社会・文化

自転車のヘルメット着用 努力義務化へ 2023年4月から

自転車の利用者すべてにヘルメット着用が2023年4月1日から義務付けられることが決まった。

改正道路交通法の施行期日についての政令が閣議決定された。

着用していなくても罰則がない努力義務。

自転車運転中の事故による死亡事故は頭部の怪我が影響するケースが半数以上にのぼるため、その予防をする狙いがある。

13歳未満の子どもについては保護者が着用させる努力義務がすでに課せられており、対象が大人にも拡大される。

これからは大人も努力義務へ
これからは大人も努力義務へ

非着用だと致死率は2倍

警察庁のまとめでは、2017年から21年までの5年間で自転車運転中の事故で亡くなった2145人のうち、約6割にあたる1237人が頭部に致命傷を負っていた。

怪我をした人も含めた死傷者数のうち死亡した人の割合を示す致死率は、ヘルメットの着用者は0.26%に対し、非着用者は0.59%で2倍以上だった。

しかし、大人のヘルメット着用は現状はなかなか進んでいない。

めんどくさいという単純な理由や、子どもの頃はかぶっていたがいつからかかぶらなくなったといった理由が挙げられる。

寒冷地では雪が降る冬の間は自転車に乗らないので、買うのがもったいないというコスト面や、春になってまた乗る際にかぶらなくなるという特徴もある。

自転車事故で亡くなった方の半数以上は頭部に致命傷を負っている
自転車事故で亡くなった方の半数以上は頭部に致命傷を負っている

全国平均の着用率は11%

民間の啓発団体「自転車ヘルメット委員会」が20年7月に約1万人を対象に行ったインターネット調査では、ヘルメットの着用率の全国平均は11.2%だった。

13歳未満が63.1%だったのに対し、13~89歳は7.2%だった。

都道府県別では、愛媛29%、長崎26%などが比較的着用率が高く、和歌山は4%、北海道は2%と低かった。

ヘルメット着用を義務づける条例などを制定している自治体では着用率が高い傾向にあり、道交法の改正で全国に広める。

自転車安全対策の専門家は「小さい頃はたぶんあまり考えず習慣的にかぶらされていたと思う。

大人になると周りからの目が気になったり、自分の運転技術を過信してそれほど大きな事故にはならないと考えることが着用率に影響していると思われる」と指摘する。

頭部を守り、かぶった方が安全であるのは当たり前なだけに、着用率を高めたい。

子どものころはヘルメットを着用していたのだが…
子どものころはヘルメットを着用していたのだが…

愛媛は高校生の効果で着用率6倍に

愛媛県ではある取り組みをしたことで着用率が飛躍的に向上した。

愛媛県警の調査では2015年2月に11%だったのが、12月に68%と約6倍に上昇した。

2013年に「愛媛県自転車の安全な利用の促進に関する条例」を制定。

瀬戸内海を渡り愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ西瀬戸自転車道は「しまなみ海道」の愛称で呼ばれ、多くのサイクリストが訪れる。

県全体を「サイクリングパラダイス」と位置付けて地域の活性化に役立てようとしている。

こうした施策に加えて、高校生が着用率を上げた。

2015年7月に県立高校の生徒に自転車に乗る時のヘルメット着用を義務化。

対象となる県内の生徒約2万9000人にヘルメットを無償配布した。

ただ、おしゃれにも気を使うようになり、周りの目にも敏感な高校生。

生徒がかぶることに違和感を覚えないように、生徒がかぶりたいと思うモデルを事前に聞いて選んだという。

選ばれたのはスポーツタイプのヘルメットだった。

通気性に優れ、安全性を確保しながら従来のものよりも重さを半分近く軽量化。

色も白、黒、紺の3色から選べるようにした。これによって高校生はほぼ100%の着用率を達成しているという。

ヘルメットは安いものだと1000円前後から買える。

罰則はないものの、義務化によって着用率の上昇と、死亡事故の減少を目指す。

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