昭和レトロの風呂なし物件が若者に人気!その理由とは?
風呂なし物件を選ぶ若者が増えている
今、若者の間で昭和に建てられた風呂が付いていない賃貸物件が人気を呼んでいる。
若者にとっては家賃の安さが魅力だが、人気の秘密はそれだけではない。
令和の若者を惹きつける理由の1つは銭湯人気だ。
東京都内の銭湯は一律ワンコインで気軽に利用できるため、若者も多く利用しているのだ。
銭湯を利用するために、敢えて風呂なしの賃貸物件を選び、家賃を安く済ませ、浮いたお金で銭湯通いをする若者が増えている。
今、都内の銭湯では多くの高齢者の中に混じり、若者も多数風呂に浸かっている。
ある若い男性は「ゆっくり考えごとができるのがよい」と話す。
家でも考えごとはできるが、銭湯だと温かい風呂と水風呂を繰り返して入ることで、頭の中がリセットされるのがよいのだという。
また、地方から上京してきたという男性は「家賃も安いし、上京するならここでいいかなと思った」と話す。
元々、銭湯が好きだったので、よいと思ったのだという。
上京したのは2年前で、それ以来風呂なし物件で一人暮らしを続けている。
場所は練馬駅まで徒歩10分の好立地で、六畳一間にキッチンが付き、家賃は32,000円。
周辺の風呂付物件の約半額の安さだ。
築5〜60年になる物件だが、「昭和レトロが好きなので、むしろ木の感じが気に入っている」と話し、特にマイナスイメージはなかったという。
中でも特に気に入っているのは、最近は見かけなくなった柄が付いている“昭和ガラス”。
紅葉や銀河、古都など、1室の中にも場所ごとにテーマがあり、「調べてみたら、すごく面白い」と喜んだ。

昭和レトロの建物と銭湯の魅力
別の男性は、友人から「下積みのお笑い芸人の部屋みたいだと言われる」と笑う。
しかし、「居心地はいい」と好評だという。
2年前、大学卒業後に上京して以来風呂なし物件に住んでいる。
六畳の和室に四畳のキッチンが付き、築48年。
JR山手線の田端駅まで徒歩18分の好立地で、家賃は33,000円。
家賃を安く抑え、その分は貯蓄や趣味にお金を回せるのがよいという。
しかし、すきま風が多くて寒い冬は少し厳しいため、昨年実家から“はんてん”を送ってもらい、寒さをしのいでいる。
そんな寒い冬こそ、徒歩5分の場所にある銭湯が、身も心も温めてくれるのだと話す。
徒歩5分でもどしゃ降りの日は通うのが大変だが、大きな風呂が何よりの魅力。
「毎日大きいお風呂に入ってリラックスできるので、ちょっと落ち込んだときも、お風呂に入ってスッキリでき、気分が軽くなるところもよい」のだという。
また、常連のお客さんと番台にいる店の人が話す様子にほっこりするのも魅力のようだ。
近くに別の銭湯も2つあり、普段は仕事の帰りに銭湯に寄り、それぞれの銭湯の違いも楽しんでいる。

貧困の影響?トレンド?
風呂なしの物件を集めた「東京銭湯ふ動産」というウェブサイトは、風呂が付いていない賃貸物件を検索でき、人気を集めている。
物件ごとに、最寄りの銭湯が紹介されているのがユニーク。
風呂なし物件は東京都内にたくさん存在し、渋谷や新宿など若者に人気の都心に、風呂なしで安く借りることができる物件は多数。
最近は、好奇心から風呂なし物件を選ぶ若者が増えていて、風呂なし物件に住んで固定費を抑え、その分自分の好きなものに使ったり、株や貯蓄に回したりする若者が多い。
風呂なし物件に住んでいる若者の中には、銭湯ではなくシャワーや風呂付きのスポーツジムに通う人もいる。
地域住民とふれあいを求める若者もいれば、物が少ないシンプルな暮らし“ミニマリズム”を楽しみたくて、風呂なし物件を選ぶ人もいるのだ。
節約よりもシンプルな生活を望み、風呂なし物件に住む人の部屋は物が極端に少なく、部屋を広々と使い快適に暮らしている。
中には冷蔵庫を持たない人もいて、その日に消費できる食料だけを買って生活する。
一見、割高に感じるが、廃棄食材が出ない分、割安になるケースが多い。
ただしネット上には、若者の間のこのようなトレンドは、貧困化を美化しているだけではないかと異を唱える意見もある。
昨今は30年もの間続く不況やデフレに加え、さまざまな値上げラッシュで生活は苦しくなる一方。
つまり貧困化の影響で、結果的にミニマリズムを選択する若者が増えているのではないかという理論だ。
この理論によれば、ミニマリストがトレンドになるのではなく、ミニマリズムでしか生きられない世の中になったということになる。
中には昭和レトロの風呂なし物件や銭湯に通う生活を敢えて選び、満喫している人もいるだろうが、そもそも満足な収入を得ているのに、敢えて自分からその暮らしを選択する人は少ないかもしれない。
理由はどうであれ、風呂なし物件を選んで住んでいるのなら、前述した若者達のようにその暮らしのよいところを存分に味わうことができるのはよいことだろう。
