中国の人権侵害を日本はどうする?今国会でも非難決議案見送り
中国政府が新疆ウイグル自治区や香港などでの人権侵害を行っていることに対しそれを非難するための決議案が、今年6月の通常国会に続いて今回の臨時国会でも採択されずに見送られることに決まった。
今まで複数の議員連盟が決議の採択を目指して活動、立憲民主党、国民民主党は対中決議案の採択に積極的な姿勢を示していた。
一方、世論の注目を集める北京冬季オリンピックへの政府関係者の派遣の取りやめ、外交的ボイコットを行うかどうかの対応を明らかにするまえにこの非難決議を採択することに自民党執行部は慎重な姿勢であった。
12月17日、3つの議員連盟の会長―超党派の「日本ウイグル国会議員連盟」会長の古屋圭司政調会長代行、「日本チベット国会議員連盟」会長の下村博文元文部科学省、自民党有志による「南モンゴルを支援する議員連盟」会長の高市早苗政調会長、が自民党の茂木敏充幹事長と面会し、非難決議案の採択を求めた。
しかし茂木幹事長は決議案の採択の内容はよいがタイミングが問題になるとして、政府が北京冬季オリンピックへの姿勢を明らかにしないのであれば決議採択はない、という考え方を示して決議案を受け付けなかった。
対中非難決議案の原案は「日本ウイグル国会議員連盟」や「日本チベット議員連盟」などが今年4月に作成したが、最終的にこれに含まれていた中で中国政府当局が行う人権侵害を非難してその即時停止を要求した部分が削られ、人権に関する状況説明の責任を求める内容となっていた。
先の通常国会における採決の見送りには、自民党は公明党内での議論が進んでいないと述べていた。
しかし今国会の採決に関して公明党の山口那津男代表は、国会での議論において各党が合意を形成できれば採択に進むだろう、国会の取り組みにゆだねたい、とのみ語っていた。
この度の決議案採択がみおくられたことに関して公明党の北側一雄中央幹事会長は、公明党が決議を止めたことはなく、むしろ自民党内の一致が到達していなかったことを挙げている。
自民党内部の保守系には、採決をはやく行うべきとの声がおおくある一方、冬季オリンピックの外交ボイコットをいかに対応するかはいまだ曖昧な立場であり、ボイコットを求める党内の声があるなど統一がとれていない。
公明党は背景に中国との結びつきがつよく、対中批判はおさえがちになる。
公明党とその母体である創価学会は長期にわたり日本では親中的な団体として有名であった。
例えば長池田大作創価学会名陽会が授与された400にもわたる名誉教授、名誉博士などの名誉学位のうち3割が香港を含む中国からのものである。
また、創価学会傘下の創価大学は1972年に中国交正常化後初めて中国人留学生をうけいれたことでも知られている。
中国政府当局による人権侵害の一つは新疆ウイグル自治で行われているとされる。
アメリカ国務省が今年3月に発表した世界の人権侵害に関する2020年版年次報告で指摘されたもので、内容は新疆ウイグル自治区の少数民族のウイグル族にたいし民族大量虐殺と人道に反する犯罪が存在したことを記して中国政府を批判した。
その人権侵害の内容としては、政府が意図的にウイグル族を法に反した形で殺害、思想改造を目的として100万人を超えるイスラム系少数民族を強制的に収容所に拘束、本人の意に反する強制的不妊手術などで、このような手段により違法に弾圧をしたと指摘している。
では、新疆ウイグル自治区とウイグル族について詳しく見てみよう。
新疆ウイグル自治区は中国最西部にあり、人口の半分の約45%がウイグル族、次は41%が漢民族である。
ウイグル族はカザフスタンやウズベキスタンなど中央アジアにも居住しているが、最も多いのは中国、主にこの新疆ウイグル自治区である。
ウイグル族はトルコ系民族で、イスラム教を信仰する。
言語は、中国の標準語である北京語ではなく中央アジアでつかわれるテュルク語族に属するウイグル語を話す。
19世紀に清により征服され、1884年に新疆省となった。
清朝が倒れたのち中華民国に引き継がれ、20世紀初めに中国共産党へ帰順、中華人民共和国成立後1955年に新疆ウイグル自治区となった。
1980年代から1990年代にわたって自治区内での民族自治拡大を求める動きや独立の主張などがみられ、2000年代に入り暴動やテロが発生したため、中国政府が暴動やテロへの徹底的な闘争を開始、同時にウイグル族の中国化を進めた。
アメリカが指摘するウイグル族の拘束とは、中国政府が言う「職能技能教育培養訓練転化センター」への連行であり、ここでは中国語教育を行って、心身ともに中国化に改造するという、いわゆる洗脳教育をしているとされる。
新疆ウイグル自治区のほかにも、例えば内モンゴルでは2020年9月からモンゴル系の公立校でモンゴル語による授業が禁止され、北京語での授業が強制された。
一方チベットでも1949年以降中国政府によってチベット独特の文化、宗教などが抑圧され、チベット語の使用も脅威にさらされている。
また、2008年にチベット騒乱が発生したあと中国政府による武器や弾薬の取り締まりが強化され、多数の逮捕者を出す結果となった。