増える在日イスラム教徒の“土葬”問題
イスラム教徒でつくる団体が25日、宮城県石巻市に“土葬”ができる霊園を要望した。
なぜ石巻市に?なぜ“土葬”?なのだろうか。

日本にはまだ少ない“土葬”墓地
宮城県石巻地域では、イスラム教徒の技能実習生が、およそ250人暮らしている。
その土地で生活するということは、冠婚葬祭もあるということ。
イスラム教徒は宗教上の理由で土葬が求められる。
しかし、東北6県に土葬ができる墓地がないため、埼玉県などで埋葬してきた。
宮城イスラム国際共同霊園をつくる会のソヨド・アブドゥル・ファッタ共同代表によると、
「遠いところに運ばなければならないし、お金もかかるし、みんなに迷惑をかける大変な思いをする。
そのまま置いておくわけにもいかない」
と訴えている。
「宮城イスラム国際共同霊園をつくる会」のメンバーおよそ10人が石巻市の齋藤正美市長を訪ね、土葬が出来る霊園の整備を求め陳情書を手渡した。
石巻市の公設墓地は、焼骨以外の埋蔵を制限する条例が定められている。
齋藤市長は、現時点では不可能としながらも、「民間の協力が得られれば、市としても手伝う」としている。

なぜ石巻にイスラム教徒が多いのか
石巻は国内有数の漁港として知られている。
しかし、漁業就業者は年々減少。
定年後の高齢漁師に頼る現状が続き、人手不足で船が出ないこともあった。
しかし、2007年に外国人技能実習制度を導入し、インドネシアからの実習生は漁業従事者の1割近くになった。
今では、なくてはならない存在になっている。
今回陳情書を提出したソヨドさんは、石巻に住む同胞のために尽力してきた。
ソヨドさんは土地を購入し、3か月半をかけて2022年石巻初のイスラム教の礼拝堂、モスクが完成。
もともと震災後に復興支援のために石巻に移住し、建設業を営んでいた。
それまでは、石巻にモスクがないため、イスラム教徒の技能実習生は仙台のモスクまでお金と時間をかけて通っていたのだ。
「皆さんの悩み1番目。
仙台まで足を運ぶか行かなければ悩んで家で(礼拝)するか。
モスクがあればちょっと行って、自分の心がすっきりしてきたいなという気持ちをみんな持っている」
ソヨドさんは、モスクをイスラム教の人だけでなく地域の人も気軽に立ち寄れる場にしたいと考えている。
「ちょっとゆっくりしてハラル料理を食べたり、コーヒーを飲んだり、本を読んだり。
それはイスラムだけじゃなくどんな人でも利用できる場所を(つくりたい)。
様々な国の人が、安心して共に暮らせる社会をつくりたい。」

地域住民との問題「人を埋葬すること自体に気分があまりよくない」
諸説あるが土葬をするのは、聖典「コーラン」に「死後の復活」に関する記述があり、蘇るときには肉体が必要ということらしい。
イスラム教徒の土葬墓地の問題は石巻だけではない。
大分にも土葬できる墓地を作ろうと奮起した人物がいる。
別府ムスリム協会のカーン氏だ。
4年前に別府市の隣にある日出町の山中に土地を購入した。
しかし、地元住民から反対の声があがった。
近くにある湖の水質が汚染されると懸念があったからだ。
そのため池は、地元の方々が米などを作るための農業水として活用されている。
町側から代替地の提案があったが、またその地域の住民が猛反対。
住民はイスラム教徒だから反対するのではない。
宗教はどうであれ、人を埋葬すること自体に気分があまりよくないと感じている。
選ばれた場所は自然あふれる素晴らしい場所。
「あそこは住み良いとこ、水も綺麗、空気も綺麗。
それを言われなくなる。
それが一番悲しい」
風評被害も懸念事項の一つだ。
日出町役場の担当者も不安の払しょくに努めているが、いまも墓地建設の話は宙に浮いたまま。
そこで同じ地域のキリスト教徒が、土葬墓地の一画をイスラム教徒のために提供している。
この墓地は定期的に水質検査を実施し、一度も問題は確認されていない。
ただ、その提供期間は限られているため、カーンさんの安住の地を求めて格闘する歩みは続く。
