非正規雇用の拡大が一因に!?女性の自殺者数が15%増加 11年ぶり
2020年は女性の自殺者数は前年よりも935人(15.4%)増え、7026人になったのは約11ぶりのこと。
男性は微減したのに対し女性は大幅に増加し、日本全国の自殺者数の数は11年ぶりに増加しました。
これらの数字の変化について、21年版の自殺対策白書にはコロナ禍の状況を分析し、今回は特に働く女性らが追い詰められる実態が明らかにされた。
2020年に国内で自殺した人の数は2万1081人で、男性はそのうち1万4055人で前年よりも23人も減少した。
対して20年後半には有名人の自殺報道が相次いだこともあり、その影響での自殺の増加もあったと考えられる。
また、白書では2020年と15~19年の過去5年間における平均値と比較し、コロナの影響によって働く女性の自殺者の数が増えていたことが明らかになりました。
職業別でみていくと「被雇用者・勤め人」の数が最も増え、381人増、次いで「学生・生徒」の140人増となった。
反対に「その他無職者」が98人で、主婦が70人とそれぞれ減少していった。
原因別では「勤務問題」が過去5年平均より34.8%増えていた。
政府によると、コロナ禍で雇用環境が悪化したことで非正規雇用の人のシフト減や雇止めが起きるなど、最も非正規で働く女性の経済状況の悪化に繋がり、新型コロナの感染拡大による労働環境の変化が自殺者の増加につながる要因の一つとしてあげた。
そして二つの特定NPO法人が新たに設置した新型コロナに関する相談窓口には2020年度に延べ8262件の相談があったことや、そのうち性別が判明したなかで、女性からの相談は6180件、さらにはSNSでも自殺に関する相談は女性が一番多かったとされる。
自殺者数増加に対する対策
これらの現状を受け、「こころの病」を未然に防ぐためにできることとして取り組み続けたNPO法人ライトリング、石井綾華代表理事に話を伺ってみた。

NPOへの相談内容
届くのはTwitterやメールなどで、中学生から大学生までの学生たちから「お母さんが派遣切りにあい、その愚痴を聞かされるのが辛い」、「家庭のことを考えると、進学をあきらめて働いた方がいいのか」、「夜中にいきなり部屋に入ってきて、泣いている母親をなだめた」などの相談があったという。
コロナの影響によって2020年には児童や生徒の自殺が499人と過去最多になったことに触れ、家庭や学校での環境の変化が影響した可能性があると文部科学省は指摘している。
女性たちは今までだったら、ちょっとしたおしゃべりなどで打ち明けていたことも、そうした場所も相手も減ってしまったことで、先の見えない将来の不安や孤独感が強まっていき、無意識のうちに身近にいる子供たちに吐き出してしまっている可能性が高いとした。
しかし、当然子供たちにはそれに抵抗する術もなく、さらには中高生にもなれば学校内での自分のキャラクターを演じようとする子もおり、家庭内での不和を受け止め、学校でも本音を打ち明けられること場所もなく次第に追い詰められていってしまうのです。
また、新型コロナウイルスの影響による心の悩みの相談窓口については、まだまだ十分なセーフティネットの役割としては不十分だとしている。
というのも、一般的に「相談」というワードにハードルを高く感じてしまう人が多く、「相談というと自分だけじゃ解決ができないくらいの悩みでないとダメ」と思ってしまうという。
実際に中学生に実施したアンケートでも、精神不安度が高い子は「悩みを打ち明けることはよいことではない」という選択肢を選んでいる子もいたという。
「相談」ではなく、もっと「おしゃべり」や「雑談」などもっと気軽に話せるような窓口の名前を付け、敷居を下げる必要がありますし、窓口名に「コロナ」とついてしまうと、「この悩みは相談できないのではないか」と認識してしまう人もいます。
自殺の背景には3つ以上の理由があり亡くなる人が多く、限定させない方がいいとしている。
こういった相談窓口の設置も必要なことだが、悩みを抱える人が生活する環境の中、本音を言える相手や場所をどうやって作っていくのかが求められると言います。
そうした中においても、家族や友人の間で相談できる役割となる「ゲートキーパー」の存在を作ることが大切です。
また、精神的に不安を抱えている人を支える人の側も孤独感や無力感を感じていることがあり、同プログラムでは悩みを聴く側が共感しすぎたり、ストレスを感じたりしたときにどう解消していくかを伝えていく必要があるとしています。
さらには同じ境遇の子供たちが話し合い、「こんな言葉遣いで話した」と関わり方について互いに知ることを共有する。
個人情報には気を付け、同じ境遇の人たちが集まれる場所を作り、支えて側の気持ちを和らげるようにしていきたいと語りました。