらも名ばかりとなっており、その職責を果たせていなかった。
また、本件については自らも積極的に知ろうとしたり、追求したりしなかったことについて責任があると考えている」と回答。
そして、責任の取り方に関しては、「私が辞職する選択肢も考えたが、するべきことはこの問題から逃げることなく、被害を訴えてこられた方々に向き合うこと。
さらにこれから先、二度と同様の問題が起こらないよう、既に着手し始めている経営改革、社内意識の抜本的改善をやり抜くことだと考えております」とし、
「あらゆる厳しいご意見も真摯に受け止め、所属しているタレントたちの今、そして未来への想いを尊重しながら対話を重ねていく、それが自分にできる責任の取り方だと考えております」と辞任する考えがないことを説明した。
