ロシア予備役500人以上が「弾よけ」により死亡や同士打ちも…混乱のロシア軍
目次
複数のロシア独立系メディアは、ウクライナ東部に動員されたロシア軍の予備役500人以上が攻撃を受けて死亡し、一個隊がほぼ全滅した可能性があると伝えた。
ロシア軍では、動員されて間もない予備役も前線に送られ、戦死者が相次いでいる。
「弾よけ」で500人が命を落とす
ウクライナ軍は領土の奪還のため、東部や南部でロシア軍への反撃を強めている。
1日兵士の証言では、ざんごうを掘るよう命じられたが、30人に1本しかスコップがない深刻な資材不足にあった。
そんな中、多くの兵士らが手でざんごうを掘っていたときに砲撃を受けた。
これにより、570人のうちの500人以上が死亡したとしている。
砲撃前、指揮官は兵士に「君たちは『肉』となるために連れてこられた。
どうせ皆殺しにされる」と言ったとのこと。
500名が前線で「弾よけ」に使われて命を落とした。
そして補償金の支払いを防ぐため、戦死者がそのまま放置されていると、ルハンスク州のハイダイ知事は述べている。
また、6日ロシアの独立系メディアは、ウクライナ東部にいるロシア軍の兵士らが悲惨な状況を書いたとする手紙の内容を伝えた。
それによると、「4日間で約300人が、死亡や怪我、行方不明になった。
機材の半分を失った」と書かれていた。
作戦や指揮にの誤りにより、戦死者が相次いだ様子。
これに対してロシア国防省は、この部隊の人的被害は1%以下として否定している。

前線に行かないと「射殺」と脅迫
先月プーチン政権は、30万人の予備役の動員を完了したと明らかにした。
戦況を劣勢から立て直したい考えだが、兵士の士気低下で悲惨な状況に陥っている。
その9月から動員された新兵の中で、戦闘拒否の動きが広がっていた。
それに対して上官から「射殺する」と脅迫されながらも抵抗する様子が、親族を通してSNSで伝えられた。
「撃ってまとめて穴に放り込み、親族には行方不明だと伝える」
これは5日ロシアの独立系メディア「アストラ」が複数の動員兵の親族によるものとして伝えた。
動員兵たちはウクライナ東部ルハンスク州で地下室に閉じ込められている。
動員兵らは、戦闘を拒否する上申書を提出した。
上官らは説得が無理だと分かると、「射殺」の脅迫を始めたのだ。
ある動員兵の妻は「夫が裸で80人の男性たちと地下室に座っていた」と証言。
食事が数日間与えられなかったという報告もある。
別の動員兵の妻は、夫から帰宅できるという電話を受けたが、再び夫から電話があり、「前線に行くか、地下室に行くか」と言われたいう。
今もその男性は、ルハンスク州のどこかの地下室にいるとのこと。
一方、4日英国防省は、露軍が前線の兵士の後退や離脱を防ぐため、後方で銃を構えて監視する「阻止部隊」を始めたとの分析を示した。
これは旧ソ連の独裁者スターリンが、第2次世界大戦のナチス・ドイツとの戦闘で「一歩もひくな」をスローガンに導入した手法として知られている。
前線での士気低下が深刻化していることの現れだ。

前線前に自殺も、悲惨な状況
ロシアの独立系メディア「ノーバヤ・ガゼータ欧州」は9月から動員された兵士のうち、100人超が死亡したと報じた。
そのうちの23人は前線へ行く前に自殺や、アルコールや薬物が原因で命を落としたという。
これらは遺族への死亡通知に基づき、集計した結果としている。
遺体が確認できない場合は行方不明として扱われるため、実際の死者数はさらに多いと思われる。
報酬未払い「何のために家族を残してやってきたのか」
ロシアの独立系ニュース機関「7×7 Horizontal Russia」によると、チュバシ共和国出身の兵士らは19万5000ルーブル(約46万円)の支給を約束されたが未払いのため、戦闘不参加のストライキを実施すると語った。
ストライキ参加者の1人は、動員兵は全員「だまされて」おり、「二束三文で戦地に送られる」と話したという。
ストライキは、機動隊によって中止させられた。
ロシアの汚職や拷問の撲滅を目的とする「Gulagu.net」によると、経済的支援を求めて参加した兵士たちは「何のために家族を残してやってきたのか」と、不満を抱くようになったという。
経済制裁などでロシアは財政難なっているため、必要な財政措置がとられていないという現状だ。
動員兵の犠牲が増えている背後には、このように報酬面で割が合わずに士気が高まらないのも原因である。

実は同士と戦っていた…戦死者の60%も?
信じがたいニュースだ。
5日露軍側で参戦している東部ドネツク州の部隊幹部は、今年5月中旬以降の戦死者の多くが同士打ちだとSNSで明らかにした。
連携不足と司令官の相次ぐ交代によって指揮命令系統の混乱が起きている。
別の部隊が埋設した地雷によって複数の戦死者が出たり、同士で銃撃戦が起こり、命を落としたりしているという。
報酬の未払いによる反乱も同士打ちを誘発している可能性がある。
米軍の第2次世界大戦とベトナム戦争でも同士打ちは起こった。
その戦死者数は約14%で、戦場での同士打ちは珍しくない。
ドネツク州の部隊幹部は、今回の同士打ちによる戦死者が全体の60%とも言われていると述べ、まさに混乱状態であることが明らかになった。
一方、4日プーチン大統領は、殺人や強盗などの重大犯罪人も動員できる法改正案に署名した。
動員されて間もない予備役も前線に送られ、戦死者が相次いでいる中で、今後の動員に向けた準備を進めているとの見方も出ている。

この数日、ロシア軍の犠牲を報じる記事が増えた。
攻撃を受けた戦死者以上に、ロシア軍同士の同士打ちで命を落とす者の方が多いとは耳を塞ぎたくなるような報道だ。
ロシアが一刻も早く撤退することを願うが、プーチン大統領が侵略を終わらせる意向は無い様子である。
