東京五輪組織委員会元理事、収賄容疑で逮捕 注目が集まる捜査の行方

組織委員会元理事ら4人の逮捕

17日、東京地検特捜部に受託収賄罪の疑いで逮捕された、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の高橋治之元理事。

高橋容疑者とともに、大会のスポンサーであったAOKIホールディングスの創業者の青木拡憲元会長、元会長の弟の青木宝久(同社前社長)、そして上田雄久(同社専務執行役員)の3人も、贈賄の疑いで逮捕された。

特捜部によると、2017年1月頃から、紳士服大手のAOKI側から東京大会のスポンサーの選定やライセンス商品の製造・販売契約に関して、便宜を図るよう求められた高橋容疑者は、同年10月~2021年までAOKI側から、約5100万円の現金を受け取った疑いがもたれている。

AOKI側は、贈賄罪の公訴時効(3年)が成立していない約2800万円について立件した。

特捜部は逮捕した高橋容疑者や青木容疑者らを今後追及し、不正の実態を解明する方針だ。

東京オリンピック・パラリンピックが閉幕して1年が経ち、組織員会での不透明な資金の流れは、公正な職務が求められる元理事の刑事責任が問われる事態に発展してしまった。

容疑者の経歴や容疑の概要

高橋容疑者は17日正午過ぎ、うつむきながら無言で自宅を出て、東京地検に出頭した。

スポーツビジネスの第一人者で、東京大会の立役者としても知られる高橋容疑者。

広告大手の“電通”の元専務の経歴をもち、オリンピックの招致活動にも深く関わっていた。

高橋容疑者は、“電通”の専務を退職後、2014年6月に組織委員会の理事に就任。

高橋容疑者が代表を務めるコンサルティング会社“コモンズ”は、AOKIの関連会社と2017年から月額100万円のコンサル契約を結んでおり、関係者によると今回の罪に問われている資金は、そのコンサル契約に基づき、月額100万円が支払われていたという。

しかし、組織委員会の理事は東京オリンピック。パラリンピック特別措置法により“みなし公務員”と規定されているので、職務に関して資金提供を受けることは禁じられている。

つまり、金品を受領した場合は、刑法の収賄罪に問われることになる。

受託収賄罪は職務に関し、何らかの依頼(請託)を受け、賄賂を受け取った場合に適用され、法定刑の上限は懲役7年。

高橋容疑者は、逮捕前に特捜部が任意で行なった事情聴取で、「組織委員会の理事の仕事とコンサルタント契約は別のもの。東京大会と無関係のコンサル業務に対する対価であり、理事として便宜を図ったことはない」と話し、違法性はなかったと主張していた。

青木拡憲容疑者は、「組織委員会の理事が収賄罪の対象となる“みなし公務員”だということは知らなかった」とし、こちらも賄賂性はなかったと主張。

高橋容疑者は逮捕容疑とは別で、AOKI側から約2億3000万円の送金を受け、そのうち約1億5000万円を個人的に受領したとの疑いももたれている。

AOKIは、前会長である青木容疑者らの逮捕を受け、「事態を厳粛に受け止め、捜査には全面的に協力する。お客様ならびに関係する皆様に心よりお詫び申し上げる」とコメントした。

懸念される冬季オリンピック招致への影響

現在、札幌市は2030年冬季オリンピック・パラリンピックの招致を目指しており、国際オリンピック委員会(IOC)は、12月に予定されている理事会で開催地を絞り込む方針を示している中での今回の逮捕。

札幌市の関係者は「お金の問題は市民の関心が高く、五輪のマイナスイメージにつながってしまう」と頭を抱えた。

「これまでどおり、透明性をもって招致活動を進めていくしかない」としながらも、招致活動への影響が懸念される。

日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕が取材に応じ、「マスコミの報道を通じて把握しただけだが、真実であれば極めて残念」と語った。「あまり突っ込んだ発言は控えないといけない」としながらも、「東京2020大会の関係で、このような出来事が起こったことは残念。多くのスポーツ関係者もそう思っているだろう」と話した。2030年の冬季五輪への影響については、「招致に関しては、できるだけ影響が出ないよう、これまで以上に関係者と力を合わせて、全力を尽くしていくしかない」と述べた。

日本で再びオリンピックを開催するために、「できるだけ影響が出ないよう、精一杯やる」と繰り返した。

スポンサー料じゃ基準額の半分以下

18日、関係者の取材で、AOKI側が大会のスポンサー料として支払ったとされる5億円は、同カテゴリーの基準金額の半分以下であったことが分かった。

スポンサーは、IOCと契約する企業の他、組織委員会と契約する企業は出資額の多い順に“ゴールドパートナー”“オフィシャルパートナー”“オフィシャルサポーター”に区分されているが、AOKIは“オフィシャルサポーター”に含まれていた。

このカテゴリーのスポンサーの基準額は約15億円、ゴールドパートナーは約150億円だという。

なお、スポンサーの選定過程や各企業の契約金額は公表されていない。

AOKIはスポンサー料とは別に、選手強化費の名目で約2億5000万円を計上。

そのうち約2億3000万円が高橋容疑者のコンサルタント会社に流れたと見られている。AOKIはオリンピック関連で約7億5000万円の支出があったとされるが、それでもオフィシャルサポーターの基準額に比べると大幅に低いことになる。

スポンサーの基準は組織委員会と専任代理店契約を結んだ電通に一任され、電通は組織委員会のマーケティング局に候補企業や希望契約額を提案。

そのうえで、電通から多数の出向者が業務を担い、事実上の選定をしていた。

電通の元専務を務めていた高橋容疑者は、特捜部の事情聴取に対し、「AOKI側にスポンサーにならないか打診し、料金が安ければとの回答を得たため、マーケティング局幹部につないだ」と説明。

あくまでも青木容疑者の依頼による対応ではなかったため、受領した資金に賄賂性はないと主張。今後の捜査の行方に注目が集まっている。

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