デイサービスでギャンブル!?ユニークな取り組みをしている介護施設!

麻雀やパチンコが楽しめる“デイサービスラスベガス”とは?

どの業界でも、他とは違うユニークな取り組みや新しいチャレンジをしている会社や個人は存在する。

もちろん失敗に終わることもあるが、しっかりと成果を上げている事例も多い。

介護業界でもユニークな取り組みをしているデイサービスセンターがあり、話題になっている。

その名も“デイサービスラスベガス”という介護施設だ。

“デイサービス”と“ラスベガス”という2つの単語も、“介護”と“ギャンブル”という2つの業界も、通常では並ぶことはあり得ない。

しかし、その2つの言葉が施設名となっているこの異色のデイサービスセンターは、なんと利用者が麻雀やパチンコを楽しめるという。

施設内には全自動麻雀卓が5台置いてあり、デイサービスを利用する高齢者とスタッフが麻雀を楽しんでいる。

また、壁際にはパチンコ台が9台並び、やはり利用している高齢者がパチンコやスロットに興じているのだ。

デイサービスラスベガスが開業したのは、今から9年前の2013年のことで、東京都足立区に1号店がオープンした。

オープン当時は、「高齢者が介護保険を使ってギャンブルをやるなんてどういうことだ」との批判の声もあったが、利用者には人気を呼び、現在では関東を中心に22店舗も展開している。

デイサービスとギャンブルが結び付いたきっかけは、デイサービスラスベガスを運営している会社の森薫社長が、アメリカに高齢者の生活ぶりを視察するために訪れたときのこと。

本場ラスベガスのカジノで大負けした森社長がふと周りを見渡すと、カジノの客は高齢者ばかりだった。

しかも、杖をついたり車椅子に乗っていたりする人が多かったが、みんな楽しそうな表情をしている様子を見て「デイサービスセンターにも、カジノに行くようなテンションで通ってもらえたら意欲的に通ってもらえるようになるのではないか」と考えたという。

日本に帰国して役員会で提案すると大反対にあったが、「失敗したら自分が責任を取る」と説得し、開業に漕ぎつけたという。


麻雀も立派な頭の体操になる
麻雀も立派な頭の体操になる

旅行気分が味わえる工夫

デイサービスセンターというと、利用者が楽しむレクリエーションはペットボトルボーリングなどのゲームや、お手玉、塗り絵、折り紙など昔ながらの座って静かに楽しむものが定番だ。

どちらかというと女性が好みそうなものが多く、男性の利用者の中には「やりたくない」と拒否したり、つまらないから「行きたくない」と通所を渋ったりする人も多い。

そんな人達にとって麻雀やパチンコができるデイサービスラスベガスは、夢のような空間なのだろう。

実際、デイサービスラスベガスの利用者は他の施設に比べて、男性の利用者が多い。

デイサービスラスベガスの特徴は、これだけではない。

一般的にデイサービスセンターの送迎者と言えば、白いワンボックスカーや軽自動車に、施設名が書いてあるものが多いが、デイサービスラスベガスの送迎車は黒いワンボックス。

そして「Las Vegas」と金色の英字で施設名が書かれている。

パッと見たところ、介護施設の送迎車とはわからない。

黒い車にしたのは、利用者からのクレームがきっかけだったそうだ。

「そんな事業者名が入った白い車で迎えに来たら、介護施設に通っているのがバレる!」と言う利用者がいたことで、デイサービスセンターに通っていることを近所の人に知られたくない人もいるということに気付いた森社長。

そこで、シンガポールでホテルの宿泊客をカジノに送迎する黒いワンボックスをイメージし、現在の送迎車になった。

そして、デイサービスセンターの内装は病院のような雰囲気の施設が多いが、それも避けるため照明はシャンデリア風。

スタッフのユニフォームは、キャビンアテンダントの制服をモチーフに作り、旅行気分を味わってもらえるように工夫した。

これなら将来我々も行きたくなる
これなら将来我々も行きたくなる

健康増進にも大きな成果

オープン当時、「介護保険や税金を使ってギャンブルをするなんてけしからん」との批判があったため、「税金を使っている以上結果を出さなければいけない」と奮起。

「利用者の要介護度や生活の改善につなげるため、様々な取り組みを始めた。

その1つは、麻雀やパチンコをするためにはゲーム料金の支払いが必要というもの。

もちろん本当のお金ではなく、“ベガス”という施設内通貨。このベガスをもらうためには、毎日行われる体操やストレッチなどの機能訓練に参加しなくてはならない。

身体を動かしたくないという人も、ベガス欲しさに自発的に運動に参加するようになり、機能訓練にも効果を発揮しているのだ。

ベガスは麻雀やパチンコに勝つことでも増やすことができる他、

「みんなの前でストレッチをする」

「1カ月間休まず通う」

「前より元気になったと感じたら自己申告する」などのミッションをクリアすることでももらえる仕組みになっており、ベガスをたくさん稼いだ人は表彰される。

1回体操するごとに1万ベガスがもらえ、2021年に年間1位になった人は、1億461万ベガスも獲得したというから驚きだ。

利用者がギャンブルにのめり込んでしまうのではないかと心配する声もあったが、それよりも健康増進への効果が大きく、ギャンブル依存症になった利用者はいない。

利用者の中には、デイサービスラスベガスに通い始めてから麻雀を覚え、「頭の体操になっている」と喜ぶ人や、「娘に迷惑をかけないように通っているが、元々ギャンブルが好きだから通うのが楽しい」と喜ぶ人が多い。

もちろん、高齢者の中にはギャンブルが苦手な人はいるし、従来のデイサービスセンターのレクリエーションを楽しいと思う人もいる。

運営会社は通常のデイサービスセンターの運営も行っており、森社長は「大切なのは、自分で選択すること」と話す。

「選択肢があるということが、この国の幸せ。自らの選択や意思で通えるようなデイサービスを作り上げたい」と理想を語った。

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