芸能

水木一郎さん死去。貫いた“生涯現役”

肺がんのため緊急搬送先の病院で死去

『マジンガーZ』や『仮面ライダー』シリーズなどのアニメや特撮作品の主題歌、挿入歌を1,200曲以上歌い、“アニメソングの帝王”と呼ばれた歌手の水木一郎さんが、12月6日午後6時50分に肺がんのため緊急搬送先の病院で死去した。

12月12日に所属事務所が発表したもので、享年74歳。

通夜及び葬儀は遺族の意向で近親者のみで執り行われたが、後日お別れの会を開く予定だという。

所属事務所イエローバードは、公式サイトで「弊社所属の歌手・水木一郎が令和4年12月6日 午後6時50分、肺がんのため永眠いたしました」と報告。

「ここにみなさまからの生前のご厚誼に感謝し、心から哀悼の意を表しますとともに、謹んでご報告申し上げます」と感謝を伝えた。

事務所によると、肺がんを公表したのは2022年7月26日だったが、1年以上前の2021年4月に肺がんを患っていることがわかったという。

それ以来1年7カ月の間、入退院を繰り返しながら放射線治療や薬物療法を行ってきた。

闘病中は、脳やリンパ節への転移や、髄膜播種を伴う厳しい病状だったが、“生涯現役”を目標に、治療やリハビリに励むとともに、歌手活動も行ってきた。

亡くなる約1カ月前の11月8日には、東京・中野サンプラザで行われた『第49回歌謡祭〜さよならサンプラザ〜』(日本歌手協会主催)に出演した。

車椅子に座ってステージに登場した水木さんは、身体を斜めに傾け、座っているのも辛そうな様子ながら、代表曲『マジンガーZ』を熱唱。

「1日も早く元気になって戻ってきます!」と力強く宣言した。

生涯現役を目標に生き様を見せてくれた水木一郎さん、ありがとう
生涯現役を目標に生き様を見せてくれた水木一郎さん、ありがとう

最後のステージは亡くなる9日前

最後のステージとなったのは亡くなる9日前の11月27日、東京・よみうり大手町ホールにて開催された『水木一郎・堀江美都子 ふたりのアニソン#19』だった。

通称“ふたアニ”と呼ばれるこのライブは、水木、堀江の2人で2003年から行われている人気ライブ。

2人でライブのプロデューサー的な役割も務め、毎回の選曲を自分達で決めていた。

歌はもちろん軽妙なトークの掛け合いも魅力で、お互いのレパートリーを交換して歌ったり、レアな曲をリクエストし合ったり、楽しい内容で観客を魅了してきた。

最後の公演となった11月27日のライブでも水木さんは車椅子でステージに現れたが、すでに長時間ステージにいるのが難しいほど体調が悪化していたため、串田アキラ、谷本貴義、高取ヒデアキの3人の歌手仲間がゲストに訪れて水木さんをサポートしたほか、水木さんの弟子に当たるザ☆カインズがコーラスで参加した。

ライブの最後に水木さんが「生涯現役、応援してください」と挨拶し、出演者全員で『バビル2世』を熱唱。

水木、堀江両名の「愛してるゼ~ット!!」の力強い掛け声で幕を閉じた。

12月2日には、東京・NHKホールで『マジンガーZ』を作曲した渡辺宙明さんの追悼コンサートに出演予定だったが、当日体調不良を訴え、ドクターストップがかかったため出演は叶わなかった。

最後に力強く「生涯現役、応援してください」と挨拶
最後に力強く「生涯現役、応援してください」と挨拶

輝かしい経歴

水木さんは、肺がんが発覚する約4カ月前の2020年12月に『タニタ健康大賞』に選ばれるなど、力強く健康的なイメージで知られていた。

1948年に東京で生まれた水木さんは母の影響でジャズを聴いて育ち、1968年に歌謡曲歌手としてデビュー。

ヒットには恵まれなかったが、1971年にアニメ『原始少年リュウ』の主題歌『原始少年リュウが行く』を歌ったことをきっかけに、アニソンの世界に進出。

翌1972年に歌った『マジンガーZ』の主題歌が70万枚を売り上げる大ヒットになり、代表曲となった。

そのほかには『宇宙海賊キャプテンハーロック』『仮面ライダーX』『仮面ライダーストロンガー』などの人気アニメの主題歌を次々と歌い、2016年には『東京アニメアワードフェスティバル2016』にて、アニメ功労部門を受賞した。

アニソンだけではなく、1976年4月から1979年3月には『おかあさんといっしょ』(NHK総合)で、2代目うたのお兄さんとして活躍したほか、中日ドラゴンズの応援歌『燃えよドラゴンズ』の歌唱でも知られる。

また1999年には、自身の持ち歌1,000曲を24時間で歌いきるライブを1人で開催し、成功。

“日本で1番多くの曲を歌った単独ライブ”として、音楽史に輝かしい記録を打ち立てた。

水木さんの代表作『マジンガーZ』
水木さんの代表作『マジンガーZ』

止まない哀悼の声

水木さんの訃報に、芸能界や音楽界、アニメ界から哀悼の言葉が相次いでいる。

11月8日の『第49回歌謡祭』で共演した森口博子は、12月8日に『めざまし8』(フジテレビ系)に出演し、「元気なままで、また次のステージねって約束をしたので、突然でまだ信じられない。

衝撃を受けた」と目に涙を浮かべながら語った。

水木さんとの出会いは約20年前で、「博子が最初に俺のリハーサルを見て、感動してくれたんだったよな」と言われたのが最初だったことも明かした。

また、ももいろクローバーZは、2011年に“ももいろクローバー”からグループ名を改名して以来、水木さんから教わった「ゼェーーート!!」が定番の挨拶となった感謝を公式サイトで伝えた。

そして、「これからもアニキから継承した“Z”とともに、たくさんの人たちに笑顔を届けていきたいと思います」とメッセージを送った。

また『ONE PIECE』や『サクラ大戦』の音楽を手掛けた作曲家の田中公平氏は、Twitterで「本当に本当に残念!嘘だと言ってほしい。

アニキがいないと、アニソンはどうなるの? まだまだ早すぎる。

謹んでご冥福をお祈りします」と追悼の意をツイートした。

声優の関智一は「学生時代からお世話になり、ドラマにバラエティにイベントに、さまざまな場所でご一緒させていただきました。

いつも元気で、明るく声をかけてくださり、本当にアニキのような方でした。

生涯現役を貫かれる姿、かっこよかったです。

これからもたくさん、歌を聴きます。

歌います。

水木さん、お疲れさまでした」とのメッセージを発表した。

多くの人に惜しまれながら旅立ってしまったアニソンの帝王が残した数々の名曲は、これからも色褪せることなく人々の胸に刻まれ続けることだろう。

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