時間稼ぎ?前進?旧統一教会問題で岸田首相が「質問権」行使の調査を指示
17日岸田首相は永岡文科相に対し、旧統一教会を宗教法人法に基づいて調査するよう指示した。
25日に専門会議を開き、「質問権」行使の基準をまとめるところから始めるという。
このことについて「時間稼ぎ」ではないか、という声が上がっている。
質問権とは?
「質問権」とは、宗教法人法に基づくものである。
過去にオウム真理教による一連の事件を受け、平成8年の法律改正で盛り込まれた規定だ。
文部科学省や都道府県が、法令違反が疑われる宗教法人に運営実態などの報告を求め、質問を行うことができる。
もし、今回「質問権」が行使されれば、初のことになる。
松野官房長官の発言より、平成28年以降に法人自体の組織的な不法行為の責任を認めた民事裁判の例があったと判明。
その上、合同電話相談窓口には9月末時点で1700件以上の相談が寄せられたとのこと。
こうした裁判例や相談の状況、有識者の意見も踏まえた上での支持だった。
その上で今後は、文部科学省が専門家の意見も伺いながら検討を開始する予定だ。
その際、宗教法人法の規定に基づき、宗教法人審議会に意見を聞いた上で、報告徴収や、質問権を行使していくと語った。

積極的な姿勢の岸田首相
17日岸田首相は衆院予算委員会で積極的な姿勢を見せた。
旧統一教会への調査指示に加え、消費者契約法などを改正する意向を表明。
旧統一教会から高額寄付被害を被った方々を踏まえ、契約の取り消し権の対象の拡大や、行使期間の延長を行うと述べた。
その他、無料で弁護士に相談できる「法テラス」等の相談体制拡大や、「宗教2世・3世」への虐待防止、進学・就労支援についても強化すると打ち出した。
さらに、野党とも共同歩調を取る姿勢も示している。
立憲民主と維新は、被害者救済法案に「特別補助制度(家庭裁判所が認定すれば、被害者の家族などが寄付を取り消せる制度)」を盛り込んで共同提出していた。
そのことに対し、岸田首相は法改正が必要だという認識は野党側と一致しており、一度検討したいと答弁した。
元信者である宗教2世が「教団を解散させてください」と涙を流し、訴えている。
加えて弁護士から高額献金などによる被害の実態を聞き取り、被害者の救済や教団への調査、解散が何よりも重要であると理解できる。

「時間稼ぎ」「論点ずらし」など様々な声
積極的な姿勢を見せてくれた岸田首相だが、様々な意見が飛び交っている。
共産党・小池書記局長「時間稼ぎ」
国民の批判が高まり、国会で予算委員会が始まる中で、何らかの手を打たざるを得ないと追い込まれて言ったのだろう。
いつ結論が出るかは全く見えず、時間稼ぎと見られても仕方ない。
政府は解散命令の請求を早く決断すべき。
立憲民主党・岡田幹事長「期限を切って結果を出すべき」
調査すること自体はいいが、3か月も半年も先送りし、ほとぼりが冷めるのを待ってはいけない。
岸田総理大臣は、いつまでに調査するということを言うべき。期限を切って総力をあげて結果を出すことが大事だ。
自民党関係者「癒着問題への批判が弱まることに期待」
世論の関心が教団自体の問題や被害者の救済に向けば、自民党と教団との癒着問題に対する批判は薄れるのではないか。
イベント出席など党所属議員の接点も全て公表した。今回の表明により、自民党への批判が弱まることに期待だ。
政治評論家・本澤二郎氏「論点ずらし」
岸田首相は教団を解散させてくれるのではないか。
そんなムードをつくることによって、論点ずらしで安倍隠しや細田隠しをする作戦だろう。
『家庭』を重視する政策や改憲論まで自民と教団が一致してきたことは、どうなるのか。
教団の解散命令や被害者救済は必須として、野党は教団と自民党の癒着についての追及も続けなければならない。
15日に安倍元首相の地元である山口県で県民葬が執り行われ、一連の追悼行事が終わった。
ここから本来、安倍氏が長年にかけて関わってきたと疑いのある、選挙での教団票の差配について調査すべきという声もある。
礼拝で国際勝共連合会長が明かした「8年弱の政権下で6度の国政選挙において、私たちが示した誠意」とは一体どういう意味なのか疑問が残る。
この教団票の差配について、安倍派の会長だった細田議長も関わっていたとされている。
細田氏は自らの口で説明することはなく、書面での返答のみだ。
メディアの報道や我々の意識が旧統一教団の調査に集中し、この選挙での差配が、うやむやに終わるのではないかと危惧する声もある。

答弁を修正「民法の不法行為も入りうる」
これらの意見が飛び交う中、19日参議院予算委員会で岸田首相は旧統一教会の問題をめぐり、解散命令を請求する件について「民法の不法行為も入りうる」と述べた。
18日に要件には含まれないとした答弁を修正した。
小西洋之氏は、宗教法人の解散命令を請求する件には、民法違反は該当しないと繰り返し明言したのに、これこそ自民党と旧統一教会の癒着のなれの果てだと述べた。
さらに、答弁を撤回・修正する考えはあるのか質問した。
それに対し、岸田首相は、改めて関係省庁で集まり議論した結果、宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたと考えられる場合、個別の事案に応じて解散命令の請求を判断すべきと返答。
組織性や悪質性、継続性などが明らかで、宗教法人法の要件に該当する場合、民法の不法行為も入りうると述べ、答弁を修正した。
さらに小西氏は、民法の不法行為責任について解散命令の請求ができるというのが政府見解でいいかと追及し、岸田首相は政府として改めて考え方を整理したと述べた。
また岸田総理大臣は、刑事裁判の判決確定前でも解散命令を請求できるとしている。
これまで霊感商法が社会問題となる中、組織的な不法行為を刑事事件にしてほしい思しいと思っても、信教の自由もありできなかった。
そのような状況で、民事訴訟を通して教団の違法性を世に問い、勝訴判決を重ねてきていた。
そのなかに、教団の関連会社への刑事事件の判決も出ていたと思われる。
刑事事件になるのは簡単にはできないため、被害拡大した後に宗教法人へ解散命令の請求が出ることになる。
それでは今の旧統一教会問題と同じ状態から抜け出せていない。被害が拡大する前に、いち早く止める対策が必要との意見もある。
今回は、誤りはできるだけ早く修正し、変なかばいを見せなかった点は評価すべきだ。今後は迅速な調査や対応が求められる。
