浦和のGK鈴木彩艶にマンUが9億円オファー
イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドがJ1浦和のU22日本代表GK鈴木彩艶(ざいおん)の獲得に動いている。
マンUが7月5日までにこの夏の移籍市場での獲得に向けた正式なオファーを提示したという。
浦和と鈴木も移籍に前向きで、移籍金は日本人選手歴代最高の500万ポンド(約9億1700万円)もの額で交渉が進められている模様。

パリ五輪の中心担う20歳
鈴木は2002年8月生まれの20歳。
アメリカで生まれ、さいたま市で育った。
ガーナ人の父と日本人の母の間に生まれ、名前のざいおんは、聖書の聖なる丘「Zion」に由来する。
幼稚園からサッカーを始めると身体能力の高さを生かして浦和の育成組織で順調に成長し、浦和ではクラブ史上最年少の16歳5ヵ月11日でプロ契約を結んだ。
2021年にトップチームに昇格すると、3月のルヴァンカップ湘南戦で公式戦に初出場。
18歳6ヵ月12日でGKとしてのクラブ最年少出場記録となった。
2021年はリーグ戦6試合、カップ戦9試合に出場。
2022年はリーグ戦2試合、カップ戦2試合、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)4試合に出場したが、浦和の正GKは長くベテランの西川周作が務めており、なかなか出場機会をつかめずにいる。
アンダー世代の日本代表には、2017年のU17日本代表に飛び級で選ばれ、2019年のU20日本代表にも飛び級で選出された。
2021年には東京オリンピックのU24日本代表に18歳のチーム最年少で選ばれた。
2022年7月にはE-1選手権を戦う日本代表としてA代表に初選出。
香港戦でA代表デビューも果たした。
2023年6月には欧州遠征をしたU22日本代表に選ばれており、2024年のパリオリンピックを戦う世代の中心として期待されている。
日本人選手で史上最高額の移籍金見込む
その若き才能にイングランドの名門が目をつけた。
鈴木は身長190センチの長身でリーチが長い。
足元の技術も優れており、キックも正確。
高校時代に125キロのベンチプレスを上げるなど、パワーも規格外だ。
マンUは継続して鈴木の動向をチェックし、6月のU22日本代表の欧州遠征でのプレーを見て、獲得へ本格的に動いたとみられる。
マンUは長く正GKを担ってきた元スペイン代表GKデヘアが契約満了で退団。
GKの補強が急務なため、鈴木に白羽の矢を立てた。
鈴木がマンU移籍となれば、日本人選手ではセレッソ大阪の元日本代表MF香川真司以来、2人目となる。
ベルギーのシントトロイデンも鈴木の獲得に動いていると報じられているが、移籍金の条件面などではマンUが優位だろう。
マンUの鈴木への高い評価は異例とも言える。
今季、鈴木はリーグ戦出場がゼロで、通算でもリーグ戦は8試合しか出場していない。
20歳という将来性を評価し、500万ポンドもの移籍金を提示したとみられる。
これまで、日本人選手が海外に渡ったケースで移籍金の最高額は、2021年7月にヴィッセル神戸からスコットランドのセルティックに移籍した日本代表FW古橋亨梧(きょうご)の450万ポンド(当時のレートで6億7500万円)とされてきたが、それを鈴木が上回る見込み。

労働許可証のルール変更も追い風
鈴木にとってはプレミアリーグのルール変更も移籍への追い風となった。
労働許可証の資格外選手の獲得が可能になったからだ。
これまでは代表として国際Aマッチの試合出場数が一定以上など、労働許可証の発行基準が厳しく、特に若い選手がイングランドに移籍する場合は欧州の他クラブへレンタル移籍しなければならないケースが多かった。
ブライトンで活躍する日本代表FW三笘薫もベルギーのユニオンサンジロワーズでのプレーを経て、基準をクリアしたうえでブライトンに復帰した。
ドイツ・ボーフムの日本代表FW浅野拓磨のようにアーセナルが獲得したものの、レンタル移籍後もアーセナルで出場することなく、他クラブへ移籍となったケースもある。
プレミアリーグで新基準の運用によって、資格外選手を4人まで登録できるようになる。
マンUや鈴木にとっては、労働許可証の心配をすることなく、移籍することができそうだ。
鈴木がプレミアリーグで才能を開花させ、パリオリンピックや日本代表で活躍することが期待される。
