社会・文化

若者の貧困が社会問題に!“挑戦と失敗が許容される社会”の実現に向けて

増えている若い男性のホームレス

日本では経済的に困窮する人達が増え、貧困が社会問題になっている。

特に新型コロナウイルスの感染拡大以降、失業したり収入が大幅に減ったりしてしまった人は多い。

貧困層は各年代にいるが、若者の貧困にはあまり注目されていない現状がある。

就職に有利な若い年代は、「まだ若いうちは自力でなんとかなるだろう」と思われ、理解されにくいためである。

炊き出しには男女問わず多くの若者が並ぶ姿が見られ、さらに女性がホームレスになったら危険なため女性専用の相談窓口や女性を優先的に支援する団体は多いが、男性はどこに相談したらよいかもわからず、20~30代の若い男性のホームレスが増えているという現実がある。

若い男性に関する問題点は、ホームレスになったことを友だちに知られることを恐れ、誰にも相談できず1人で悩んでいる人が多いこと。

ネットカフェを毎日転々とする生活を続けてきたがお金が底をつき、思い詰めて犯罪や自殺に走ってしまう人もいる。

そして、若者はホームレスになっても身だしなみには気を遣う人が多く、お金がなくてもスマートフォンは解約せず使用し続ける人が多いため、一目見ただけではホームレスだと気付かれない人が多い。

また、最後まで自分で何とかしようと思って頑張り、思い詰めてしまう人が多いのも男性に多い特徴だという。

「誰にも頼ってはいけない」という意識を持つ男性は多く、全てを失い、どうしようもない状態になってから、ようやく声を上げるという人が多い。

相談できずに追い込まれる若者が増えている
相談できずに追い込まれる若者が増えている

大阪のNPO法人Homedoorの取り組みとは

大阪を中心に、ホームレス支援を行っている認定NPO法人“Homedoor”は、大阪市北区に事務所がある。

長引くコロナ禍で、相談に訪れる人はコロナ前の約1.5倍に増えており、その中でも20代、30代の男性が多いという。

ホームレスになってしまった人達を生活保護などの支援制度につなげるだけではなく、どのように救えばよいのか模索した結果、家と仕事の確保までサポートし、再出発まで支援する活動を行っている。

その中で大切にしているのは、相談に訪れた人達に対し、家をなくした理由や今後どのように生活を立て直したいのかなど、詳細に聞き取りを行うこと。

1時間ほど時間を掛け、会話をしながらじっくりと聞き取り、一緒に考えていく。

さらに、月に1、2回“夜回り”と呼ぶ活動も行っている。

これは路上や公園を回り、ホームレスの人達に弁当を配布しながら、公的な支援制度やHomedoorの活動紹介を行うという活動。

そして、ホームレスの人達にとっての緊急避難場所として、18部屋の個室シェルターを2018年に整備。

空室があれば、初めて相談に訪れたその日から利用可能で、原則無料で宿泊できる。

シェルターに滞在している間に、行政の支援制度につなげ、できるだけ早く自分の家を借りることができるようサポートをしている。

必要品だけでなく、自立を支える取り組み
必要品だけでなく、自立を支える取り組み

再出発まで寄り添う支援

Homedoorは就労支援にも力を注いでいる。

ホームレスから脱却するには仕事、家、貯金の3つを同時に得ることが必要だが、その3つを同時に得ることは非常に難しい。

そのため、住まいと同時に仕事も提供し、貯金をしながら段階を踏んで仕事復帰できるよう考えたのが“HUBchari(ハブチャリ)”というシェアサイクル。

Homedoorが支援している人の中に、「自転車の修理だったらできる」と言う人がいたことがきっかけでサービスを開始。

自治体や企業の協力で空きスペースを提供してもらうことで町中に複数のポートを設置。

どこで借りてどこで返却してもよいというシステムで、ホームレスの若者達が自転車のメンテナンスや貸出業務、バッテリー交換などを行うことで就労機会を提供している。

その他、障がいなどがある人には簡単な内職を紹介したり、障がい者向けの就労支援施設につなげたりして、就労から住まいの確保を目指している。

Homedoorの川口加奈理事長は、「働くことは、単純にお金を得るだけではなく、いろいろな人とのコミュニケーションの機会や自分が社会から必要とされていると感じる自己有用感を得る貴重な体験でもある」と話す。

そのため、「就労を軸にしながらサポート態勢を考えていきたい」との考えを示す。

また、ホームレスにならない社会とは「挑戦と失敗が許容される社会」だと川口理事長は言う。

つまり、どれだけ挑戦して失敗しても、ホームレスにはならないという保証が最低限されている社会の実現こそが大切という考えだ。

より多くの人達が“もっと頑張ってみよう”“もっと挑戦してみよう”と新しいことにチャレンジしようと思えるような社会を目指し、ホームレス支援の、さらにその先を見据えて尽力し続けている。

未来の日本を担う若者の中に苦しむ人が多い現状をなんとかしなければ、日本の未来には不安が募る。

Homedoorが実践している“再出発まで寄り添う支援”が全国的に広がること、そして“挑戦と失敗が許容される社会”の実現が求められているのではないだろうか。

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