社会・文化

給食にコオロギを導入!?徳島県の高校とベンチャー企業、そして無印良品の取り組みとは

徳島県の高校とベンチャー企業との共同開発

小学校や中学校時代を振り返ったときに、給食にまつわる思い出話に花を咲かせた経験は誰にもあるだろう。

時代とともに給食も変化を遂げているが、このたび徳島県にある高校の給食に食用コオロギを使用した献立が登場し、話題を集めている。

環境負荷の少ないたんぱく資源で、「食糧問題の解決策」とも期待されている食用コオロギを給食に導入するのは、今回が初めてのこととなる。

食用コオロギを給食に導入したのは、徳島県小松島市にある徳島県立小松寺西高校。

11月28日の給食に提供されたカボチャコロッケに、食用コオロギのパウダーを練り込んだ。

徳島県鳴門市にある徳島大学発のベンチャー企業“グリラス”と、小松寺西高校食物科や調理クラブの生徒らが協力し、開発したという。

食用コオロギを生産しているグリラスと同校の生徒達は、日頃からコオロギの調理法の研究を行っている。

6月には小松寺西高校の調理実習で肉まんを作り、10月に行われた校外イベントではピザパンやマフィンを作って提供したこともあった。

今回の給食用に考案されたのは、ひき肉の替わりにコオロギ粉末を混ぜたコロッケ。

給食の調理を担当する食物科の生徒達が、レシピに基づき調理した。

食用コオロギに抵抗感がある生徒や甲殻類アレルギーがある生徒は食べなくてもよいとされたが、全体の9割に当たる154人の生徒が食べたという。

カボチャコロッケを食べた高校生の中には、一口食べた瞬間に「美味しい!」と思わず大きな声を上げた生徒もいたという。

食べた生徒達は、「全然違和感がないです」と感想を述べ、さらに「美味しくて、香ばしい味もします」と話し、評判は上々。

生徒達の中には、最初は恐る恐る口に入れた生徒も多かったが、実際に食べてみるとカボチャの甘みにエビやカニに似たコオロギの香ばしさが合っていて美味しかった様子。

レシピを考案した2年生の生徒は、「粉末による香ばしさもあり、美味しいものができた」と胸を張る。

同じくレシピを考えた1年生は、「粉末をどんな料理にどう使えばよいのか、考えるのが楽しかった」と話す。

グリラスの商品開発担当者もこの日の給食に立ち会い、「生徒達が食べてくれて、率直に嬉しかった」と笑顔を見せた。

そして、「昆虫食が当たり前の選択肢になることを目指して、今後も商品開発や普及啓発に取り組んでいきたい」と語った。

小松寺西高校では、今後も食用コオロギを活用した給食献立の開発にチャレンジしていくとしている。

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食用コオロギとは?

食用コオロギは、牛や豚などと比べ、少ない餌で育てることができるため、環境問題や食料不足の解決策として注目されている食材。

国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、地球の人口増加に伴い、2050年には肉の残対象肥料が現在の1.8倍に増加する見込みだという。

コオロギは体重の6〜7割がたんぱく質なため、世界的なたんぱく質不足を補う食材として注目されている。

食用昆虫の種類は数多いが、その中でもコオロギは栄養価が高く、原料が調達しやすいことがメリット。

2020年5月には、無印良品で“コオロギせんべい”が発売されたことから関心が高まっている。

コオロギせんべいは、オンラインショップ限定で発売された初日に完売し、話題となった。

コオロギせんべいは、食用コオロギをパウダー状にしてせんべいに練り込んで焼き上げている。

コオロギパウダーはエビのような風味があり、焼くことでさらに香ばしさを増すのが特徴。

無印良品はコオロギせんべいに続き、2021年12月には“コオロギチョコ”も発売した。

コオロギチョコ1本当たりに含まれるたんぱく質は約15gで、プロテインバーとほぼ同じくらいの量になる。

この2つは人気商品となっており、コオロギの飼育に限度があることもあり、欠品になることも少なくないという。

無印良品は食用コオロギを使った商品を開発、販売することで、今後人口が増加し、たんぱく質危機や畜産による環境問題が不安視される状況で、たんぱく質を手軽に摂れるようにし、問題解決につなげたいという思いがあるという。

そのメッセージが伝わりやすいように、敢えてシンプルな味に開発した。無印良品が使用している食用コオロギも、グリラスが飼育したものだ。

コオロギは世界を救う!?
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食用コオロギが飼育されるメリット

コオロギを食べると言っても、自然のコオロギを食べるわけではなく、グリラスは独自の手法で食用コオロギの飼育を行っている。

沖縄諸島に生息する“フタホシコオロギ”というコオロギの中でも、“アルビノ系統”と呼ばれる白い眼をしたコオロギを、餌や温度を管理しながら育て、パウダーにしているのだ。

コオロギは雑食のため、さまざまな餌を与えることが可能。

そのため、残った食品を食べるなど環境によい影響を与えるほか、飼育に必要な餌や水もその他の家畜に比べて少ない点もコオロギが重宝される理由。

成長が早く、約35日で成虫になるので生産効率もよい。

コオロギを食べると聞き、驚いた人や抵抗を感じる人も多いだろうが、詳しく聞くと抵抗感が薄れ、小松寺西高校の給食のカボチャコロッケや、無印良品のコオロギせんべいやコオロギチョコを食べてみたいと思った人もいるのではないだろうか。

また、小松寺西高校の給食の取り組みを聞き、他の学校でも食用コオロギの導入の検討がされるかもしれない。

環境問題や食糧危機の取り組みの1つとして、食用コオロギの普及や、コオロギ以外の新たな食材の開発についての関心は、さらに高まるだろう。

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