大阪ビル放火の男、谷本容疑者が死亡し真相究明は極めて困難に
今月12月17日に大阪市内にある北新地のクリニックが放火され、25人の方が死亡した事件で(谷本容疑者を含めると26人)、放火したとみられる谷本盛雄容疑者(61)が重度の一酸化中毒により病院で治療を受けていましたが、30日に死亡が確認されました。
大阪府警は、防犯カメラなどの映像から谷本容疑者を放火殺人事件の容疑者と特定し捜査をしていましたが、谷本容疑者が大量の煙を吸い込んだことによる、重い一酸化炭素中毒によって死亡したことで直接本人に聞くこともできず、この事件の真相を究明することはより困難な状況になったが、大阪府警は可能な限り今後も客観的な証拠などをもとに、動機などの解明を目指していくと述べた。
谷本容疑者は事件後に院内で心肺停止の状態で見つかり、病院へ救急搬送された。
そこでの集中治療で蘇生したが、一酸化中毒の影響により脳に重大な障害を負い、意識不明の状態になっていたが昨夜、入院先の病院で死亡が確認された。
府警はこの後、遺体を司法解剖し詳しい死因を調べるとしている。
大阪北新地ビル放火事件の経緯
今月17日に起こった、大阪北新地ビル放火は谷本容疑者が同日、午前10時20分ころにビル4階にある「西梅田こころとからだのクリニック」の出入り口付近で所持していたガソリン液にライターで火をつけて放火し、25人もの人の尊い命を奪った。
谷本容疑者は多くの患者らが避難できなようにするため意図的にクリニックの出入り口付近でガソリンに火をつけ、院内の奥に患者らを追いやった。
院内奥に追いやられた亡くなった被害者らは26人中25人が一酸化中毒により死亡し、残る30代女性1人は今もなお重篤な状態が続いているという。
大阪府警は院内に設置された防犯カメラの映像から谷本容疑者による犯行とし、大阪市西淀川区にある谷本容疑者自宅からも「大量殺人」と手書きされたメモ、36人が死亡した「京都アニメーション」放火殺人事件に関する新聞紙なども押収されている。
谷本容疑者は11月下旬に自宅付近で約10リットルとなるガソリンを購入し、事件の当日には自転車でガソリン入りの紙袋を積んでクリニックに向かったとされる映像が確認されている。
同容疑者が犯した事件への綿密な計画性、殺意については物的証拠がそといつつあるとされるが、動機に関しては今もなお未解決な状況になっている。
なお今回の事件を受け、大阪市では市内248か所のガソリンスタンドに対し、販売実績のない客に容器で小分けした持ち帰り販売をしないよう要請を始めている。
谷本容疑者の兄「罪を償ってほしい」
今回の事件を犯した谷本容疑者について、谷本容疑者の兄は「兄として弟には回復してほしいと思っているが、今回起こした事件にしっかりと向き合い、罪を償ってほしい」と涙ながらに語った。
兄と谷本容疑者は5歳離れており、「この32年間はずっと疎遠だった。どこで何をしているのかも知らず、今回の事件は受け入れがたい」と続けた。
さらに兄は谷本容疑者のことを「弟は普通の子で、お母さんっ子だった」という印象を話したが、谷本容疑者が18歳の頃に母親を亡くしている。
そこから少し変わったかもしれないと話し、仕事の腕はよかったが、自分と父とは馬が合わず、短気で声を荒げることもあったと話した。
「父親が亡くなった後に谷本容疑者とその兄は遺産相続について揉め、最終的に兄が父親の後を継いだが、そのことに対して何か思っていたかもしれない、その後はこっちから弟に何度も歩み寄ろうとしたが、逆に向こうからどんどん疎遠になっていってしまった」
そして最後に最近の弟の写真を見せられた兄は、面影はあるがと言葉を詰まらせた様子で肩を落とした。
犠牲になった人たちの周囲からの悔しすぎる声
30日に大阪市内のクリニックビルを放火させた谷本容疑者が死亡したことを受け、当事件の犠牲者の知人や他の患者からは「あまりにも身勝手」という憤りや無念の声が挙がった。
この事件でなくなった男性会社員の元同僚の男性は「なぜあのような事件を起こしたのか、なぜあの場所だったのか、何も分からいことばかりになり、残念。罪を償ってほしかった」と述べた。
他の被害者の学生時代からの友人男性も「容疑者は全く持って身勝手であり、納得いかない」と話す。
当クリニックに通っていた患者からも「容疑者には罪の重さをしっかり感じながら、生きていってほしかった」
大阪府警幹部も「なぜ今回、こういった事件を起こしたのかは直接本人の口から聞かないと分からないことが多く、事件の真相解明は現実的に難しくなった」と述べた。
今回の事件で犠牲となった人たちの遺族の中には「生きて罪を償い続けて生きてほしい」と願う方、「死んでほしい」と願う方などいたと思うが、あまりにも多くの犠牲者を出し、あまりにも身勝手すぎるこの犯行に対して、単純に終わらせられるものでもなかったことを考えれば、実に腹立たしい事件になった。