一体、老後はどうなる!?海外居住者と国民年金制度の仕組みについて
日本に居住する20歳以上60歳未満の人は、日本人、外国人の区別なくすべてが国民年金への加入しなければならないということが国民年金法という法律によって義務付けられている。
日本国籍の有無はここでは関係がない。
この期間中ずっと日本にいて40年(480月)の間保険料を払い続けているなら法律違反にはならず、65歳になって年金事務所に申請さえすれば満額の年間約78万円(2019年度時点)の年金が支給されることになる。
そのうえ、万が一自分が重い障害になり普通の生活が難しくなったり、配偶者と子供を残したまま死んでしまったなら、それぞれ障害年金、遺族年金が支給される。
そして当然ながら保険料を納めなければ原則的にこれらの年金を受け取ることはできない。
しかしグローバル化する現代において、何らかの理由で日本を離れる、または長期にわたって海外に住むことになるということも想定されるだろう。
その場合、国民年金はどうなるのだろうか?
実は海外に住む日本人は国民年金に任意加入することで継続することができるのである。
そして定められた期間の保険料を支払っていれば海外在住のまま65歳から年金を受け取ることもできるのである。
ある日本人夫婦を例にみてみることにしよう。
今年10月に結婚し、11月にアメリカに向けて旅立ったAさん夫婦がいるとしよう。
出国した翌日以降から保険料納付は義務ではなくなるが、任意での納付は可能だ。
継続を希望する場合、出国前に住民票を置いている区役所または年金事務所へ赴き、年金手帳、預貯金通帳、金融機関の届出印を持ってゆけばよい。
Kさん夫妻は出国前の多忙な中この手続きを本人たちあるいは代理人によっておそらく済ませたであろうと考える。
もし手続きがなされていなければどうか?
出国後に加入手続きをする場合、本人が帰国する必要はなく、日本在住の親族が代わりに年金事務所に届け出れば済ませられる。
その際、申請者本人の住民票はすでに抜かれているため、住んでいる国の日本大使館または領事館に在留証明を発行してもらうことで、それが海外在住のを証明する公的な書類となる。
旅券法によって、外国に3か月以上滞在する日本国民は管轄の日本大使館または領事館へ在留届を提出することが義務付けられているため、提出を忘れないように注意が必要だ。
保険料の納付は日本にある金融機関からの自動引き落としとなる。
金融機関によっては海外在住者に国内預金口座を認めていないところもあるので、その場合は本人名義でなくとも国内の家族や親戚などが代わりに納付してもよい。
もし夫が20歳から加入し、上記のような手順を踏んで60歳まで国民年金を納付していれば、海外居住であっても65歳で満額を支給されることになる。
妻は事情で結婚までは国民年金加入の対象ではなかったが、今年10月30歳で結婚し、日本に住所を持つ一般人として加入が義務となった。
そして夫とともに日本を離れるまでの間1か月分の国民年金保険料が発生しているが、おそらくは出国前に納付済だと考えられる。
そして30歳から継続して納付する場合は夫と同じである。
特例として60歳から65歳まで納付を続けるという方法があり、加入期間が35年分(420月)に達すれば65歳から年間約68万円の年金が支給されることになる。
それでは、この夫妻がアメリカ在住のままアメリカ国籍を取得したらどうなるのか?
自分の意思によって外国籍を取得した場合、国籍法の規定で日本国籍を喪失する。
そしてその翌日から国民年金への加入は不可となる。
しかしこの夫妻がアメリカ国籍を取得しても失うのは国民年金への加入資格であり、今まで納付した保険料を失うものではない。
国民年金には受け取りに必要な資格期間が設定されているのだが、平成29年(2017年)8月1日からこの資格期間が短縮されている。
現在のところ10年(120月)以上保険料を納付することによって65歳以降満額の4分の1にあたる年間19.5万円が支給されることになっている。
(ただしこの資格期間の短縮の対象は老齢給付で、遺族年金や障害年金は変更はない。)
夫の場合は20歳から加入して納付していれば10年以上経過しており、この資格期間の要求を満すので加入期間約10年分の年金が支給される。
妻が日本に住所を持った期間の1か月分を納付していれば、20歳から30歳までの10年間を年金受給の資格期間とするという特例が適用され、出国後に納付をしなくても1か月分の納付に対応する分の年金が65歳から支給されることになる。
つまるところ、規定に従って必要な届け出、申請、払い込みをしておけば海外にいても問題ないということである。
ところで、国民年金の資格期間を満たしている海外在住者から、支給される年齢の65歳になっても年金の振り込みがないという話を聞くことがある。
実はそれは海外在住が理由で払い込んだ保険料が無効になったというわけではなく、単に年金事務所に請求手続きをしていなかっただけということなのである。
海外にいながら年金の受け取りを希望する場合は、日本の年金事務所に年金受け取りに使う金融機関などの情報などを記入した既定の用紙を提出すればよい。
現在のところ、場所によって米ドルまたはユーロにより送金されている。
この際、海外送金の手数料は国が負担するので手数料が差し引かれる心配はない。
また、日本国内に自分名義の口座があれば日本円で受け取ることができる。
国民年金は国内海外在住にかかわりなくすべては年金事務所に申請してようやく支給されるものなので、どうか皆様申請をお忘れなく。