性被害を告白した元ジャニーズJr.の3人が児童虐待防止法の改正を求め、約4万人の署名を国会へ提出
性的虐待の加害者を保護者だけではなく第三者へも拡大することを求める
ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川前社長から性的被害を受けたことを告白した元所属タレントの3人。
2023年6月5日、児童虐待防止法改正を求めて集めた約3万9,326人分の署名を、自民党や立憲民主党など与野党6党に提出した。
署名を提出したのは、2023年4月に日本外国特派員協会にて記者会見を行ったカウアン・オカモト氏、5月に立憲民主党が国会内で行った“『性被害・児童虐待』国対ヒアリング”にオカモトさんとともに出席した橋田康氏、そして文春オンラインの取材で被害を告白した二本木顕理氏の3人。
同じく性被害を告白したアイドルグループ忍者の元メンバーの志賀泰伸氏と4人で、インターネット上で5月26日から署名を集め始めた。
現在の児童虐待防止法では虐待の加害者は保護者に限定されているが、第三者にも拡大し、性的虐待に気付いた成人に通報を義務化するなどの法改正を求めている。
各党の控室を訪れた3人は、
「(被害に遭ったのは)13歳ごろだったため、まだ性の知識がなく、されたことがよいことか悪いことかの判断も付かない状況だった。
今後、そんな子ども達を生み出さないためにも法改正を望んでいる」などの内容が綴られたメッセージを読み上げ、署名を綴じたファイルを提出した。
3人は署名提出後、報道陣の取材に応じ、オカモト氏は「僕らの過去は戻らないので、被害者が怖がる法律ではなく、加害者が怖がるような法律を作れたらよい」と話した。

与野党間の温度差が浮き彫りに
橋田氏は、「(署名を)しっかりと届けられたと思う。
法改正されればジャニーズ事務所やエンターテインメント業界に限らず、幅広い場で未来の子ども達が守られる環境が作られると考えています」と希望を述べた。
また、「(現在の)国会の期間に成立させてほしい」と、法案の早期成立を求めた。
しかし、児童の性被害防止策について与野党の足並みは揃っていない現状だ。
立憲民主党は積極的に児童虐待防止法の改正を呼びかけているが、自民党、公民党の両党は慎重な姿勢を見せており、6月21日に会期末を迎える今国会中の法整備は難しいと見られている。
これまでも児童虐待防止法の改正を巡り、立憲民主党が自民党に実務者協議の提案をしたが拒否されたため、単独で衆院に提出した経緯がある。
提出された内容は、加害者の範囲を“保護者”から“地位に基づく影響力を有する者”に拡大し、被害に気付いた第三者に警察への通報義務を課すというもの。
その後も、与党は実務者協議の呼びかけには応じていない。
署名提出に訪れた3人に対する対応も、立憲民主党の安住淳国対委員長らは署名を受け取った際、「もう一押しだ。全力でやりたい」と語ったのに対し、与党は署名の受け取りは職員が対応し、温度差が浮き彫りになっている。
自民党幹部は「野党主導の議論には乗りづらい」と話し、公明党は6月2日に政府へ向けて緊急提言を提出したが、関係省庁連絡会議設立の要望にとどまり、法整備に触れられることはなかった。
石井啓一幹事長は「現行法の下での対応が可能だ」と語り、共産党の吉良佳子参院議員はオカモト氏らの要請に「力を合わせたい」と約束。
一方、日本維新の会の馬場伸幸代表は、「勇み足になれば、逆に悪い影響が広がる」と述べ、野党各党の間にも温度差がある状況だ。

ジャニーズ事務所に対する要望
橋田氏は、先月ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長と面会し、「長い間、苦しい思いをさせて、嫌な思いをさせてしまって申し訳ありませんでした」と謝罪されたことを明かし、誠意が感じられたと話した。
藤島氏がジャニーズ事務所のホームページに公開した謝罪動画では、ジャニー喜多川氏の性加害について「知らなかった」と話していたが、橋田氏は「性加害の噂があったり耳に入ったりしたことはあった」と説明されたという。
しかし、藤島氏は「ただ、踏み込んで知ろうともしなかった。
それは、私が本当にいけないことだ。
罪として自分が感じているところだ」とも語っていたという。
ジャニーズ事務所は、所属経験のある全タレント対象の相談窓口を5月31日に設置し、再発防止に向けて動き出している。
しかし、橋田氏に対して被害の実態解明に関しての言及はなく、「ジャニーズ事務所が問題に正面から向き合うことが必要だと感じた」と話す。
「(被害者が)どうして声を上げられなかったのかという問題にきちんと向き合って、その後に改善してほしい。
今後同じことが二度と起こらないよう、言いやすいような環境を整えてほしい。
そのためには過去をしっかりと振り返り、向かい合ってスタートすることが必要」と述べ、第三者員会の設置による実態解明を求めた。
そして、「問題に積極的に向き合ってくれたら、子ども達を守ることに徹底した会社に生まれ変わるのではないか」との期待を寄せている。
「しっかりと段階を踏むことができれば、心から応援したいと思う」とジャニーズ事務所に対する要望を語った。
