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長野の雪崩で元世界王者が死亡 バックカントリーの危険

 長野県小谷(おたり)村で1月29日に白馬乗鞍岳で雪崩が発生し、巻き込まれたスキー客2人が死亡した。

亡くなったうちの1人は、アメリカの元フリースタイルスキー世界チャンピオンのカイル・スメイン氏だった。

スメイン氏の父が米NBCニュースの取材に対し、雪崩でスメイン氏が死亡したと明らかにした。

残念でならない。
残念でならない。

25分間雪に埋まって生還した人も

 雪崩が起きたのは白馬乗鞍岳の東側の斜面(標高約2100メートル)。

近くの栂池高原スキー場のゴンドラリフトの到着駅からは、山頂方面にさらに1キロ以上登ったあたりだという。

 アメリカとオーストラリアから来ていた男性5人が雪崩に巻き込まれ、3人は生還。

捜索にあたっていた長野県警の山岳遭難救助隊が30日に心肺停止状態の2人を発見。

スメイン氏とオーストラリア人の死亡が確認された。

 現場付近では外国人の3グループ、合計13人がゲレンデ外の未整備の「バックカントリー」を滑走するために訪れていた。 

 救助されたアメリカ人スキーヤーの証言では、雪崩に巻き込まれた後、救助されるまで約25分の間、深さ約1.5メートルの場所に埋もれていたという。

「雪崩がやってくるのが見えた。

裂ける音が聞こえて、これは大きいと思った。

走り始めたが直撃されてしまった」と語る。

 スメイン氏は、2015年世界選手権ハーフパイプの金メダリストで、31歳のプロスキーヤー。

アメリカのアウトドア雑誌のカメラマンと撮影のために小谷村を訪れていた。

 長野県観光機構がスメイン氏らからスキー場や周辺の飲食店を楽しむ写真を提供してもらう代わりに、1人あたり750ドルの航空費用を支援する契約だったという。

提供写真は長野の観光PRに使う予定だった。

一部のスキーヤーはコース外に足を踏み入れている現状だ。
一部のスキーヤーはコース外に足を踏み入れている現状だ。

コロナ前にバックカントリーの遭難が増加

バックカントリースキーの遭難や事故はあとを断たない。

 北海道では1月13日に倶知安町の羊蹄山を訪れていた外国人観光客が雪崩に巻き込まれた。

バックカントリースキーをしていたといい、北海道警のヘリが出動してドイツ国籍の女性を救助したが、死亡が確認された。

ガイドを含む13人で滑っていたところ、女性だけが雪崩に巻き込まれたという。

 鳥取県の大山では1月31日、バックカントリースキーをしていた男性3人が雪崩に巻き込まれたと通報があった。

「2人が怪我をして歩けない」という内容で、防災ヘリや鳥取県警のヘリが救助に向かった。

 バックカントリーは、スキー場のゲレンデのようには圧雪されていないコースの外の斜面を滑る。

そのふかふかの雪の感覚を楽しむために、一部のスキーヤーはコース外に足を踏み入れている。

外国人観光客の人気も高い。

 警察庁のまとめでは、バックカントリーの遭難者は、2015年は114人だった。

その後、2019年に164人と、統計を取り始めた2015年以降で最多に。

新型コロナウイルスの影響で2020年と21年は90人台に減少したものの、遭難事故は起きていた。

救助隊も命がけ 雪崩のリスクは平等

 救助を担当する長野県警山岳遭難救助隊の隊長はこう語る。

「かなりの雪が降り積もっていて雪崩の規模を目視で確認するのは非常に難しい状況でした。

末端のデブリを見ると幅30から40メートルはあった。

それなりに規模の大きな雪崩であったのではないかと思う」

 長野では、今年に入ってすでにバックカントリーの遭難が6件発生していて、今回も含めて11人が遭難したという。

 「バックカントリースキーは管理されていない雪崩の危険や立木に衝突する危険が非常にあるアクティビティーです。

 我々もこういった遭難があるとかなりのリスクを背負って救助に向かうこともあるので、これからバックカントリースキーを予定されている方は、自分は事故にはあわないと思わないで、雪崩は雪があるところでは必ず発生しますし、誰しもそのリスクは平等ですので、今回の事故を教訓にして、慎重な行動をぜひお願いしたいと思います」

 救助隊員も命がけで現場に向かう。

二次災害を防ぐためにも、スキーヤーにはマナーを守った滑走が求められる。

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