羽生結弦の「決意表明会見」プロ転向に
会見では「引退」という言葉は使わない
19日、フィギュアスケート選手の羽生結弦選手が「決意表明会見」を都内で開いた。
会見の冒頭で「羽生結弦としてフィギュアスケートをまっとうできるのが本当に幸せです」と、オリンピックを含むすべての競技会から引退することを表明した。
そして、「プロのアスリートとしてスケートを続けていくことを決意いたしました」と今後はプロとして新たな道を歩んでいくことも発表した。
フィギュアスケート界では、競技に打ち込むアマチュアスケーターと、プロとで大きく分かれる。
現在ではプロのスケーターになってしまうと、公式の競技大会に出場することはできない。
「理想を追い求めながら頑張っていくので、これからも戦い抜く姿を見てください」と前向きに会見を締めくくった。
今回の決断について羽生選手は、競技者としてここで終了というか、プロになりたいと思うことは多々あった」と語り、「いつプロ転向にするかは、毎試合毎試合考えていました。平昌オリンピックの際、試合が終わるごとにほんとにいろんなことを考えた。
結果として、いろいろ考えたときに、『このステージにいつまでもいる必要はないかな』と思った。
より一層、努力したことがちゃんとみなさんに伝わるステージにしていきたいと思った」と現在の心境を話した。
現在、フィギュアスケートの場合、現役がアマチュアの二通りしかなくプロに転向してしまうと公式的な大会には出場できないとされている。
その中で新たなスタートを切っていきたいと、前向きな言葉を並べた。

アマチュアスケート選手としての制約
実際にアマチュアのフィギュアスケート選手として世界大会に出ても、賞金だけで生活することは難しいのが現実である。
世界フィギュアの優勝賞金は約490万円程度、四大陸選手権は約160万円程度であり、練習の際のリンク使用代やコーチ費用などを考えれば、大会出場だけでは大赤字になってしまう。
羽生はANAと年間5000万円で所属契約を結び、化粧品メーカーのコーセーなどのコマーシャルに出演しているが、アマチュアの立ち位置では日本スケート連盟の許可が必要になったり、スケートで得た収入の一部を支払わないといけないなど、活動するうえでさまざまな制約があった。
関係者によると「フィギュアスケート選手としての収入のほとんどはスポンサーです。現役を引退してプロとして稼ぐというのは、アスリートとして健全な方向に向かっていくことでもあります」と話す。

日本スケート連盟は青ざめる
今回、羽生結弦が引退することによって日本スケート連盟には肖像権使用承認料が入らなくなる。
連盟は『賞金等の取扱規程』により、羽生のスポンサー収入、専属契約料などの収入の約10%を、肖像権使用料として受け取っていて、マネージメント契約などの承認も行っていた。
浅田真央の台頭などにより、フィギュアスケートは日本で大人気のスポーツになった。
特に羽生選手が14年のソチオリンピックで金メダル獲得したことにより、女子フィギュアを上回る人気になり、世界各国で羽生ブームが巻き起こった。
今年行われたアイスショーにも連日、羽生ファンが詰めかけて満員であった。
羽生がトップに君臨し続けた期間でスケート連盟の財政は大幅に改善し、平成22年度の連盟の財産は約11億円だったのに対し、令和2年度の正味財産は約35億円。
3倍以上も伸びていた。
連盟関係者は「これらの収入がすべてなくなるのですから、連盟としては痛いですよ」と語る。

