社会・文化

フィリピン大統領選 ボンボン・マルコス氏の当選確実に

元独裁者フェルディナンド・マルコスの息子が当選!

フィリピンで9日に大統領選の投開票が行われ、独裁体制を敷いた故マルコス元大統領の長男で元上院議員のフェルディナンド・マルコス氏の当選が確実になったと伝えられている。

フィリピンの選挙管理委員会が公認する選挙監視機関の集計によると、現地時間の10日午前9時すぎの時点で開票率96%で、マルコス氏が3058万票を獲得し、同じく大統領選に出馬した現職の副大統領、レニ・ロブレド氏の得票は約1458万票で2番手につけた。

大統領の任期は6年で、マルコス氏は議会の承認を経て、来月30日に大統領に就任する予定だ。

マルコス氏は、地元の北イロコス州で知事を務めた後、2010年から上院議員を1期6年務めた。

選挙戦では、現職のロドリゴ・ドゥテルテ大統領(77)の政権が進めたインフラ整備や麻薬対策などの政策の継承を訴えたが、外交や財政など重要政策について詳細を明確にしておらず、マルコス氏がどのような政権運営を行うのか、その手腕が注目されている。

1965年から20年続いた父親の独裁政権下では、多くの市民が拘束され拷問などで死亡したことから、今回マルコス氏が当選すれば、こうした負の歴史が塗りかえられるおそれがあると懸念する声も出ている。

マニラを回るボンボン・マルコス氏

腐敗!弾圧!殺害!父親のフェルディナンド・マルコス独裁政権

父親、フェルディナンド・マルコス元大統領は1965年から20年余り政権を維持した。

マルコスの開発独裁政策は、外国資本と結んで開発を進めていくもので、当初から利権の口利きで私腹を肥やし、ウラ社会の人脈で反対派を黙らせるという手段で権力を握った。

またベトナム戦争を展開中のアメリカを巧妙に利用し、基地提供などの見返りを得ながら、体制を固めていった。その結果、マルコス政権の長期化のもとで、政治家、官僚の腐敗が進行した。

フィリピン財政は外債に依存し、国民生活は苦しくなったにもかかわらず、マルコス夫妻はマラカニアン宮殿(大統領府)で豪華な生活を楽しんでいた。

1986年に民衆の反乱を受けて失脚するまで、公的資金から推定100億ドル(約1兆3000億円)の不正蓄財を行ったとされる。この間、フィリピンは多額の債務を抱え、一般市民は苦境に立たされていた。

戒厳令を布告し、民主化を求める活動家らを弾圧。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、3200人以上が殺害された。

父親のフェルディナンド・マルコス独裁政権

独裁者の息子が有力に

フィリピンでは40歳未満の人が人口の7割を占めていて、独裁体制を経験していない若い世代が増える中、選挙期間中は公的な政策論争会を欠席し、大手メディアの取材を避けながら、フォロワー数が600万人を超えるフェイスブックなどのソーシャルネットワークを巧みに使い、自身を「偉大な大統領の後継」として演出した。

大統領を務めた父親が成功させたインフラ開発などを「実績」としてアピールする動画などを投稿し、高速道路や病院建設などを紹介し「のちの政権に政策が引き継がれなかったためにフィリピンは貧しくなったのだ」と主張していた。

さらに、家族とのほほえましい団らんや対談などプライベートも積極的に公開することによって、独裁者の父親とは異なる、親しみの持てる優しいイメージを打ち立てたことで、有権者たちの支持をのばした。

マルコス氏は9日、支持者に感謝の言葉を送った。

マルコス氏は「まだ集計は終わっていないが、支援し、我々の戦いに参加し、身を粉にしてくれた、あなた方全員に感謝するのが待ちきれない」と述べた。

マルコス氏は選挙戦で、雇用の創出や物価の引き下げ、農業やインフラへの投資拡大を訴えた。専門家によれば、マルコス氏は、政治論争につかれたフィリピンの人々にアピールし、普通の人々が恩恵を受けられていないと多くの人々が感じている経済の改革と進歩を約束した。

マルコス氏の副大統領候補として選挙戦を戦ったのはサラ・ドゥテルテ・カルピオ氏。サラ氏は現職のドゥテルテ大統領の長女で、支持者の多くは、論争のある「麻薬戦争」も含めてドゥテルテ大統領の政策が継続されるとみて投票を行った。

副大統領候補となったドゥテルテ氏の長女、サラ氏と連携し、サラ氏の地盤・南部ミンダナオ島でも支持を広げた。サラ氏も当選確実となった。

ソーシャルネットワークを使いこなす

フィリピン市民の反応

マルコス氏の地元、北イロコス州のアマブレ・スティーブン・アベロンさん(24)は、「謙虚でリーダーの素質がある人だと思う」と語った。

首都マニラのエンジニア、グレッグ・サントスさん(30)は「問題に向き合おうとしない彼が、経済回復に取り組めるのか」と漏らした。

今回の選挙に向けて、一族の歴史に関する大規模な偽情報キャンペーンをオンライン上で展開し、個別の質問に直面する可能性のある討論会などを避けたとの批判の声が上がっている。


選挙結果は議会の承認を経て正式に確定し、マルコス氏は来月30日に大統領に就任する見通しである。

現在のフィリピン

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