ホンダがF1復帰へ 2026年からパワーユニット供給
ホンダは5月24日、2026年から自動車レースの最高峰FIA1フォーミュラ・ワン世界選手権(F1)に参戦すると発表した。
アストンマーティンとエンジンを含むパワーユニット供給の契約を結び、チーム名は「アストンマーティン・アラコム・ホンダ」となる。
ホンダは2021年シーズンでF1事業から撤退していたが、過去にも参戦と撤退を繰り返し、2026年からは5期目の挑戦となる。

「脱炭素」へレギュレーション変更が鍵
今回のホンダの復帰で鍵となったのは、F1が「脱炭素」を目指す中でレギュレーション(規則)の変更を示しており、そこにホンダの技術力が生かせると判断したことだ。
F1は2030年に二酸化炭素といった温室効果ガスの排出をトータルでプラスマイナスゼロにするカーボンニュートラルの実現を目標にしている。
2026年以降は100%カーボンニュートラル燃料の使用が各チームに義務付けられる。
カーボンニュートラル燃料は大気中の炭素を取り込んで合成される燃料。
エンジンを使って車を動かし二酸化炭素が排出されても、大気中の炭素を使っているため実質的に温室効果ガスが増えない燃料とされる。
こうした燃料に加えて、最高出力の50%とエンジン、50%を電動モーターでまかなうこととなり、現在の規定の20%よりも電気エネルギーの比率が大幅に高められる。
ホンダとしては、エンジンの出力を抑える一方、減速時のエネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー回生システム(ERS)の出力を現在よりも3倍引き上げ、エンジンとモーターの最高出力を同等にするという。
本田技研社長「F1で電動化技術を促進する」
本田技研工業の三部敏宏社長は「F1がホンダの目指すカーボンニュートラルの方向性と合致するサステナブルな存在となり、私たちの電動化技術を促進するプラットフォームになること。
これが、ホンダとして再びF1にチャレンジする大きな理由の一つとなりました」とコメント。
新レギュレーションに合わせて小型かつ高出力のモーターや、高性能バッテリーの技術が勝つための鍵を握り、こうした技術を培うことで一般車の電動車の競争力を高める狙いもあるという。

セナの黄金期の再現なるか
ホンダは1964年にF1にエンジン、車体を含めたオールホンダとして初参戦。
1965年のメキシコグランプリ(GP)で初優勝を果たした。
しかし、社会問題となっていた大気汚染に対応するための低公害型エンジンの開発を理由に1968年シーズン終了後にF1の活動を休止した。
1983年からエンジンサプライヤーとして15年ぶりにF1に復帰。
1986年にウィリアムズホンダとしてコンストラクターズタイトルを獲得すると、1987年にはネルソン・ピケが、1988年にはアイルトン・セナがそれぞれドライバーズタイトルを獲得した。
1989年はマクラーレンホンダのアラン・プロストとアイルトン・セナが優勝を争い、プロストがドライバーズタイトルに輝き、翌年はセナが再び王座を取り戻すなど、ホンダのエンジンが無類の強さを誇った。
まさにホンダの黄金期と言える時代。
コンストラクターズタイトルは6連覇し、ドライバーズタイトルも5年連続でホンダのエンジンを使う選手が手にしていた。
しかし、1992年に世界での新車販売の不振などから再び撤退してしまう。
2000年から復帰した第3期はB・A・Rホンダとしてエンジン供給と車体の共同開発で2005年まで参戦。
2006年からは再びエンジンと車体のオールホンダで戦った。
しかし、2008年に業績悪化などから撤退を余儀なくされた。
第4期となった2015年からはパワーユニットの供給でF1に戻り、マクラーレンと再びタッグを組んだ。
その後、レッドブルなどにも供給し、2021年限りで電動化などの次世代技術へ環境資源を集中させるとして活動を休止した。
2022年以降もレッドブルへの技術支援は行っており、実質ホンダ製のパワーユニットで今季はレッドブル勢が開幕5連勝中。
レギュレーションの変更に勝機を見出し、ホンダがF1に戻ってくる。
