「サル痘」世界で感染報告相次ぐ。感染拡大の恐れは?
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2022年5月13日~21日の間に、英国や米国などを含める12か国で「サル痘」の感染者が確認されたと、世界保健機関(WHO)は発表した。
現在感染者は92人にのぼり、感染の疑いがある人は28人となっている。
WHOの説明によると、最初にサル痘の感染が見つかったのは英国であり、家族3人が感染したものであった。
この患者は西アフリカのナイジェリアへ旅行にいっており、そこで感染したとみられている。
12か国のうちもっとも感染者が多いのがスペインで30人、次に英国で20人、そしてポルトガルで14人となっている。
これまでサル痘は、アフリカで感染が確認されたウイルスであった。
しかし、今年にはいってから、今まで事例がなかった英国でも感染が報告されたのである。
新型コロナウイルスが収まりつつある今、各国は海外旅行者を受けいれる体制になってきている。
その中で今回のサル痘の感染拡大はどのような影響を与えるのだろうか。新型コロナウイルスのように、世界規模での感染拡大が懸念されている。

サル痘の感染拡大の可能性は?
はじめてサル痘が発見されて以降、今のように感染拡大することはなかった。
ここ数週間に発生した事例だけでも、過去に報告されたサル痘感染者の事例を超えるほど増加傾向にある。
しかし、米陸軍感染医学研究所では、「サル痘は新型コロナウイルス感染症ほどのウイルス疾病ではない」と述べており、「大流行になる可能性は低い」とみられている。
その理由としては、「サル痘は人から人への感染率が低い」「天然痘に似た症状であり、天然痘は有効とされている治療剤やワクチンがすでにある」という点である。
現在天然痘は根絶しているが、過去に流行した際に有効とされる治療法が確立されている。
そのため、似た症状であるサル痘は、新型コロナウイルスと違い治療方法があり、感染者の早期発見、接触者の特定により、感染拡大を予防できるのではないだろうか。

保健機関の対応
英国の保健機関は管理チームを立ち上げ、接触者の特定と管理を行っている。
5月11日に地域社会・医療現場・国際線搭乗者へおこなった調査では、サル痘のような症状がでている人は居なく、感染者へ接触した人も特定できていると報告。
現在特定されている接触者は、感染者との最後の接触日より21日間、行動を追跡調査され、リスクが高い接触者においてはワクチン接種をおこない、感染拡大を防いでいる。

サル痘とは?
サル痘とはサル痘ウイルスによる急性発疹性感染症のことである。
主にアフリカの熱帯雨林で感染が報告されていた。
サル痘は新型コロナウイルス同様に動物を媒体として人に感染し、アフリカではリスやウサギ、プレーリードッグなどのげっ歯類がウイルス保有動物であることがわかっている。
サル痘に感染した場合の致死率は、アフリカの事例で1%~10%、最近では3%~6%程度。
2003年にペットとして輸入された小動物がサル痘に感染しており、動物を通じてアメリカにウイルスが持ち込まれた事例があった。その際は71人もの感染者を出したが、死者はいなかったという。

【サル痘の感染経路】
動物から感染する場合には、サル痘にかかっている動物の皮膚病変との接触により、人に感染するとわかっている。
人から人への感染も確認されており、その場合には感染者の発疹や体液、飛沫などの唾液などの物質を通じて感染する特徴がある。
【サル痘の潜伏期間】
サル痘に感染後、症状がでるまでの潜伏期間は6日~13日程度。
【サル痘の症状】
天然痘に似た症状が特徴であり、かゆみを伴う発疹が全身にあらわれ、インフルエンザのような高熱が出る。
その他にも喉の傷みやリンパの腫れなどの症状がでる場合もあるようだ。
発疹は時間が経つにつれ膿が充満した水ぶくれになり、その症状は14日~21日と長くて3週間続く。
治療法はなく、自然回復する場合が多い。
【予防法】
現在サル痘のワクチンはないが、1980年に根絶した天然痘のワクチンが有効だとされている。
しかしすでに天然痘は根絶しているため、若い世代は天然痘のワクチンを打っていない。
そのため、感染者の早期発見、身近に感染者が出た場合には接触を避ける、すでに接触してしまった人を迅速に追跡するなどの感染拡大への予防が必要だろう。
【サル痘の歴史】
サル痘の名前の由来は、1958年に実験室にいたサルから初めてウイルスが発見されたからである。
「サル痘」と名前こそサルであるが、ウイルスの宿主はアフリカに生息しているげっ歯と推定されている。
サル痘の人への感染が初めて発見されたのは1970年にコンゴ民主共和国の子どもであった。
アフリカ以外でのサル痘の感染報告は、アフリカでの旅行者がアフリカから輸入したものや輸入した動物から感染した事例があったが、今回のように感染拡大することはなく、珍しい症例であった。なお、日本ではまだ感染した事例は報告されていない。

