社会・文化

セックスによる精子提供、提供者の大ウソ発覚で提訴 残る疑問

東京都内に住む30歳代の女性が、SNSで知り合った精子提供者との取引に問題が発生し精神的苦痛を負ったとして、12月27日この精子提供者を相手取って約3億3000万円の損害賠償を求める東京地方裁判所に提訴した。

このような精子提供トラブルにかかる訴訟は全国でこれが初めてということである。

訴状によれば、この女性は夫との間に10年以上前に第1子をもうけ、夫と子供の3人で暮らしていた。

不妊に悩んでいたが、夫が難病を患っている疑いがあることなどで、夫には告げずSNSで精子提供者を探していた。

そして2019年3月にSNS上で自分の探す条件と一致する20歳代の男性と知り合い、連絡をとりはじめたという。

この女性は、精子提供によって生まれる子供が第1子と差が生じたり、他人の精子による子供だという疑いが生じないよう、夫と同じ条件である提供者を探していたという。

精子提供トラブル
精子の提供でトラブルが発生し、女性が男性に対し損害賠償を求めている

その条件というのが、日本人で京都大学を卒業、金融機関に勤務、奥さんや子供がいない、そして夫と容姿が似ていること、いうものだった。

そして、この20歳代男性が全く同じ条件であるということを信じ、精子の提供を受けることにした。

その後精子提供を受けたこの女性は2019年6月に妊娠したが、提供者の男性が提示した条件が全くのウソであることが判明したという。

男性は容姿こそ似ているものの、日本籍ではなく中国籍、卒業した大学は京都大学とは違う国立大学、しかも妻がいる既婚者であった。

女性がこの提供者の精子で身ごもった子供は、出産後に東京都内の児童福祉施設に預けられた。

この度の提訴で女性は、提供者の男性が性的快楽を目的にウソの条件を提示したことで、自らが望まない条件の相手と性交渉の末妊娠、出産を強要されたと主張し、自分の子供の父親となる男性を選ぶという自己決定権の侵害に当たると訴える。

男女間のトラブル
精子の提供を巡り、損害賠償請求を求め提訴した

人工授精の方法は、精子を注射器のような器具を使い子宮内に注入するシリンジ法がよく行われる。

しかしこの女性が選んだのは排卵時を見計らって提供者と実際に性行為を行うタイミング法というものであった。

女性は妊娠が判明するまでの間、提供者の男性と週に2,3回程度ホテルで会い、あわせて10回ほど精子の「提供」を受けていたらしい。

これでは不倫の末の妊娠と疑われても仕方がないではないか?

しかし、一方でこの女性は夫とのセックスは日常であったため、もし妊娠してもDNA鑑定でもしない限りは、夫以外との性行為を疑われることなく、夫との間にできた子供だと主張することができたというわけだ。

ではなぜ提供者の提示した条件がウソであるとわかったのだろうか?

このあたりのことと思われる話が2020年6月2日号の週刊女性に掲載されている。

男女の不貞行為
二人は既婚者にも関わらず、肉体関係も持っていたとされる

この記事によると、妊娠が判明した後女性と提供者はオンラインで連絡を取り合っていたが、提供者の男性の態度が急変したため、女性が不安を抱き、提供者の身辺について調べ始めたという。

そこで提供者がどうも中国人らしいという疑いが出てきた。

そこで調査会社を通じて調べ上げて提供者の名前、国籍、学歴、家族などの情報を入手、提供者が提示していた条件に偽りがあったことが判明したらしい。

その後女性はこの提供者に謝罪と説明を求めたが取り合ってもらえなかったという。

一方提供者の男性は、そもそも匿名で精子提供を行うという話であったので、個人の情報を探るなどは無いという約束だった。

なので、配偶者の有無や国籍、学歴などは伝える必要もなかったと言っている。

ここからが提訴した女性と訴えられている提供者の話がかなり食い違ってくる。

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提供者の男性の話では、匿名の精子ドナーとして、ボランティアであった。

それなのに、妊娠判明後もこの女性からホテルで会いたいといわれ、そのたびに性行為もしていた。

つまり本来の目的が達成されたにもかかわらず、関係が続いていたというのだ。

それに加え、このセックス関係を断った途端、女性からのネット上で中傷されるようになったという。

また、結婚を迫られたともいう。

この件について、この女性は妊娠判明後もセックスの関係があったことは曖昧ながらも認めている。

しかし経歴などのウソ基づいた妊娠出産に納得ゆかず、弁護士、警察を巻き込み、結果今回の提訴となったようだ。

夫ではない第三者から提供された精子を子宮内に注入し妊娠するという方法は非配偶者間人工授精(AID)といい、日本では戸籍によって法的婚姻関係が証明できる夫婦で、原則夫が無精子症である場合にだけ医療機関で認められている治療だ。

例外的にAID以外の方法で妊娠が不可能という医学的判断があれば適応になることがある。

しかしAIDで生まれた子供の自らの出自を知る権利をどうするかという問題が取り上げられると、提供者の情報開示に抵抗感が生まれ、精子提供者が減少してゆく事態となった。

このようなことから、不妊に悩む夫婦に加え、そもそもAIDの対象になっていないシングル・マザーやレズビアン、性転換者で事実婚の人などが行き着く先の多くが今回の提訴の舞台となったようなSNSや、その他ではマッチングサイトになってしまっている。

妊娠を望まないのに経口避妊薬のピルは処方箋のみ、妊娠を望んでいてもサポート体制も進まず、信頼できる経路で精子提供を受けることができない、なんともいいようのない歯がゆさが残るのが現在の日本だ。

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