社会・文化

スノーデン氏にロシア国籍を付与

国外に逃亡してロシア亡命中だったエドワード・スノーデン氏に対して、ロシア政府は9月26日にロシア国籍を付与した。

スノーデン氏(39歳)は、アメリカ国防総省の情報機関「米国家安全保障局(NSA)」による個人情報の収集活動を報道機関に暴露して刑事訴追された米中央情報局(CIA)の元職員。

プーチン氏の大統領令によりロシア国籍を取得した人物が公開されたリストの中にスノーデン氏の名前が記されていたことでロシア国籍の付与が判明。

プーチン大統領は、ロシア国籍取得の簡略化を進めており、ウクライナ東部や南部エリアの住民に対するロシア国籍取得手続きの簡素化を進め、7月11日には対象をウクライナ全土の住民に拡大する大統領令に署名、7月22日にロシア国籍取得を外国人が申請する際に必要である「母国での国籍離脱手続きを始めたことの証明」を不要にする国籍取得要件を緩和する法律に署名していた。

また、ロシアの国営通信社(タス通信)によると、スノーデン氏の国籍取得は、5年以上のロシア居住などを求める国籍取得に必要とされる条件を満たしているための付与だとしている。

ロシア政府は、2020年1月から4月までの短期間に21万人以上の移民にロシア国籍を付与したが、これは昨年同時期の2.5倍相当にあたる。

ロシアが国籍取得を積極的に進める緩和政策は、ウクライナ問題と人口問題を絡ませたプーチンの苦肉の策だとの推測もあるが、スノーデン氏の国籍取得に関してはプーチン氏の思惑がどこにあるのかは現時点では報じられていない。

エドワード・スノーデン氏

スノーデン事件とは

アメリカ政府からスパイ活動などの容疑で訴追された中央情報局(CIA)元職員のスノーデン氏が起こした国家的な情報漏洩事件。

スノーデン氏は、契約スタッフとしてNSAに勤務していた時期に収集した大量の機密文書を国外に持ち出し、2013年6月以降、スノーデン氏から文書を提供されたイギリスのガーディアン紙とアメリカのワシントン・ポスト紙などの報道で、NSAが内密に行っていた大規模な情報収集活動が暴露された。

クラッパー国家情報長官が議会公聴会で疑惑を否定した月に、アメリカ国内で月間30億件のインターネットと電話回線の傍受が実行されていたことを公表した。

収集ターゲットとなった情報は、通話者氏名や住所、通話内容、メタデータ、通話者双方の電話番号、端末の個体番号、カード番号、時刻、基地局情報から割り出した位置情報。

インターネット媒体での情報傍受は、アプリケーションプログラミングインターフェースの形のバックドアによるもので、標的情報は電子メール、チャット、電話、ビデオ、写真、ファイル情報、ビデオ会議、登録情報等。

通信傍受の媒体については、グーグル、マイクロソフト、ヤフー、スカイプ、ユーチューブ、アップルなどの情報提供の協力が明らかになった。

さらに、日本、韓国、フランス、ギリシャ、メキシコ、イタリア、インド、トルコなどの同盟国への盗聴疑惑が明らかになり、アメリカ政府は国内外の厳しい批判にさらされた。

アメリカ政府の対応として、オバマ大統領は2014年1月、NSAの情報収集に関する改革策を発表し「同盟国や友好国の指導者に対する盗聴をしない」ことを明言、プライバシー侵害が厳しく批判されるアメリカ国内の電話通話記録の大量の収集・保管については、政府は一切関与せず、外部の機関に委ねて厳格なルールの下での情報利用の方針を明らかにした。

スノーデン氏は2013年に機密情報を暴露した後、香港滞在を経てロシアに亡命。

永住権の獲得に続き、2020年に妻リンゼイ・ミルズさんとともに国籍取得をロシアに申請していた。

近い将来、妻のミルズさんは配偶者として国籍を付与される見通しであり、これから申請に取り組む(ロシア人の配偶者を持つ外国人は少なくとも3年間ロシア国民と結婚していなければならなかったが、新法発効によりロシア国民と1年間婚姻関係にあるだけでロシア国籍が申請できるようになった)。

アメリカは、スパイ活動取締法違反などの疑いで同容疑者を刑事訴追し、ロシアに身柄の引き渡しを強く要求している。

現在、スノーデン氏がアメリカより持ち出した「米政府による情報監視の実態」などを暴露して世界に衝撃を与えた文書「スノーデン文書」は、保管する米報道機関が文書の管理部門を閉鎖してしまったためにジャーナリストは文書にアクセスすることができない。

情報監視の実態

スノーデン氏は動員対象外か?

プーチン大統領は、9月21日のテレビ演説において、ウクライナ侵攻のために予備役を軍務につかせる「部分的動員」を発令することを発表した。

ロシア国防省によると、この動員により「約30万人の兵士の追加」が可能となる。

ロシア国営のRIAノーボスチ通信は、スノーデン氏の弁護士のコメントとして「スノーデン氏は部分的動員令の対象にならない」と報じている。

一方、スノーデン氏のロシア国籍取得に関し、アメリカ国務省のプライス報道官は「アメリカに戻って裁かれるべき」と指摘した上で、「ロシア国籍を得ることでウクライナ戦争に徴兵される可能性もある」と言及している。

部分的動員
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