社会・文化

リワークプログラム参加者が犠牲 動機不明な大阪クリニック放火

先週金曜日17日に大阪市北区曽根崎新地1町目にある堂島北ビル4階で放火事件が発生、死者25人、負傷者3人の犠牲者がでるという惨事となった。

ここは心療内科・精神科を専門とする「働く人の西梅田こころとからだのクリニック」があった場所で、事件当日は診察を待つ人が多数集まっていた。

大阪府警察本部は、火災当日の目撃者の証言から放火と判断、捜査を始めたところ、火災現場から救出搬送された心肺停止だった男が事件にかかわっている疑いがあると特定した。

また、クリニックに設置されていた防犯カメラの映像が事件翌日に再生できたことで、事件当時の容疑者の行動が明らかになった。

映像によると、男はクリニックに入った後に自ら床に置いた紙袋をけり倒し、そこから流れ出した液体にライターのようなもので火をつけたという。

さらに出火後容疑者は逃げるのではなく、両腕を広げて立ちはだかり妨害する様子が映っていた。

多くの犠牲を出した北新地ビル放火事件
大阪で起こった北新地ビルの放火は多くの犠牲者を出しました

一方、容疑者の自宅と思われる大阪市西淀川区の建物でも事件の前に火災がでていたという。

また、事件前に紙袋を後ろに乗せた自転車でクリニックの方向へ向かう容疑者の映像も他の防犯カメラで確認されている。

火災の現場から油成分が検出されたことから、流れ出した液体がガソリンである疑いがあるとされた。

容疑者の自宅から油のような液体がはいった容器が見つかっていること、11月下旬には自宅近くのガソリンスタンドでガソリンをおよそ10リットル購入したことも明らかとなった。

火災は発生から約30分で消し止められているにもかかわらず多数の犠牲者が出た背景は、毒性が強い一酸化炭素が大量に発生し、すすによって視界が遮られて逃げ場を失ったからではないか、と専門家は指摘している。

クリニックのある4階から逃げ出すには、出入り口のエレベーターとそのそばにある非常階段のみで、もう一方に逃げられるような避難経路がなかった。

このビルは消防署の立ち入り検査での不備はなかったという。

大切な人を失い、悲しみに暮れる遺族たち・・・
大切な人を失った悲しみは一生、消えることはありません

また、非常階段は1か所だけだったが、2か所以上とするという義務からは除外される建物であった。

この容疑者がかつて務めていた元職場である板金工場の社長の話によると、容疑者は責任感があり、後輩に仕事を教えるのも上手で慕われてもいた。

そして働きぶりが真面目で、腕も良かったが、11年前から連絡がとれなくなってそのままになっているということだ。

容疑者が、家の実家の跡継ぎに関して家族関係が悪くなったという悩みを職場で打ち明けていたという。

しかし、平成23年(2011年)に容疑者が当時25歳だった長男の頭を刃物で刺したとして殺人未遂容疑で逮捕される事件が起こっている。

この事件では、事前に複数の包丁や催眠スプレー、ハンマーなどの凶器を準備し別れた元妻と二人の息子を道連れにしようという計画を持っていたという。

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今回の事件については容疑者がまだ意識不明の重体であることから詳しい動機などはわかっていない。

この事件の現場となった「働く人の西梅田こころとからだのクリニック」とはどんなクリニックであったのか?

ここは医師として約20年ものあいだ内科医、精神医、産業医として従事した西澤弘太郎院長が平成27年(2015年)にこの場所に開院。

職場などでのハラスメント、人間関係や重労働などの精神的ストレスに悩む労働者のために、職場と連携してなるべく薬物に頼らない方法で問題に取り組んでいた。

またカウンセリングやうつ病、大人の発達障害外来、職場復帰のためのリワークプログラムなどを提供していた。

通院者からは、院長は話をていねいに聞いてくれた、患者に向かってくれた、心優しい先生だった、などの話があることから、患者から慕われていたことがうかがえる。

残念なことに院長もこの事件で死亡したことが確認されている。

社会復帰のためのリワークプログラム
リワークプログラムは精神疾患などで苦しんでいる人たちの社会復帰をサポートするプログラムです

今回の事件の被害者の中には、この日予定されていた職場復帰のためのリワークプログラムに参加する予定だった人も含まれている。

この事件でリワークプログラムという言葉を初めて知った方も多いのではないだろうか?

リワークプログラムはReturn to workの略で、精神疾患が原因で休職している労働者を対象に、職場に復帰することを目標としたハビリテーションをする機関で行われるプログラムのことを指す。

他に、復職支援プログラム、職場復帰支援プログラムということもある。

このプログラムでは、職場へ通勤することを想定し、決まった時間にそのような機関に通って本来の仕事に近い内容の仕事や作業を行う。

また、うつ病再発を防ぐための教育や心理療法がおこなわれる。

プログラムの過程で、休職が決まった時の自らの働き方、考え方をふりかえり、そう至った要因を再確認し、復職時に同じ状況におちいらないような準備を行う。

参加機関は数週間から年単位と様々だが、平均3か月から7か月程度である。

プログラムの内容には、オフィスワーク、グループワーク、ミーティング、休職原因のふりかえり(内省)、心理教育、認知行動療法、精神療法、軽スポーツ、リラクセーション、作業療法、芸術療法などがある。

リワークプログラムは、休職していて、将来の復職を目指してのリハビリが一人では不安な場合に主治医から紹介してもらう、というのが一般的であるようだ。

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