梅毒患者急増! 患者数が初の1万人超え。その背景と予防法とは?

患者数の増加は予想を遥かに超えるハイスピード

性感染症の1つである梅毒に感染した患者が、いま急激に増加し、年間を通じて1万人を超えたことが明らかになった。

東京都感染症情報センターによると、梅毒の患者数は10月23日の速報値で1万141人。

梅毒とは、全身のリンパ節の腫れや陰部の潰瘍などの症状が出る性感染症。

初期症状は軽いが、気付かないまま放置してしまうと心臓や神経に障害がおこることもある恐ろしい病気。

抗菌薬などの薬物による治療で完治する。

戦後間もない時期に20万人近い患者がいたと言われている梅毒は、抗菌薬が普及したことにより患者数は大幅に減少。

患者数は1990年代以降、年間1000人を下回っていた。

しかし、2010年代に入ると再び増え始め、2018年をピークに一旦減少するも、2021年に7983人という過去最高の患者数を記録し、遂に初の1万人超え。

現在の梅毒の患者数増加で特徴的なことは、20代の若い女性患者が多いことだ。

直接的な原因は不明だが、SNSやマッチングアプリが普及したことで他人との出会いのハードルが低くなり、見知らぬ相手や不特定多数の相手との性交渉が容易になっていることが原因の1つだと考えられる。

専門家は、「10カ月で1万人を超えるというのは、予想を遥かに上回るハイスピード」だと指摘。

さらに「不特定多数の相手との性交渉は控え、陰部やのどの赤みなどの気になる症状があればすぐに受診してほしい」と呼びかけている。

出会いのハードルが低くなったのも原因
出会いのハードルが低くなったのも原因

梅毒の症状とは

万が一梅毒に感染したとしても、梅毒の症状や特徴を理解していなければ気付くことは難しいので、正しい知識を得ることが求められている。

まず、性感染症とは性的接触によって感染する病気のことで、梅毒は“梅毒トレポネーマ”と呼ばれる細菌に感染することによって発症する。

梅毒の感染経路となる性的接触には、性器による性交はもちろん、オーラルセックスやアナルセックスなど全ての性的交渉が含まれる。

粘膜や皮膚から感染するため、特殊な状況での感染のみならず、日常的な性交渉において感染する可能性は誰にでもある。

若い女性患者が増えている現状だが、妊婦が感染した場合、胎盤を通じて胎児に感染する可能性があるため、特に注意が必要。

母体が無治療の場合は40%が流産や死産となり、生まれた後には重篤な症状や障害を引き起こす“先天梅毒”の恐れもある。

尚、症状や障害の程度は、感染期間によって異なる。

感染を防ぐためには、不特定多数との性交渉を避けるほかに、コンドームを使用することも有効。

症状は、出たり消えたりを繰り返しながら徐々に全身を犯していくのが梅毒の特徴。

症状が一旦消えることもあるため見逃してしまうことが多く、その間に感染が広がってしまうケースが多い。

症状の経過は4期に分けられ、感染後3週間前後経ってから最初の症状が出てくる。

これが第1期で、感染した局所にしこりや潰瘍が現れ始める。

この症状は、治療をしなくても数週間で消えてしまうので注意が必要。

第2期は、感染から約3か月後に全身に赤い発疹が出たり、性器や肛門に“扁平コンジローマ”と呼ばれる平らなできものが現れたりする。

第2期の症状も、第1期同様治療しなくても数週間で消えてしまう。

そして、第3期は感染から3年ほど経過して現れる。

筋肉や皮膚、骨などに結節やゴム腫と呼ばれるゴムのような柔らかいできものができるのが第3期の症状。

これがさらに進行し、第4期になる。

第4期まで進行してしまうと、血管や神経が侵され、動脈瘤(どうみゃくりゅう)、大動脈炎、進行麻痺、脊髄癆(せきずいろう)などの深刻な症状が現れ、日常生活に支障が出る場合もある。

進行麻痺は中枢神経が侵されることにより、記憶力が低下したり、性格が変化したりして麻痺を起こす。

脊髄癆は、脊髄が侵され、痛みや運動失調が起こる。

初期のうちに治療を施さなければ、このような重い症状に進行してしまうのである。

早期受診が大切
早期受診が大切

早めの受診と正しい知識、予防を心掛けることが大切

前述したように、1990年代は梅毒の患者数が激減したため、若い医師の中には梅毒を経験したことがない医師も多い。

そのため、受診をしても梅毒との診断をされないケースがある。

また、皮膚の症状に現れるため、元々アトピー性皮膚炎などの皮膚の持病がある人は見分けることが困難な場合もある。

さらにオーラルセックスにより、口の中や唇に症状が出た場合も、梅毒だとは思わず、風邪の初期症状や疲労などによるものだと思い込んでしまうことも考えられるだろう。

不特定多数との性交渉など感染するリスクに身に覚えがある人は、軽い症状でも梅毒を疑い、早期受診することが大切だ。

まずは皮膚科や感染症の専門科、泌尿器科、産婦人科などを受診することが望ましい。

保健所で梅毒検査を受けられる自治体もあるので、利用するのもよいだろう。

梅毒の検査は、感染から4週間以上経過しないと陽性反応は出ない。

症状が出てすぐに検査をして陰性だったとしたら、4週間以上が経過した時点で再検査する必要がある。

治療法としては、ペニシリン系の筋肉注射により、早期(1〜2期)であれば1回の注射で完治するケースがほとんど。

3期まで症状が進んでしまった場合でも、1週間間隔で3回ほど注射することで効果が出る。

現在は梅毒の感染数が激増しているため注目が集まっているが、性感染症の種類は他にもたくさんある。

性感染症の正しい知識を持つことやコンドームの使用、不特定多数との性交渉を避けるなどの予防をすることを一人ひとりが心掛けていくことが大切である。

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