ハロウィンを襲った韓国の転倒事故! 事故当時の恐怖の様子とは
折り重なるように倒れていた痛ましい事故現場
10月29日に、韓国の首都ソウルの繁華街イテウォン(梨泰院)で起きた痛ましい転倒事故。
被害者の中には2人の日本人が含まれており、死亡が確認された。
外務省の幹部によると、亡くなったのは10代と20代の女性2人。
10月30日の午後に現地警察から連絡が入り、ソウルの日本大使館が確認したとのこと。
この日はハロウィンを楽しむために大勢の若者が集まっており、この2人の日本人女性を含む154人が死亡した。
怪我人も130人を超えているという。
現地には約10万人の人々が訪れていたと言われているが、韓国メディアからは事前の行政による安全対策が不十分だったのではないかと指摘されている。
事故現場には狭い路地に仮装をした人も含む若者が大勢密集した状態で、坂の上から次々と折り重なるように倒れてしまった様子。
この地区を管轄するヨンサン(龍山)区は、事前にハロウィン対策を話し合う会議を行ったが、事故を想定した安全管理対策については議論されていなかったと見られている。
当日は現場に職員の派遣も行っていたが人数が足りておらず、対応することができなかったという。
現在、事故の経緯や原因を警察が捜査しているが、行政が事故を防ぐための措置を事前に行っていたのかどうかも調べる方針だ。

被害に遭った日本人女性の父の悲しみ
今回の事故で死亡したと見られている日本人女性2人のうちの1人と見られている富川芽生さんの父で北海道根室市議会議員の歩さんが10月31日、報道陣の取材に応じた。
歩さんは現地に行くため、パスポートの給付手続きに夫婦で札幌市に向かい、中標津空港から新千歳空港行きの飛行機に搭乗。
芽衣さんの弟にあたる長男と合流後、午後の便でソウルに向かった。
歩さんは、娘の芽生さんに「早く会いたい」と涙ながらに語った。
芽生さんは以前より「日本と韓国に関係する仕事をやってみたい」との希望があり、2022年の6月から念願のソウル留学を果たしていた。
本来であればもっと早くに留学をする予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大により延期になっていたため、やっと実現した留学をとても喜んでいたという。
そして、現地では様々な国の友人ができたと嬉しそうに話していた。
事件当日となった10月29日の夜7時頃、「フランス人の友だちと出掛ける」と連絡があったが、その後消息を絶った。
翌30日の朝に家族が携帯電話に連絡をしたがつながらず、何度も連絡を取り続けていると電話に出たのは現地の警察官だった。
警察官からは、携帯電話は事故現場に落ちていたと告げられたという。
「まさか現場にいたとは…。可愛い娘だった。残念です」と声を振り絞るように語った歩さん。
留学前の芽生さんはK-POPの女性グループの大ファンで、韓国の人達とハングルでやり取りできるようになるほど熱心に韓国語を学んでいたという。
「日本と韓国の友好の役に立つと思っていた」と無念の思いを口にした。

動画を撮影していたYouTuber
事故当日、現場の近くでYouTubeを配信していたソウル在住で50代の日本人男性は、「女性が悲鳴を上げていて、外国人の男性が『後ろに下がれ!』と英語で叫んでいた。
その声で周囲の人々も危険に気付き、後ろに戻ろうとする人達と、事態がわからずさらに前に進もうとする人達との間に挟まれ、肋骨や内臓が圧迫されて痛かった。
転んだら死ぬのではないかと思った」と話した。
実際の動画を見てみると、事故が起こる2時間ほど前は、混雑はしているものの、人々が路地を行き交う様子が映されている。
しかし、その1時間後に現場から20m程離れた路地の様子が撮影された動画では、身動きが取れないほど混雑している様子が確認できる。
動画の中で、男性が「将棋倒しの危険性がある」と話す様子も映っている。
男性は「現場周辺で交通整理や警備に当たっている様子はほとんど見られなかった」と話す。
「10代や20代の若者は今年のハロウィンを楽しみにしていて、カメラを向けると笑顔を向けたり踊ったりする人もいた」
「そんな人達が事故に巻き込まれたかもしれないと思うと、言葉にならずやるせない気持ちです」と声を落とした。

事故当時の恐怖を語る女性
観光のため福岡市から韓国を訪れており、事故現場の路地の近くにいたという20代の女性は、
「人が多過ぎて身動きが取れなかった」
「前後左右から押され、息が苦しくかった」
「汗だくで脱水症状のようになった」
「早く抜け出したかったけど、どうしたらよいかわからず、死ぬかと思った」
「友人と『大丈夫? 生きてる? 』と何度も確認し合っていた」と、当時の緊迫した状況を次々に語った。
歩行者を誘導する警備員の姿はなかったと話し、「韓国語で『押すな!』『 助けて!』『 死ぬ』などという言葉が飛び交い、現場の近くではたくさんの人がそれぞれ進みたい方向に進み、ぐちゃぐちゃの状態だった」と説明。
事故が起こった瞬間は、「すぐ目の前にいたけど、人が多過ぎて何も見えなかった」
「事故が起きるまでは少しずつ前に進んでいたけど、急に全く動かかなくなったと思ったら前から大声が聞こえた」と当時の状況を振り返った。
女性と連れの友人は危険を感じ、路地と反対の方向に進んだため脱け出すことができたが、もみくちゃにされたことで、あざが残っているという。
少しでも気を緩めたら人の波に飲み込まれそうだったので、壁づたいに歩いたと話す女性。
路面沿いの店の入り口にある腰の高さほどの柵によじ登り、人波の様子を確認しながら進んだのだという。
無事30日に帰国した女性は、「事故現場の路地にもう少し近付いて逃げ遅れていたらと思うと恐怖でいっぱい」「多くの人が巻き込まれたことはとても悲しい」と語った。
楽しいハロウィンに起こってしまった悲劇。
二度とこのような事故が起きないために、原因や経緯の解明が待たれる。
