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プーチン大統領、動員令発令による混乱状況

国民に向けたテレビ演説にて動員令を表明

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が国民に向けてテレビ演説を行ない、ウクライナにて展開している“特別軍事作戦”を巡り、部分的な動員が可能となる大統領令に署名したことを表明。

動員の対象は予備役に限定するという。

9月に入ってからロシア軍はウクライナ北東部のハリコフ州のほぼ全域から撤退を強いられるなど苦戦中。

そのため、足りない兵力を速やかに増強し、ウクライナ軍の攻勢を追い払い、現在占領している地域を迅速に領土化することで長引く戦争を終わらせようとするねらいがあると見られている。

一方でウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州の主要部を軍港支配する親露派勢力は、ロシアへの編入の是非を問うための住民投票を行なうことを発表。

南部へルソン州と欧州最大の原子力発電所があるザポロジエ州の親露派勢力も、同じく住民投票の実施を発表している。

部分的動員令については、プーチン氏が演説した後にショイグ国防相が詳細を明らかにし、「予備役の人的資源は巨大であり、2500万人にも上る」と発言。

動員の対象となるのは、そのうちの約1%に当たる30万人程度で、徴兵制に応じた者や学生は対象としないとしている。

動員令を表明

動員令を受け、航空便に予約が殺到する事態に

プーチン氏の動員令を受け、動員から逃れようとロシア発の航空便に予約が殺到する事態になり、今週の便はほぼ満席。

ロシアの人気格安航空券サイト“アヴィアセールス(Aviasales)”では、アルメニアやジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタンなどの旧ソ連諸国への直行便が完売。

トルコの国営航空会社“ターキッシュエアラインズ(Turkish Airlines)”のウェブサイトでは、ロシア発着便の主要経由地であるイスタンブールへの便は24日まで満席。

さらに“エア・セルビア(Air Serbia)”においては、セルビアの首都ベオグラード行きの便は25日まで満席となっている。

“グーグル(Google)”によると、プーチン氏のテレビ演説が始まった21日午前9時(日本時間21日午後3時)以降にはロシア国内でチケットと航空便のキーワード検索が2倍以上に増加。

“グーグル・トレンド(Google Trends)”のデータによると、ロシアからの出国に関する検索は21日の午前の時点で通常の100倍にまで達したという。

尚、欧州連合(EU)とロシアの間の航空便は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、運航が停止されている。

航空便に予約が殺到

動員令発令の背景とは

ロシアは2月24日にウクライナへ侵攻した際、“戦争”ではなく“特別軍事作戦”と呼び、動員令は下していなかった。

プーチン大統領が動員に対する方針を変更した背景には、200日以上続く戦争でロシア軍の人命損失が続き、これ以上持ちこたえるのは困難だと判断したためだと考えられる。

8月初めには米国国防省が今回の戦争でロシア軍の死傷者が7~8万人に達するとの推定値を公開。

その後わずか1カ月の間にウクライナ軍が東部と南部戦線において大規模な進撃に成功。

ロシア軍の人命被害はさらに拡大している。

プーチン氏は21日のテレビ演説において、ウクライナ東部と南部の計4州で実施される住民投票について、ロシアが安全確保などの面で支援することを表明。

今後、もしロシア領の統一性が損なわれるような可能性があれば、あらゆる手段を講じることも明かし、核兵器を使用する可能性を排除しない姿勢も示唆した。

“北大西洋条約機構(NATO)”の主要加盟国がロシアに脅威を及ぼしたとみなした場合は、「我が国はさまざまな破壊手段を持っている。NATO加盟国よりも近代化されているものある」と話し、対抗姿勢を露わにした。

プーチン氏の演説に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ドイツメディアの取材に応じ、「停戦交渉は一段と困難になった。

ロシアがウクライナの領土から去る場合のみ、交渉が可能になる」と発言。

ポドリャク大統領府長官顧問はロイター通信の取材に対し、「部分的動員令は予想できた」とし、それは戦況がロシア政府の計画通りに進んでいないからにほかならないからだと指摘した。

特別軍事作戦

動員令への抗議デモなど市民に広がる不安と混乱

ロシア各地では動員令に抗議するデモが行なわれ、人権保護団体OVDインフォや野党の活動家によると、38の都市で約1400人が拘束された模様。

全国規模の反戦デモは信仰開始から間もない3月以来、約半年ぶり。SNSなどの呼びかけで、第2の都市サンクトペテルブルクやシベリアの都市にもデモは拡大。

首都モスクワの中心部では、「戦争反対!」と叫ぶ人々が通りを練り歩く様子が見られた。警察は一部の参加者を警棒で殴打するなどして排除している。

ロシアの国防省によると動員される予備役は30万人だが、対象の基準が不透明なため市民の間に不安が広がっていると見られている。

招集対象者になると出国が制限されると見られ、招集に応じなければ処分される可能性もある。

さらにショイグ国防相は、国営テレビのインタビューに答え、ウクライナ侵攻に伴うロシアの戦死者が5937人に上ったと発表した。

戦死者の数については、3月下旬に1351人と発表して以来、更新していなかった。

ショイグ国防相は「長らく明らかにしてこなかったが、触れざるを得ない」と話し、動員令により国内に広がる動揺を念頭に置き、情報を公開したと見られる。

しかし、米国国防省が発表した推定値とはかなりの差があり、数字の正確性には疑問も寄せられている。

ショイグ国防相はウクライナ側の損害については死者約6万1000人、負傷者約4万9000人で、合わせて10万人以上と主張している。

半年以上続くウクライナ侵攻は、ここにきて新たな混乱を見せている。

落ち着く日はいつになるのだろうか。

抗議デモ
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