「つらい役を任せてごめんね」・・・困窮の果て、生活保護を知らない長男が母の最期の願いに応じる
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経済的に困窮したことで、自分を殺してほしいと頼む母親の首を絞め殺したとして嘱託殺人の罪に問われた尾崎被告(26)は名古屋地裁から15日、懲役3年、保護観察付きの執行猶予5年の有罪判決を言い渡された。
判決などによると、尾崎被告は8月5日に自宅で同居する母親(当時50歳)に頼まれて、頭にビニール袋をかぶせ、両手で首を絞め殺害した。
中学生のころに両親が離婚し、母親が無職で病気を患っていたため、尾崎被告はともに暮らす弟と一緒に家計を支えてきた。
しかし、尾崎被告は昨年の2月ころに新型コロナウイルスの影響もあってか、勤務先を解雇された。
祖父からの仕送りと弟の収入などで何とかやりくりし、アメをなめて耐え凌ぐほどもあったそうだ。
そのうちに母親は「これ以上、生きている意味がない」などと口にするようになり、事件の数日前から繰り返し自殺未遂を図っていたとされ、尾崎被告にも「殺して」と懇願するようにあったという。
そんな母親を被告は「見ていられなかった」と弟を外出させ、「こんなつらい役、任せてごめんね」「出来の悪い親でごめんね」と謝る母親を手にかけた後、自ら110番した。
尾崎被告は失業保険や生活保護などの制度を知らず、誰にも相談できずにいたという。
公判では「自分一人で抱え込み、他人に頼ることができなかった」と後悔を口にした。
何とも痛ましい事件が起きたが、まだまだ生活保護などの社会保障制度を知らない若者は多いのではないかと思う。
そもそも、社会人になって初めて給与明細などで目にし、やっと知る人が多いのが大半ではないだろうか。
また、周りにも相談できる環境の整備が必要だと考えさせられた。
今回の事件をきっかけにし、今後こういった事件を起こさないためにもしっかりと国民に知ってもらう取り組みや仕組みが必要だ。
生活保護とは

生活保護は様々な事情によって生活に困っている人に対し、経済的に足りないところをカバーすることで生活を保障し、経済的に自立していけるようサポートする仕組みのことをいいます。
この制度は日本国憲で保障された国民の権利であり、生活保護の要件を満たす限り誰でも平等に受けることができ、最低限の生活が保障されています。
しかし、この生活保護の費用は国民の税金から出されており、生活に困窮した人の「最後のセーフティネット」であるとされ当然、受給できるのにはいくつかの義務や条件があります。
生活保護の相談や受給できる対象者

東京のある区のホームページには以下の方はご相談くださいとの記載があります。
・不動産や自動車、預貯金などのうち、ただちに活用できる資産がない
・就労できない、あるいはしていても必要な生活費を得ることができない
・年金や手当などの社会保障費を得ていても、十分な生活費を得られていない
・扶養義務者からの援助を受けられず、または受けていても必要な生活費を得ることができない
まずはこういった事情を抱えている方は相談をしに行けるが、そこから本当に生活保護が必要なのかどうかの調査が行われます。
また、これらのうち1つでも該当しない条件がある場合には残念ながら生活保護を利用するのは難しいとされる。
持ち家、車などの資産を活用できない
生活保護法では最低限の生活の維持のために資産の活用を求めます。
資産を売却することによって生活費に充てられると判断される資産がある場合は、生活保護は受給できないとされる。
主に売却を求められる資産には不動産、自動車、125CCを超えるバイク、貴金属、貯蓄型の民間保険の売却を求められます。
働きたくても働けないなど能力を活用できない
現在働いている人は基本的に自分で必要最低限度の生活が維持できると考えられるため、生活保護の対象にはなりません。
生活保護とは働きたくても働くことができず、最低限度の生活費とはその人の居住地、世帯人数などによって変わってきますが、働いても十分な生活費を得られない人が対象になります。
また、病気や怪我、障害、高齢などの理由で働きたくても働けない場合、障害で世話が必要な子供を抱えたシングルマザーの方など働きたくても働けないような理由がある場合には生活保護の対象になる可能性があります。
他の公的制度が受けられない
生活保護は最終的な手段であり、それ以外の経済的援助が受けられるのであればそちらを優先させなくてはなりません。
生活保護以外の経済的な援助には職を失った人が離職する前に受け取っていた給与の50~80%程度支給されるとする「失業保険」、通勤や業務中の事故で怪我や病気いなったりしたときに受けられる「労災保険」、障害や病気で働けない人、生活に困窮している人が受けとれる「障害年金」、65歳以上の人が受け取れる老齢年金、生計を支える家族が亡くなった時に遺族に対して支払われる「遺族年金」などがあります。
親族などで支援してもらえる人が見当たらない
生活保護法では生活保護の受給前に親族からの経済的援助を優先するよう定め、もし親族からの経済的な援助が受けられない場合には生活保護を受給することができます。