上皇さま、89歳に W杯にも感心
上皇さまは23日、89歳の誕生日を迎えられた。
仮住まいだった東京港区から、上皇后さまと結婚された後、33年あまりを過ごした元赤坂の赤坂御用地に住まいを移し、上皇后さまと穏やかな日々を送っている。
ライフワークのハゼ類の研究も進めている。
今年7月に診断を受けた心不全の症状も改善しつつあるという。

上皇さまの一週間
コロナ禍が続き外出が限られていることもあり、上皇さまは赤坂御用地で過ごす時間が長い。
毎朝、上皇后さまと一緒に庭を散策することから1日が始まる。
近くのビルからふたりに向かって手を振る人がいると、それに応えて手を振り返すこともあるという。
7時からテレビのニュースを見ながら朝食をとり、その後は新聞に目を通して、上皇后さまと本を音読する。
これまでにモンテーニュの「随想録」、パスカルの「パンセ」などを一緒に朗読してきた。
最近はふたりが小学5年生の時に学んだ国語の教科書を読み返しているという。
月曜日と金曜日は皇居生物学研究所で、水曜日は赤坂御用地内の仙洞御所で、ハゼ科魚類の分類についての研究を進めている。
国内外の論文を読んだり、標本を顕微鏡で見たり、2ヶ月に一度開催される魚類分類研究会のオンライン会合にも参加している。
研究がない日の午前には、日本や世界各地の歴史や文化、自然などを紹介するテレビ番組の録画を上皇后さまと視聴する。
夕方にはまた上皇后さまと赤坂御用地内を30分ほど散歩する。
大相撲が開催されている時期にはテレビ観戦をして楽しむという。
夕食後には宮内庁の職員と共に、1953年のイギリス訪問をはじめ、これまでの国内外の訪問について過去の記録集を見ながら歓談する。
新しい住まいでは趣味のチェロの練習も再開し、月に2回ほど講師を招いて演奏を楽しんでいる。
日本代表の活躍も話題に
最近はサッカーのFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会での日本代表の活躍も話題になったという。
日本代表はドイツ代表やスペイン代表といったW杯優勝経験がある国に勝利。
決勝トーナメント1回戦で前回大会準優勝のクロアチア代表にPK戦の末に敗れ、惜しくも初のベスト8進出はならなかったが、初めて2大会連続で決勝トーナメントのベスト16入りを果たした。
上皇后さまや職員と日本代表の試合についても話し、職員は上皇さまが「日本代表が強豪を破り、多くの人たちが日本国民であることを誇らしい気持ちでいる様子を見て、うれしく思われている」と感じたという。

心不全の症状は改善
体調面では今年6月ごろから体重がやや増加し、血液検査のBNP値が上がったため、胸部レントゲン検査を受けたところ、心拡大、胸水貯留など心不全の所見が見られた。
7月に東京大学医学部附属病院で心臓MRI検査を受け、三尖弁(さんせんべん)閉鎖不全による右心不全と診断された。
薬の服用や水分の摂取制限、運動を控えめにするといった治療の結果、心不全の所見は改善されつつあるという。
9月には左目の白内障、右目の白内障と緑内障の手術を無事に済ませた。
今年9月には交流があったイギリスのエリザベス2世女王が崩御。
エリザベス2世女王の戴冠式に参列したことや69年間に及ぶ関係を思い起こし、深い悲しみとともに感謝の思いとご冥福を祈られたという。
特に1976年にイギリスを訪問した際、上皇后さまとエリザベス2世女王と乗馬を楽しみ、ウィンザー城からアスコット競馬場まで足を伸ばしたこと、天皇陛下だった2012年に冠動脈バイパス手術を受けたわずか3ヶ月後にエリザベス2世女王の即位60周年祝賀行事に参列したことが印象深い思い出だという。
上皇さまは自身の健康にも気をつけながら、沖縄県慰霊の日、広島・長崎原爆の日、終戦記念日、阪神淡路大震災と東日本大震災の発生日には、上皇后さまと共にテレビ中継に合わせて黙祷をするなど、常に国民を思いやっている。
上皇后さまとの思い出の地で、穏やかで規則正しい日々を過ごしている。
