ふるさと納税を過剰に宣伝するポータルサイトに高まる批判や鬱憤
2008年にふるさと納税の制度ができてから、各自治体からの受け入れ額は右肩上がりに増え続け、コロナ禍によるステイホームの影響もあってか、その勢いはとどまるところを知らない。
2020年には史上最高となる6725億円を記録したが、2021年ではその記録をさらに大幅に上回る勢いとされている。
今では多くの人が利用しているふるさと納税については、その存在を知らない人はほとんどいないとされているが、一方でその制度自体に多くの批判や怒りの声が挙がっている。
ポータルサイト間で起こる過剰な争奪戦
ふるさと納税を募る各自治体での争奪合戦は過剰になっており、ある関係者は「このままの制度なら、いっそのこと、なくなってくれた方がマシだ」と語る。
各自治体が契約し、掲載するポータルサイトには納税者に対する返礼品や寄付の使い道などが掲載されており、掲載されている自治体の数やポイントの還元策の内容などに関してはそのサイトによって異なってくるが、サイト運営者に支払う運営費用や手数料は寄付金の一部が支払われる仕組みになっている。
集客効果が高いポータルサイトに載せているポータルサイトは各自治体の返礼品と比較出来たりすることで多くの支援者を集めることができ、ふるさと納税を実施している各自治体のほとんどが、ポータルサイトと契約している。
市場の拡大に伴いポータルサイトも増え続け、テレビCMも繰り返し流れている。
ここまで聞いて、特に問題ないように思われるかもしれないが、ポイントの還元やCM制作にかかる莫大な費用などのツケはサイトの運営者だけでなく自治体や寄付者以外の第三者にいくといわれている。
ふるさと納税について
ふるさと納税については、2000円の自己負担額を除いては住民税の20%とされる一定の上限額までは、寄付した金額の全額が翌年の住民税から控除される仕組みになっている。
仮に住民税を年間で50万円払っているとすると、10万円までの寄付額は翌年の住民税からほぼすべて減額され、寄付した者は自己負担した2000円で地方の豪華な返礼品を受け取ることができるという。
しかし一方で、寄付者が居住する自治体においては、本来入るはずだった税収が地方に流れ、ふるさと納税を利用せずに税収が流出している自治体に暮らす人にとっては、行政サービスの悪化という形で不利益を受けることになる。
ふるさと納税によって多くの税収を失うとされているのが、多くの人口を持ち、所得水準の高い都市部の自治体と言われている。
そのため、これらの自治体からは「こちらは真剣に税収の流出についての対策を議論しているのに、宣伝されているCMを見ると腹が立つ」「ポータルサイト内でキャッシャバックなどのお得感を煽るのはどうなのか」など多くの批判や怒りに満ちた声が出ている。
確かに本来、地方自治体の応援やお世話になった自治体への恩返しという趣旨であるはずが、その目的から離れた、目先の利益のために、お得感などのアピールをし続けるのはあまり良心的なものといえない。
今後の各ポータルサイトでの動き
今後、税収が流出し続けていく自治体やふるさと納税制度を利用していない人たちからの不満が高まっていけば、ポータルサイトへの規制措置が取られる可能性がある。
しかし、この規制について、各ポータルサイトを運営する側での意見はそれぞれ温度感が違う。
例えば、ふるさとチョイスを運営しているトラストバンクはふるさと納税での手数料収入は事業での収益の柱であり、制度への存続や健全化への取り組みには意識は高く、過剰な還元策、販促活動に関する規制を設けることには賛成の姿勢をとっている。
他方、ソフトバンクグループ傘下である「さとふる」では、問題や課題があれば検討すると述べ、「ふるなび」は現在設けられているのは、最適な制度設計とは言わないまでも、規制を無置ける理由はないと消極的な回答を行った。
ポータルサイトサイト側で、この争奪合戦から抜け出せない理由には利用者側のコスパ重視が年々増加していることが挙げられる。
以前の利用者は主に高所得者層が比較的多く、その目的も制度の趣旨に賛同する意向で利用が行われてきた。
しかし、現在では中所得者層の利用者が増えていき、「お得な物」を求める傾向が高くなっているという。
表向きでは、返礼品がきっかけになって、その地域の魅力に気付くことが言われているが、一般のECサイトのような商品ジャンル別や人気ランキングなどの返礼品を並ばせ、欲しいものを選ばせようとするサイトからはそのような想いは伝わってこない。
このようにお得感ばかりが先行し続け、本来の意義を失ってしまいつつあるふるさと納税制度。
都市部の自治体も税収の一部を地方に還流することに文句を言っているわけではないが、自分たちの利益ばかりを追求し続け、それを運営するポータルサイトや制度設計に対して異を唱えている。
このような状況を変えていくためにはサイト側への規制だけでなく、税金の控除額の見直しなどが行われる可能性がある。
制度をどのようにしていくのかは、得をするものと、損するものの断絶を生まない制度の在り方が今なお求められている。