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加藤未唯ペアが全仏混合ダブルス初優勝 失格乗り越え

 テニスの四大大会の一つ、全仏オープンは6月8日、混合ダブルス決勝があり、加藤未唯とティム・プッツ(ドイツ)のペアがB・アンドレークス(カナダ)とM・ヴィーナス(ニュージーランド)のペアを4-6、6-4、10-6の逆転で勝利し、四大大会で初めての優勝を果たした。

加藤は女子ダブルスでボールガールにボールを当ててしまい失格となるトラブルがあり、難しい状況の中での大会だったが、苦境を乗り越えてキャリア最高のタイトルを手にした。

加藤の得意のネットプレーで流れつかむ

 決勝の第1セット、加藤のペアが序盤から攻勢に出てブレークに成功した。

しかし、中盤から相手ペースとなり、第8ゲームではブレークバックを許してしまう。

結局、第7ゲームから4ゲームを連取されてしまい、4-6で落とした。

 それでも、第2セットは両ペアがサービスゲームをキープする一進一退の攻防で粘りを見せる。

第9ゲームから加藤が積極的に前に出てブレークを奪うと、第10ゲームは加藤の持ち味でもあるネットプレーで連取し、6-4でこのセットを取り返した。

 第3セットは10ポイント先取のマッチタイブレーク。

加藤のネットプレーで5ポイントを連取して完全に流れをつかむ。

最後は相手のショットがネットにかかり、10-6で制して、優勝を決めた。

女子ダブルスでボール当ててしまい不可解な失格

 加藤は6月4日にあった女子ダブルス3回戦で、プレーの合間に意図せずに相手コートに打ち返したボールが、ボールガールに直撃。

ボールガールは予期せぬことで驚いたのか、涙を流した。

これが危険な行為とみなされ、失格となってしまった。

 失格の判定について、大会の運営責任者に動画を見て状況の確認を求めたが、却下された。

一度は警告とされながら、相手選手が主審に抗議した後に判定が失格に変わるという不可解な点もあった。

そのため、加藤は四大大会側に危険な行為には当たらないとして提訴。

プロテニス選手協会は「失格とする判定は不当に釣り合わないものであり、不公平だった」という声明を発表した。

 加藤は「故意ではないにしても彼女(ボールガール)に当たってしまったのは事実。

それだけは謝りたい」としたうえで、判定については「納得がいっていない」と語っていた。

他の選手からも加藤をサポートする声が上がっていた。

 こうした問題があり、メンタル的にも難しい状況だったが、加藤は初めて出場した混合ダブルスで素晴らしいパフォーマンスを見せた。 

 優勝を決めた加藤は用意したメモを読みながら英語でスピーチ。

「ここ数日は女子ダブルスの失格で精神的に大変な時期でした。

温かいことばをかけてくれた選手やコーチに感謝したい。

それがポジティブなエネルギーとなってここに来ることができました」と涙ぐみながら話した。

 また、女子ダブルスでペアを組んだインドネシアのアルディラ・スーチャディに対し

「失格になったことは不運でしたが、ベストをつくしました。

いつか一緒に女子ダブルスの決勝に臨みたい」と再びペアを組みたい思いを語った。

加藤のスピーチに、会場からは温かい拍手が送られた。

1位を目指してほしいと111万1111円寄付

 加藤は1994年生まれの京都市出身。

8歳からテニスを初め、立命館宇治高校を経て2013年にプロ転向。

シングルスでは2015年の全米オープンから四大大会に挑戦を始める。

ダブルスでは2016年の全仏オープンに奈良くるみとペアを組んで初出場した。

これまでの四大大会ダブルスの最高成績は2017年全豪オープンのベスト4。

WTAランキングの最高はシングルスが122位、ダブルスが30位。

 テニスをはじめとするジュニアスポーツの未来のためにという目的で2020年5月に京都市に111万1111円を寄付した。

 「故郷への恩返しも含め、京都市のジュニア・アスリートのために何か還元したい。

今は新型コロナウイルスのため多くのスポーツイベントも中止になっているけれど、再開された時には多くの少年・少女たちに『1位』を目指して欲しい」との思いだったという。

 少年少女のお手本になるように、加藤は世界の四大大会で1位を獲得した。

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