年越し大人食堂 コロナ禍で増える生活困窮者に善意の手
複数の支援団体が主催する「年越し大人食堂2022」が、昨年12月30日と今年1月3日に東京都千代田区にある聖イグナチオ教会でひらかれた。
弁当と食料品配布 そして相談会も
この「年越し大人食堂」を主催したのは反貧困ネットワーク新型コロナ災害緊急アクション、聖イグナチオ教会福祉関連グループ、つくろい東京ファンド、認定NPO法人ビッグイシュー基金などである。
目的は、新型コロナウイルス蔓延の影響で一時的に失業するなどした生活困窮者や、安定した住まいのない人に向けて、弁当の配布を行うというものである。
お弁当のお料理は料理研究家・ビッグイシュー基金協同代表の枝元なほみさんが担当し、安心できる食材を使って栄養のあるお弁当を用意した。
お弁当の数は400食。1月3日は、正午開始にもかかわらずその3時間前から人が並び始めた。
そして、始まる30分前には200人近くに上っていたという。
並んでいる人は中高年の男性が多数であったが、中には若い男性女性や小さな子連れの女性もあったという。12月30日は20代から70代にわたる278人が訪れていた。
弁当配布と同時に、失業して家賃が払えない、ネットカフェ住まいで今後が不安、事情で家にいられない、寮や友人宅を追い出されてしまった、などの困難に直面している人たちが生活や医療に関して相談や公的宿泊支援や支援窓口への案内や同行をできるような相談会もあわせて実施した。
また、それ以外に食料品、赤ちゃんむけおむつ、生理用品を渡したが、コロナの影響で衣類や寝袋の配布はできなかった。
年越し大人食堂に集まる人たち
年越し大人食堂に来ていた人の状況はこんな感じだ。
日雇いで建設作業員をしていた50代の男性は、年末は仕事がないので仕事が始まる1月4日まで食つなぐ必要があるという。
他の場所で行われている炊き出しにも通っているという。
また別の男性は、働いていた飲食店が半年ほど前に倒産、自らは家賃を払うのが無理となり、住処を追い出されてしまった。
それ以降、公園やガード下で野宿の生活をしているが、寒くて寝られないという。
この男性の所持金は1000円程度だった。50代の女性は、コロナ禍でパートの収入が減少してしまったため、数日分の食料を確保するためにやってきたとのことで、食料配布はありがたいと語っていた。
また、40代の男性は家族4人暮らしだがやはりコロナ禍で失職した。
この日は子供のおむつをもらったという。
コロナ禍で悪化した雇用状況は、ここのところ改善の方向に向かっているが、それでも生活困窮が長期化する傾向にあるという。
厚生労働省の集計では、全国約900の自治体におかれている生活困窮者向け相談窓口の「自立相談支援」に2021年度4月から9月の上半期には30万7072件の新規相談が寄せられたという。
これは、コロナ禍以前の2019年の上半期の12万4439件に比べるとなんと約2.5倍の増加だ。
民間団体だけでは間に合わない
このような困窮を長期にわたって放置していれば、貧困層が固定化する恐れがある、と主催者の一つである一般社団法人「つくろい東京ファンド」の代表理事稲葉剛さんは心配する。
また、コロナ感染への警戒感が強いために、雇用は不安定であるため、国が現金給付や家賃の補助などで経済的支援を広げる必要があると訴える。
厚生労働省は、全国の自治体向けに年末年始生活困窮者へ対応できるように相談体制の確保を求める通知をだしたという。
厚生労働省は生活支援特設ホームページを立ち上げ、生活福祉資金の特例貸付、新型コロナウィルス感染症生活困窮者自立支援金、住居確保給付金などの手続きや相談窓口の紹介をしているが、このような情報が実際に困窮者にどれだけ届いているのかはわからない。
一方、「年越し大人食堂に来ていた70代の男性は、生活保護の申請を何度か試みたが、冷たくあしらわれる、変な目で見られるなどで申請ができなかったという。
また、住所不定だったので10万円給付も受けられなかったそうだ。
本来ならば国が支援の手を差し伸べるはずのところを、このような民間団体が一手にそれを引き受けている状態はいかがなものか?
ネットでは、国会議員の間で問題になっている文通費や、政府の18歳以下への給付に係る事務費用をもっと生活困窮者に回すべきだという声が上がっている。
一人でも救える方法
では、私たちはなにができるだろう。
この「年越し大人食堂」を主宰する複数の団体は生活困窮者に手を差し伸べるための様々な試みをしている。
前述の「つくろい東京ファンド」では「せかいビバーク」という活動をしている。
これは、お金が底をついて泊まるところも食べるものもなく、その夜は路上で過ごさざるを得ない人に、緊急お助けパックを渡すというものだ。
緊急お助けパックの中には、その日一泊分の緊急宿泊、一日分の食事、福祉事務所までの移動、自分の携帯端末を使ってフリーWifiでの相談機関への連絡、の4つができるようなものが入っている。
緊急お助けパックの配布をしているのは、善意で受取スポットになってくれた場所だ。
もし自分が受取スポットになれなくても、路上で夜を過ごすほかなく困っている人にこんなパックがあることを伝えるだけで、少なくともその夜その一人を救うことができるかもしれない。