NHK、河瀬直美さんの五輪番組で事実とは異なる不適切な字幕で謝罪
NHK大阪放送局は9日、昨年12月に放送された河瀬直美さんが監督を務めた、東京五輪記録映画、「河瀨直美が見つめた東京五輪」について放送の中で一部の字幕に確かでないものがあったと発表し、謝罪を行った。
番組の中で問題となったのは、東京五輪のデモに参加したとみられる男性への取材の場面で、実際には男性がデモに参加したかどうかの事実は確認していなかったにも関わらず、「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」との字幕で紹介された。
テロップ自体は担当のディレクターが独自に補足取材した内容に基づいて作成したのだが、男性が五輪デモに参加した事実は確認できておらず、今年1月に入って改めてNHKがこの男性に確かめてみると、男性は五輪反対のデモ活動に参加したかどうかについては記憶があいまいであったとした。
NHKが行った再調査の取材で男性は「五輪以外で過去、複数のデモに参加したことがあり、金銭を受け取ったことがあり、今後、五輪反対デモにも参加しようと考えている」といった趣旨の発言をしていたことが判明し、NHKが字幕で紹介した内容とは異なるとされる。
事実とは異なった番組を流したNHK大阪拠点放送局には放送終了後、五輪賛成および反対派の両方から「印象操作」などの反論する多くの抗議が起こり、番組をみた視聴者からも「この男性は本当に五輪のデモ活動に参加していたのか」など、真偽を確かめる電話が多数寄せられていた。
NHK側は再調査後、事実確認の不足、取材担当ディレクターのコミュニケーション不足や思い込みなどの勘違いがあったとし、事実を捏造するなどの意図はなかったこと、担当者の確認が不十分であったことなどと説明し、会見の中で河瀬監督や島田監督ら関係者、視聴者に謝罪を行った。
五輪開催の賛否に対する意図があったかどうかの問いに関しては、「河瀬監督や島田監督に密着したドキュメンタリーがベースとなっており、五輪の賛否を問うような
番組ではなく、河瀬監督がどのように描かれるかの方に力点を置いていた」と述べた。
河瀨直美(かわせ なおみ)
奈良県出身の映画監督、脚本家である。
奈良県で生まれ育った河瀬さんは中学時代からバスケットボールを始め、高校ではバスケットボール部にキャプテンを務め、国体出場経験も持つ。
その後、大阪写真専門学校映画科を卒業し、「萌の朱雀」でカンヌ国際映画祭カメラドールを史上最年少で受賞、「殯の森」でカンヌ国際映画祭コンペティション部門に
正式に招待されるなど数々の経歴や実績を持つ。
「萌の朱雀」でカンヌ国際映画祭カメラドールを史上最年少で受賞した直後、同作品のプロデューサーを務めていた仙頭武則と結婚し「仙頭直美」の名義となっていたが、その後に離婚したことによって性を元の河瀬に戻し、再婚後2004年に第1子の(長男)を出産した。
その後も数々の名誉ある賞を受賞したり、2021年6月にはバスケットボール女子日本リーグ会長に就任などしている。
東京2020オリンピック
東京2020オリンピックは2013年9月にIOC総会で1964年大会以来の57年ぶりの東京での開催が決まった。
しかし、2020年夏の開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、1年間の延期を持って2021年7月に開催となり、205の国や地域から11,092人が参加し、19日間で33競技の339種目が行われた。
開催国となった日本は金メダル27個、銀メダル14個、銅メダル17個を獲得し、金メダルの獲得数においてはアメリカ、中国に次いで3番目の獲得国となった。
またメダル総獲得数においても、過去最多となっていた2016年のリオデジャネイロ五輪の41個を上回り圭58個のメダルを獲得した。
東京五輪の開催に対するデモ活動
新型コロナウイルスの感染拡大により、東京オリンピックの開幕1週間前には都内で開催間近の五輪に対し、開催中止を求めるデモ活動が起こり、100人ほどのデモ参加者が「感染拡大を抑えることが優先事項として重要だ」「命を守れオリンピック強行反対」などと訴えていた。
デモ活動に集まった人たちは東京中央区晴海で集まり、大会組織員会が入るビルや選手村の周辺を1時間余りにわたり行進を行っていました。
参加していた30代の女性は「オリンピック自体を否定しているわけではないが、新型コロナウイルスの感染者が増えてきており、医療もひっ迫する状況にあるのに、このような状況の中で開催されること自体、おかしい」と訴えた。
その他、オリンピックの表彰台でもデモ行動がみられ、陸上砲丸投げ種目で銀メダルを獲得したアメリカ代表のレイヴン・ソーンダース選手は、表彰の舞台での写真撮影の際、自身の両腕を上げ、頭上で交差させるような行動をとっている。
ソーンダース選手は黒人で同性愛者、うつにも悩まされていた過去があると語っており、同ジェスチャーを示した後には、世界中で困難と闘い、声を上げることができずに苦しんでいる人々に光を当てようと思ったと発言した。